ヴィニュロンを目指して ―協力隊への応募から着任まで―(大岡地区 佐々木)
2020年9月28日 | 活動内容: |
はじめまして。
2020年9月1日付で大岡地区に着任となりました佐々木と申します。
着任にあたり私のミッションは、ワイン用ぶどう栽培から、ワイン醸造(まずは試験醸造)までを完遂させることです。
もちろん、地域振興全般に取り組むことも重要なミッションですので、折に触れてそれらの活動もご紹介できればと考えています。なお、大岡地区担当の先輩隊員である鈴木さんも当ブログの過去記事『大岡百景』でご紹介されていますが、大岡の棚田はやはり美しいですよ!
<大岡支所業務に同行した際、棚田を撮影>
しかし、当ブログのうち私などの記事をご覧になる方は、「地域おこし協力隊ってどういう感じ?」「長野市に住みたいんだけど?」「農業をやってみたい!」といった情報と同等もしくはそれ以上に、「生食用というよりワイン用ぶどうはどうなの?」「ワイン醸造に関わる仕事がしたい!」といった情報に興味があるのではと想像します。
(もっと露骨に申し上げるなら、「『ウスケボーイズ(映画版公式サイト)』がカッコよくて!」という方もいらっしゃいますか?。私も、原作の小説も読みましたし、映画も繰り返し見たクチですが、そのために「ワインを造るなら、ぶどう栽培から考えていかなければ!」とすっかり感化されたひとりです。)
そのようなわけで、私の記事の話題は「ワイン用ぶどう」あるいは「ワイン」関連に寄せていこうと考えています。
これから、地域おこし協力隊の任期である3年間、当ブログへの寄稿を続けていく予定です。今後ともよろしくお願い申し上げます。
(※「ヴィニュロン(vigneron:仏)」という言葉について、当記事では「ワイン用ぶどう栽培からワイン醸造まで手掛ける者」という意味で用いています。)
実は9月1日の着任以来、関係各位へのご挨拶回りと並行して、すでに実作業などにも参加させていただいております。詳細については今後の記事でご紹介する予定ですので、今しばらくお待ちください。
<ワイン用ぶどうのうち、シャルドネ種の収穫作業に参加した際の写真>
今回は、私が「地域おこし協力隊・大岡地区担当」へ着任するまでのことについて触れてみたいと思います。
私は前職まで、農業や酒造業界などとは無関係の、東京都内で勤める一介のサラリーマンでした。趣味でワインを中心としたお酒関連に興味を持ち、趣味がてら勉強(という名目の飲み歩きも大いに混じってます/笑)を始めてから数年が経っていました。
このままサラリーマン生活を続けていこうか、ほかの道はあるだろうか、と考えていたところ、たまたま都内・有楽町にある『ふるさと回帰支援センター』の存在をインターネットで知りました。
そこで、どうせなら興味のあるワイン関連の仕事ができる地域はないかと考え、ワインに関する募集を行っている自治体の開催分を中心に、『ふるさと回帰支援センター』内で開催されていたセミナーや現地訪問を通じて情報収集を始めたのが、昨年2019年のことでした。
こちらをご覧の方でしたら、ここまで述べた時点で、すでに思い当たることもあるかもしれません。それは、上記のセンター内での募集に限りませんが「素人がワイン用ぶどう栽培に挑戦する」「生食用ぶどうではなく、ワイン用ぶどうの栽培を目指す」には、必ずしも門戸が開かれているとは言い難いということです。少なくとも、私のような非業界関係者で一般人のアンテナに引っかかるようなオープンな情報はほとんど発見できませんでした。
たしかに「素人にワイン用ぶどうなんてとんでもない」「生食用ぶどうでアドバンテージを得ているのにワイン用ぶどうを手掛ける必然性はない」といったご意見も然るべきと思います。また、ぶどうそのものを出荷する際の生食用とワイン用での大きな価格差(2~4倍ほど生食用のほうが高い、とも言われています)なども考慮すると、ワイン用ぶどうに特化する経営的なリスクというのは私としても大きな課題であると認識しています。
他方、類似しているようにも思える募集のうち「ワイン用ぶどうも含めた果物栽培」「ワイン関連施設などでのスタッフ募集」については、私も細かく調べたことがありました。
しかし、前者は(これは同じ地域内でも、お尋ねする方によって回答が異なりそうな気もしますが)ワイン用ぶどう栽培は二次的またはそれ以下の認識であったり、後者は、業務内容を確認すると営業(ルートセールス系が多いかもしれません)や経理・総務関連など、結局は企業間での転職とさほど変わらないような募集内容であったようでした。
もちろん、それらの募集でもワインに関われる可能性はあったのかもしれません。ですが、私の場合は長野市地域おこし協力隊・大岡地区の募集にたどり着くことができましたので、見送らせていただきました。
では、私が応募させていただいた長野市のことについて触れてみます。
あくまでも、特に縁故などもない私が把握できた範囲内で、という留保付きですが、ワイン用ぶどう関連に最もポジティブな取り組みが期待される上、私でも参加させていただく余地が残されていたのが、長野市でした。
加えて、ヨーロッパ系品種のぶどう栽培が中心に考えられているというのも、私にはとても魅力的でした。私も、乏しい懐事情をやりくりして長野のワインをテイスティングしたこともありましたが、ブラインドで挑戦したら「シャルドネ種のワインはブルゴーニュ」「メルロー種のワインはボルドー右岸」などと豪快に間違えていただろうな、と思われたクオリティである長野のワインを、もしかしたら自分で造ることができるかもしれない、と想像するのは、私にとっては非常にエキサイティングなことでした。
(誤解のないように申し添えておきますが、私は土着品種に否定的なわけではありません。特に長野の特産である竜眼やコンコードについては、機会があれば当ブログ上でも触れてみたいと考えています。)
そして、長野市の関係各位との面談を経て、「おためし地域おこし協力隊」という現地訪問(の時期は、コロナ禍に陥る直前だったという幸運にも恵まれました)をさせていただきましたところ、決して行政側ばかりで先行しているわけではなく、地域の皆様もワイン用ぶどうに取り組んでみようとお考えであることが理解できました。
長野市内でも大岡地区は、経験者諸氏による事前準備が進められているとはいえ、これからワイン用ぶどうに取り組んでいこうという段階です。そのことも私にとっては「これから共に挑戦していくことができる」「草創期からの段階でヴィニュロンとしての経験が積めるのは、この機会を逃したら一生ないかもしれない」と思いました。
こうして、応募からの選考を経て、着任に至りました。
なお、今回の選考過程としては書類選考と面接が1回ずつだったのですが、この頃にはコロナ禍に突入しておりましたので、面接はWeb会議システムを利用しての形となりました。ならびに、私は都内在住でしたので、着任前には長野駅周辺のホテルで経過観察を経る過程がありました。
(来年以降はコロナ禍が払拭され、このような付言が無用となっていることを祈るばかりです。)
選考過程自体については、一般的な就職・転職に関するものと、ほぼ同様のイメージでも遠からずだと思います。とはいえ私の場合は新規就農という意味合いもありますので、お伝えする内容は自身の業務経験と就農を結び付ける方向で考慮したつもりです(が、その内容で満点ではなかったような節も...)。
それでは、願わくば長野市で私とご一緒に、いつか同じヴィニュロンとなる同志がこちらをご覧になっていることを祈りつつ、今回は筆を置かせていただきます。次回以降は実作業の話題を中心としていきたいと思いますので、楽しみにお待ちいただければ幸いです。
ちなみに、今回は文字ばかりで読み疲れさせてしまったかもしれませんが、次回以降は内容的に写真をもう少し増やせると思いますので、そのあたりはご安心ください。