豊野町を流れる用水について(豊野地区 古畠)
2023年3月27日 | 活動内容: |
今回は豊野町の皆さんが最も大事にしているものの一つ、用水について勉強させていただきましたので、それについて綴らせて頂きます。
用水とは、機械や装置を用いずに、自然の力で水を引き込んで田畑などに供給するための水路のことです。用水は、水が足りない地域で灌漑(かんがい)農業を行うために開発されました。用水は自然の流れに頼るため、水が不足すると灌漑ができず、収穫量が落ちることがあります。また、用水は地域の風習や文化にも関係しており、地域の歴史や文化を知ることができます。また、現在では用水を調整し川の水量を分散することで水害などの被害を防ぐ役目もあります。
豊野町は、肥沃な土地柄と鳥居川、千曲川などの水源に恵まれ、古くから農業が盛んでした。町内には、今井用水、日影用水、蟹沢用水、大倉用水などの用水が流れています。石村用水は、北部にある鳥居川から南部の石地区まで流れる、非常に流路が長い用水で、江戸時代よりも200~300年前からあったとされています。
■三念沢橋の下を流れる石村用水
今回は豊野町のりんご農家さんに石村用水の管理方法について案内していただきました。最初に石村で管理しているため池の管理方法について案内頂きました。三念沢池や神宮寺池があり、雨量などで水が増えすぎた場合などに水を排水させます。手動で水位を調整しているため大変です。特に三念沢池はかなり狭い獣道のような農道を通らなければなりません。
用水の管理は緻密で、用水の水位については、昔ながらの方法で積み上げた石を目視で確認します。
■積み上げた石で水位を目視確認しています。
流れる水が少ない場合は、他の地区の水門を調整したり、浅川から補水したり兎三見川などに排水します。用水と川が合流する場所は、木々などが溜まりやすく、取り除く必要があります。また、地下を通る用水の管理をするため、マンホールなどから下に降りる必要があります。
用水の水門や、水の利用状況に関する問題もあります。
石村用水は、大倉区、浅野区、豊野区を通っており、各地区に水を流すための水門があります。各地区で用水の水を使っているため、利用状況に合わせて各地区に用水の水門を上げ下げします。この作業は当番制で担当者が全体の状況を見ながら町を巡回して開閉しなければならず、また勝手に開けられることもあるとのことです。
このため、用水の流れる量が少ない時期に全員が水を使うと、下流域まで水が流れなくなってしまうという問題が今でもおきています。昔から水戦争とよばれる用水の争いは、豊野地区だけでなくいたるところで置きていたそうです。
■寛文四年に書かれた 鳥居川の水利用について石村と他の村の取り決め
他にもこの用水の管理について様々な事が学べました。
明治時代に作られた、信越線の下を通すためのトンネルが今も存在します。このような形のトンネルは今は珍しいですね。
上流の鳥居川の取水口は、長い流路に3つの手動で排水するための場所があります。これは、ゴミがたまってしまった際に取り除くための場所になっています。
石村では今も用水に関する資料を大切に保管しており、明治時代の出納帳や地籍図が今も大切に保管されています。それだけ、用水についての思いが石地区の皆さんにあるんだと感じました。
今回の取材で協力いただいた石地区の皆さん、貴重な資料とお話を共有頂きありがとうございました。やはり地域の歴史や文化を知ることは大切だと感じました。地域には、私たちが知らない多くのことがあるため、それらを知ることによって、地域への理解や興味が深まるとともに、地域を大切にする気持ちも生まれるのではないでしょうか。
最後に私は豊野地区の協力隊として活動してきましたが、このたび私事で退任することになりました。皆さん大変お世話になりました。今後は別の仕事をしながら、引き続き地元長野市で農業に携わってまいります。長野県の農業や協力隊、豊野町を応援していきたい気持ちはありますので、何かあれば気軽に声をかけて下さい!