高原花豆のものがたり(戸隠地区・水谷)
2017年9月 7日 | 活動内容:農地活用 |
鮮やかな猩々緋の花が咲き乱れる7月中旬の高原花豆
一つの株から2,000~4,000もの花が咲くと言われています
戸隠地区の水谷です。朝夕は冷えを感じる季節になってきました。先月、戸隠は大豪雨を受け、60以上も災害箇所に指定される大ダメージを受けました。それから数週間、普及作業が進行する中、平常のムードにようやく戻ってきました。「雨」には様々な意味があると古来から信じられています。大豪雨も大局的に見れば、浄化・転換期・生命の再構成といった意味があったのかもしれません、、、。
さて、昨年何十種類もの品目の試験栽培を試みた中で、標高1,000m前後に位置する火山灰土が主体の丘陵地帯・戸隠高原の気候環境に適合し、耕作放棄地対策の作物として最も有力候補に思えたのがメキシコ高原原産の高原花豆です。
今年、花豆栽培に特化しようと決め、昨年から優良な種豆、資材、圃場整備、有機肥料作り、花豆生態の情報収集、良品栽培のための技術の研鑽等の準備を進めてきました。この1年は花豆を軸に農業・活動を展開してきたと言えます。
今年の作付けは約1,000株、面積的には約3反(3,000㎡)で、標高約820mと850mの2つの圃場に分かれます。いずれも耕作放棄地を再生した圃場であり、栽培用のアーチ支柱を約600m、垂直支柱を約150m設置しました。成育状況の比較検討のために株間は70~120cm程度の異なった間隔をもうけ、播種時期は3週間ほどズラしていきました。花豆は密植すると花付きが悪くなり結果として莢の結実率が低下するため、アーチ支柱の両面ではなく片面にしか花豆は植えず、かなり贅沢な使用方法をしています。
そんな花豆は5月下旬に播種を行い、約95日のサイクルを経て、9月上旬、いよいよ収穫が始まりました!多くの方々からエールとご支援を頂き、ようやくここまで来れて喜びがこみ上がります。これから降霜まで(10月下旬~11月上旬頃)は収穫&乾燥作業に忙しくなりますが、ここで写真にて5月下旬から9月上旬までの花豆の生育の様子をご紹介させて頂きたいと思います。
5月下旬~
播種前に発芽率向上のために種前を一昼夜浸水させます
未発芽対策のために基本は2粒で播種
6月上旬~
発芽時の生命エネルギーは感動的!
7月上旬~
花の開花が始まります!しかし、まだ数は少ないです
7月中旬過ぎ。見た目は今とあまり変わりありませんが、莢はまだ付いていません
生態系維持に不可欠な存在のマルハナバチがよく飛び回り始めます(7月)
白花豆の方が少し早く咲き始めます(7月中旬前)
7月下旬~
若干の気温低下が影響し莢がつき始めます
適正温度等の生育環境条件は標高800m以上でないと十分に整わないようです
8月上旬~
莢の肥大化が始まります
いつしか支柱は見えなくなり、花豆街道が何列も出来ていました
一定の温度環境の日が続くことで次々に新しい莢が生まれています
7月下旬よりも明らかに高確率で莢が付いていきます
無数の肥大化してぶら下がる莢を見ると感動します
9月上旬~
莢が茶褐色になればいよいよ収穫時期の到来です!
美しい花豆の紫色が変色しないよう乾燥作業も大切な工程です
収穫し始めの豆のサイズは小さめですが、色は綺麗に出ています
白花豆の真っ白な姿も感動的です
収穫初日、莢の状態確認のためプロ農家さんのいる近隣の圃場へ伺いました
すると縁起物と言われるガマガエルが晴天の下に現れました!
あらためて花豆の成長の様子を振り返ると、自然循環の力の大きさに感動します。こうして自然から生まれた恵みを食せることは何よりも贅沢です。それにその過程を経験出来ていることも財産に違いありません。その昔、日本に生きた先人は自然界の深邃な営みを観じて素晴らしい言葉を残しています。
"たなつもの 百の木草も 天照す 日の大神の めぐみえてこそ" (本居宣長)
(※たなつもの=「種のもの」の意)
"むかしまく 木の実 大木となりにけり 今まく木の実 後の大木ぞ" (二宮尊徳)
"良い人になれる大元は、食を正す大元なり" (石塚左玄)
今回の記事では時系列で高原花豆の成長の様子を見て来ましたが、現場での栽培を観察しながら、工夫してきたポイントが幾つかあります。花豆の原産国であるメキシコ高原の土壌・環境と戸隠高原の類似点、花豆の共生微生物(根粒菌)、根圏土壌への電子供給等の視点から良質な花豆栽培のために何ができるか、記事を改めてつきつめていきたいと思います。