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No.233

大田

弘夫さん

OTA助ファーム

「ここは最高だよ」
信里地区と農業の魅力

文・写真 島田浩美

まだまだ「若手」として、地域の農地を担う

動物園や恐竜公園があることで知られる茶臼山。その西側一帯の「信里(のぶさと)」地区には、北アルプスを臨む棚田と大小500以上のため池群が広がっています。世帯数は約400戸。のどかな里山の風情が色濃く残っている地域です。

「ここで取れる米は、江戸時代には松代藩に献上されたほどおいしいって有名なんだよ」

そう話すのは信里で農業を営む大田弘夫さん。以前はサラリーマンとして働きながら、先祖代々続いた3反歩(約30a)の田んぼで家族が食べる分だけの米を作っていましたが、定年退職した7年前からは本格的に「百姓」に精を出しています。

というのも、60代の大田さんは、信里地区においてはまだまだ「若手」。ゆえに、高齢となって農業規模を縮小する地域の先輩たちから、続々と農地を借り受けているのです。

現在、大田さんが担っている田は4ha。もともとの農地の10倍以上の広さです。もちろん、これはひとりではまかないきれません。近所の友人や息子の友だち、かつての職場の後輩や親戚など、20代~70代までの計20人ほどを集めて「OTA助(おたすけ)ファーム」という自由参加のゆるやかなユニットを組み、楽しみながら農業を行っています。

「百姓はどうしても一人じゃ苦痛になるの。でも、大勢だとおもしろいんだよ」

そう豪快に笑う大田さん。「OTA助ファーム」の由来は「大田を助けるファーム」から命名されたそうです。

「OTA助ファーム」の田植えの様子。信里には山間地の田を潤すために多くのため池があり、絶滅危惧種に指定された淡水魚・シナイモツゴや希少なトンボの生息地としても知られ、国内の研究者も足繁く通っている

苦労もあるけれど、農業と信里は「最高」

「OTA助ファーム」のメンバーは、明るい大田さんのキャラクターに惹きつけられた仲間たちともいえます。かくいう私も、実は「OTA助ファーム」の一員。大田さんの息子の友人の友人…という不思議な縁で農業を手伝うことになったのですが、今では信里と大田さん、そして農業の魅力にはまっています。

「百姓のいいところは、誰にも束縛されないところ。気にするのはお天道(てんとう)さんだけ。それが最高だ」

「最高だ」は大田さんの口癖ですが、農業の魅力はまさにこの大田さんの言葉通り。せわしない日常を離れ、太陽の下でおしゃべりをしながら汗をかいて働き、疲れたらおいしいごはんを食べて、英気を養ったら再び田畑に向かう。なんだか人間の本質的な生き方を体感しているような清々しさを感じるのです。しかも、労働の合間のごはんのおいしさったら! 疲れも心地よさを感じるほどです。

とはいえ、農業は楽しいことばかりではありません。

「収穫物の値段は自分がつけるのではなく、相手(政府や取引相手)がつけるんだから農家は大変。たくさん作ったから儲かるわけじゃないし、収穫量が少なくても相手が値をつけるんだから楽じゃないの」

それでも大田さんが農業を続ける理由とは。

「好きじゃなけりゃ、やれないな。それに、俺は退職してほかにやることがないし、飲み代が欲しいからやってるんだよ(笑)」

そう笑う大田さんですが、やはり根底にあるのは「農業が好き」という思い。さらには「信里の地域が好き」という思いがあるからです。実際「ここは最高にいいところだ」という言葉は何度も大田さんの口から聞かれますし、取材中には通りがかりの人たちが気さくに話しかけてきて、地域全体の「人のよさ」が感じられます。

信里の稲刈りでは昔からの伝統技術である「はぜかけ」が行われている。太陽光と自然の風で2週間ほどかけて乾燥させることで米の熟度が進み、おいしい「はぜかけ米」が誕生する

農作業を通じて地域の魅力を発信

そんな大田さん自慢の信里地区では、地域で「のぶさと農楽耕(のうがっこう)」という田んぼオーナー制度による農業を展開していたり、「AC長野パルセイロ」のジュニアユースの田植えを行ったり、都会の中高生の農業体験や民泊を受け入れるなど、地域と農業を通じた若者の育成に力を入れています。

「若者にとっては、こういう仕事があるって覚えるだけでも損はしないと思うよ。将来、自分の子どもが生まれたりして、ゆくゆくは家庭菜園を始めようと思ったときに役に立つから」

そう話す大田さんですが「本当は信里の人口が減って困っているから、ここに住んで百姓をやってもらえればうれしいんだけど」とも言います。

米は5~6月に田植えをして、秋に収穫するまで4カ月ほどかかります。その間、草刈りや水の管理をするほか、大田さんは玉ネギやジャガイモ、ブルーベリー、しいたけなども育てています。

「農業は年中無休。仕事は何でもあるんだよ。OTA助ファームは別に誰が参加してもいいの。皆さんの協力がなければ信里の農業は成立しませんので、くれぐれもよろしくお願いします」

農作業の合間に食べる地元食材をたっぷり使ったお昼ごはんは、大田さんでなくても「最高だ」という声が漏れてしまいそうですが、帰りには手土産としてその日収穫した野菜や米などもたっぷりと持たせてくれる大田さん。ここでは農業を通じて、自然の恵みだけでなく人の温もりも感じることができるのです。

いつでも仲間を募集している「OTA助ファーム」。ゆるやかなつながりを通じて、農業と信里の魅力にふれてみませんか。

取材時には稲の苗に水を与えていた大田さん。この苗は、JAグリーン長野の取り組みの一環として地域の子どもたちが田植えと稲刈りをし、収穫後はマリ共和国に送られるという

(2015/05/07掲載)

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