土壌を知り育苗を始めました(戸隠地区 水谷)
2017年1月21日 | 活動内容:農地活用 |
皆さん、こんにちは。戸隠地区の水谷です。先週から日本各地で大雪に見舞われていますね。戸隠も積雪がかなり凄いです。数日間降り続き、新雪のところでは軽く腰上くらいの積雪があります。
そんな中、地区内でのそば打ち講座、どんど焼き祭り、農業者の新年会に参加させて頂きましたが、皆さん(70代の方々も多い)当然のことのように大雪にビクともせず、逆に待ってました!というようなムードの方、まだまだこれぐらいでは全然だねと言って、楽しみにながらワイワイ盛り上がっていました。
ご一緒する私は、いや、これはとても良い経験だなと思い始めました。山で生きる力強い先輩達の姿勢に大いに刺激を頂きながら、慣れない除雪機の扱いも随分できるようになり、雪が降ればせっせと除雪を行っています。
戸隠・西条地区の雪化粧の風景。日本昔話みたいですね。
「今年の抱負」が今月のブログテーマです。私の今年の抱負は「農産物の生産と販路の拡大」です。生命力に溢れた美味しい野菜を少しでも多くのお客さまにお届けさせて頂きたいです。昨年はテスト育苗を通じて戸隠の気候風土・土壌環境を知り農業の方向性を定めることに注力しましたので、今年はその過程で得た事を活かし生産活動に重点を置いた活動へとシフトしてまいります。ぜひとも応援のほど、よろしくお願いいたします!
土壌分析の結果が実に興味深かったこと
さて、今年からの作付けを目指し、昨年秋から約10年間耕作放棄地であった圃場の整地・再生を行ってきましたが、その土壌の分析結果が出ました。実に興味深い内容でした。まず、保肥力(CEC)の値が平均値の3倍以上ありました。保肥力とは簡単に言えば、土壌がどの程度肥料分を保持できるかという指標です。専門的には陽イオン交換容量と言われます。
分析担当の専門家の方によれば、土壌に施肥された肥料が有効に活用される度合いが高いことが期待でき、野菜栽培地として優勢的と考えられるとのことでした。この土壌の強みを活かした栽培展開をしていきたいところです。私が選んだ圃場がそうだったのか、戸隠が全体的にそういう傾向があるのかは、まだはっきりとはわかりませんが、土壌性質は野菜の味・成分・特徴等と相関関係があると思われるため、ミクロの視点から戸隠ならではの農業・農産物のさらなる可能性を模索したいと思っています。
土壌中には、粘土・鉱物や腐植が含まれていますが、これらはマイナス(-)の電荷を帯びている性質があり、一方肥料の中で養分として植物に吸わせたい要素(カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、その他微量要素など)はプラス(+)の電荷を帯びているとされています。
ですので、土壌中にマイナス(-)の電荷を帯びている要素が多量であるほど、プラス(+)の電荷を帯びている養分が土壌中に保持されやすいと言え、それは植物がイオン交換し、肥料を体内に吸収する働きを促進していくとも考えられます。
ちなみにこうした土壌・植物の電気的特性に注目し研究された農法もあり、私はその方法論を圃場で展開ができるよう昨年から理論の学習とメソッドの習得を進めてきました。マイナス(-)電子を大気・土壌に有効発生させるためのしかけも同時に製作しているところです(機会を改めて記事に書きたいと思っています)。
分析結果によると、肥料として有効作用を望める窒素分(N)が多く、カリウム(K)、カルシウム(Ca)は平均値の数倍ほど、マグネシウム(Mg)半分ほどでした。
特筆すべきはリン(P)の値です。火山灰土ですので、リン酸吸収係数が1,000以上と日本の土壌平均値700より上回っており、アルミナ系(酸化アルミニウム)の土質(礬土・ばんど)であるため、リンがアルミニウムと結合し、土壌の中で有効利用されにくいことがわかりますが、リン自体の土壌含有量が長野県の平均の5倍以上もあり、その両者のバランスが野菜にどう作用していくか興味深いところです。
ちなみに礬土であったとしても、結合し身動きが取れないリンの結合を解き放つ物質(100%天然素材)もありますので、それを適量土壌に施肥し、既に存在している土壌中のリンを有効活用していく取り組みも考えています。昨年12月に500リットル程度を自作で製造しました。同時にその化学反応のスピードを加速させていく仕組み作りにも取り組んでいるところです。想定通り行けば良いのですが。
ただ大切なこととして、専門家の方からアドバイスを頂いたのですが、土壌分析は土層の氷山の一角にすぎず、それ以外の要素要因も大いに影響をしながら野菜は成長していくので、判断の一つの指標にして欲しいとのことでした。
有機肥料作りと微量要素が多い天然肥料の調達を進めています
土壌分析結果を参考に、養分の不足要素を補うため、あるいは既に土壌に存在はしているけれども機能しない状態になっている成分を有効作用させるための有機肥料作りと微量要素が多量に含有された天然資源の調達を進めています。
これらは少々特殊な鉱物であったり、古代地層から得られるものが多いですが、根気よく探せば案外安価で手に入ることがわかりました。こういう時、インターネットは本当に便利です。資材調達目標も1月半ばで6~7割は完了しました。
有機肥料作りはどこでも手に入る米ぬか、もみ殻をはじめ、カヤやクマザサを使っています。ここに微生物の活動を促進させるための多孔質の鉱物や炭も活用します。微生物の発酵を応用した液肥も使います。微生物が生み出す菌生産物質と言われる各種ビタミン、酵素、ミネラル、アミノ酸等と植物生長との相関関係・相乗効果に期待したいと思っています。
〔先月から今月にかけて取り組んできたポイント〕
➀土壌がどういう状態であるかをまずは出来る限り客観データとして知る
②不足分、不足要素の洗い出しと土壌と相性が良さそうな野菜の目途を立てる
③植物成長のために単に肥料を入れれば良いという考えではなく
土壌に既に存在している成分要素を最大限発揮させるしかけ・取り組みを行う
④微生物活動を活性化させるための環境作り、しかけ・取り組みを行う
⑤肥料分、微生物の微細領域での化学反応、活動を促進させるために
圃場上での電気活動に注目し、マイナス(-)電子を増すしかけを作る
⑥プラス(+)電子が多い場所では中和・還元作用促進のためのしかけを作る
ちなみに土壌や植物の電気活動というと一般的にはあまり馴染みがありませんが、実際にコンセントの電圧や精密機器製造の際などに使用されるマイクロテスターと伝導率の高い電極を使用して植物の値を計測すると断続的に変化している微弱電位が計測されます(生きているため一定の数値の連続ではありません)。これは一例にすぎませんが、肥料吸収の際のイオン交換と密に関係がある現象と思われ、大切なポイントであると考えられます。
オランダ等では植物の電気活動を活用して発電技術を実装化させている研究グループ・企業もあり、実に面白い商品を世に送り出しています。以下、参考WEBページです。
★オランダでは、植物から電力を生み出している!?まったく新しい自然エネルギーに注目!
これまで栽培があまり試みられていなかった品目の育苗に挑戦しています
近年は健康ブームの高まりと共にスーパーフードと呼ばれる高栄養価を有する国内外の果実・雑穀類や在来野菜等への注目が高まってきています。その流れを感じながら農業に取り組んでいるのですが、常々戸隠の土壌・気候風土と標高800~850mを活かし珍しくも高栄養価を有する野菜の栽培ができないかを考えてきました。新しい戸隠での農業の可能性を自分なり模索してみたい想いがあったからです。昨年から情報収集を始め、何種類かの種子を入手し1月に入りテスト育苗を開始しています。
そのうちの一つが見事に発芽してくれました!
出来る限り本来の生育環境に合わせるよう心掛けていますが、土壌のPH・成分・温度・湿度・日照条件など、再現出来ることに限界があり、順調に生育してくれるかどうかは未知数です。種子の遺伝子の力といいますか、潜在力で元気に育って欲しいと思っています。そして新しい可能性を生み出してくれることを願っているところです。
また、それぞれの野菜の発芽までの大凡の積算時間を育苗環境の温度から推察して取り組んでいます。トマトやピーマンは発芽に比較的高温(25~30℃)が必要ですが、ここまで高温を保てない場合は日数がかかる分、種子が腐敗しないような環境作り心がけ、発芽基準温度を下回っても発芽が見込める工夫もいろいろと考え行っています。
日本にこれといった栽培関連資料がないものは海外の文献を探し、翻訳を試みているものもあります。
世界には実に面白い野菜・植物が無数にありますよね。それが時には人為的・商業的に日本に入ってきたり、たまたま他の植物・荷物にくっついて来たり、渡り鳥が運んだり、風に乗ったりしながら世界中を旅して、私達の国にやってきてくれることがあります。今、日本人が当たり前に食べている野菜も歴史を辿れば多くが外来種であることがわかります。
一方、特に雑草系の外来種は森林保全の点からも規制・排除という動きもあります。とはいえ、人々の健康実現のために有効な野菜を世界中を見渡してのリサーチは大きなロマンと可能性を感じます。メイン野菜の育苗・栽培の隙間で、新しく魅力的な野菜探しも行っていきたいと思っています。