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No.478

町田

幸成さん

手作りとうふ かまおこせ

地元産大豆を使って毎朝手作り。じんわり甘みを感じる実直な豆腐

文・写真 石井 妙子

JR川中島駅前に立つ店舗の目印は、グリーンの壁と水色の看板。のれんをくぐると、「いらっしゃいませ!」と店主の町田幸成さんがはつらつとした笑顔で迎えてくれます。ここは、町田さんみずから手作りする豆腐と惣菜の店「手作りとうふ かまおこせ」。2坪ほどの店内には、朝から夕方まで多くのお客さんが訪れます。
 

大豆の状態を見極める、毎日が試行錯誤

夏とはいえ、まだ空にグレーがかった早朝5時。店舗を訪ねると、奥の厨房ではエプロン姿の町田さんがすでにてきぱきと立ち働いていました。「毎朝4時には機械を動かし始めます」と町田さん。毎朝、約80丁の豆腐を豆から手作りしています。
 
JR川中島駅から徒歩5分ほどの場所にある店舗。グリーンの壁が目印
▲JR川中島駅から徒歩5分ほどの場所にある店舗。グリーンの壁が目印
 
毎朝、店内奥の厨房で手作りする豆腐
▲毎朝、店内奥の厨房で手作りする豆腐
 
前日から水に浸けておいた大豆をグラインダーで擦り、煮釜に移してボイラーの蒸気で加熱します。この煮加減が、豆腐の味を決めるポイントの一つ。時おり煮釜の蓋を開けて様子をうかがい、味見を繰り返します。
 
「煮ているうちに豆の風味が増して、素材本来の甘みが引き出されるんです。ただし煮すぎると味が落ちてしまうから、タイミングが大切です」
 
夏は約10時間水に浸した大豆を、グラインダーにかけて一気に擦る
▲夏は約10時間水に浸した大豆を、グラインダーにかけて一気に擦る
 
専用の長い木べらで煮釜の中の生呉(大豆を擦ったもの)をかき混ぜながら10〜15分加熱。この頃合いを見定めるのが真剣勝負
▲専用の長い木べらで煮釜の中の生呉(大豆を擦ったもの)をかき混ぜながら10〜15分加熱。この頃合いを見定めるのが真剣勝負
 
毎日作っていても、気温や豆の浸水具合によってベストな煮時間は変わります。豆腐作りを始めて2年以上たった今なお、毎日が試行錯誤なのだそう。
 
「豆を水に浸ける時間、煮る時の温度、できた豆乳をかき混ぜる力の強さ、にがりの量。それらの条件がパズルのようにすべてパチッとはまった時、いい豆腐ができる。一つでも欠けると、味が変わってしまうんです。
どの工程にもポイントがあって、一つでも失敗したら他の工程でリカバリーはできないんですよね。経験を積んだ職人は打開策を持っているかもしれませんが、僕はまだそこまで到達していないから、全工程に集中して、常に一定の味わいを作ることを大切にしています」

 
加熱した呉を豆乳とおからに分離し、豆乳を適温になるまで冷ましてからにがりを入れる。「おぼろどうふは64℃ぐらい、もめんどうふは68℃くらいがちょうどいい」と町田さん
▲加熱した呉を豆乳とおからに分離し、豆乳を適温になるまで冷ましてからにがりを入れる。「おぼろどうふは64℃ぐらい、もめんどうふは68℃くらいがちょうどいい」と町田さん
 
「もめんどうふ」の元になる豆腐を型箱に入れ、上から木綿の布をかける。この上に重石を30kg以上乗せて水気を絞ると木綿豆腐の完成
▲「もめんどうふ」の元になる豆腐を型箱に入れ、上から木綿の布をかける。この上に重石を30kg以上乗せて水気を絞ると木綿豆腐の完成
 
固まった豆腐をカッターでカット
▲固まった豆腐をカッターでカット
 
できたてのまだ温かい豆腐を味見させてもらうと、自然な豆の甘みが口の中にじんわりと広がります。何の調味料も足していないのに、なんと味わい深いのか。
 
すべての豆腐に使っているのが、長野市の畑で育った大豆「ひとり娘」です。開業前に知り合いの農業法人の方に勧められて豆腐にしてみたところ、風味抜群。以来、素材本来の甘みを引き出すことにこだわっています。
 
「温かい状態だと甘みを感じやすいんです。買ったお豆腐をご自宅で食べる時も、電子レンジで温めるとおいしいですよ」
 
長野市産の「ひとり娘」。水に浸すと2倍ほどに膨らむ
▲長野市産の「ひとり娘」。水に浸すと2倍ほどに膨らむ
 
「もめんどうふ」「きぬごしどうふ」は毎朝それぞれ30丁ほどを手作り
▲「もめんどうふ」「きぬごしどうふ」は毎朝それぞれ30丁ほどを手作り
 

40歳で豆腐作りのおもしろさに開眼

かまおこせの豆腐は、豆の甘みをどっしりと感じる「もめんどうふ」、つるりとした喉ごしが心地よい「きぬどうふ」、ふるふると柔らかくいくらでも食べられそうな「おぼろどうふ」の3種類。どれも単品でおかずになるほど味わい深く、毎日食べたくなります。
 
「最近は暑くなってきたので、『おぼろどうふ』が一番人気ですね。冬は、鍋に向いている『もめんどうふ』。男性のお客さんが買いに来てくれることも増えました。晩酌のお供にしてくれるのかなと想像したりして、嬉しいです」
 
毎日、作りたての3種の豆腐が店頭に並ぶ
▲毎日、作りたての3種の豆腐が店頭に並ぶ
 
「もめんどうふ」(税込190円)はどっしりとした食べ応え。大豆の甘みが凝縮されている
▲「もめんどうふ」(税込190円)はどっしりとした食べ応え。大豆の甘みが凝縮されている
 
お客さんと話す時も笑顔が絶えない町田さん。実は約20年、札幌でホテルマンとして働いていた経験があります。故郷の長野市にUターンしたのは30代の終わり。お子さんの小学校入学を控えたタイミングで、家族で長野に戻る決断をしました。
 
「長男なので、いつかは地元に帰ろうと考えていました。子どもにとってもじいちゃんやばあちゃん、いろんな世代の大人に囲まれて育った方がいいという思いもあって。帰郷して3年ほどはホテルで働いていたんですが、40歳の時に父が営んでいた土木関係の会社の事務を手伝うことになったんです」
 
とはいえ業界の景気は悪く、業績も厳しい。副業として、時間に余裕のある朝にアルバイトを始めたのが、市内の豆腐工場でした。
 
できたての豆腐を新鮮なままパッキング
▲できたての豆腐を新鮮なままパッキング
 
「昔から豆腐は好きでね。工場でできたての豆腐を食べさせてもらった時は、『ああ、うまいな』と思いましたよ。豆腐ってこういう風味がするのかと」
 
当初は朝の時間を活用しようと軽い気持ちで始めたアルバイトでしたが、性に合ったのか6年ほど働き続け、最終的には、引退した職人を引き継ぐ形で豆腐作りを任せられるようになります。
 
厨房には「豆つけ(大豆を水に浸けること)を忘れないように」とこんなメモが。季節によって浸け始める時間が違うが、どんなに忙しくても忘れないように心がけている
▲厨房には「豆つけ(大豆を水に浸けること)を忘れないように」とこんなメモが。季節によって浸け始める時間が違うが、どんなに忙しくても忘れないように心がけている
 
「その時に『豆腐を作るのっておもしろいな』と思ったんですよね。温度や作る人によって仕上がりが変わるから、完璧なマニュアル化は難しい。いろんな条件が重なってうまくいったときは『おお!』という嬉しさがあってね。うまくできた理由を自分なりに考えてまた同じように作ってみるけど、うまくいったり、いかなかったり(笑)。それがおもしろくて、自分で大豆を買ってきて家でも豆腐を作るようになりました」
 
店先の看板
 

川中島で開店、地域で愛される喜び

会社を経営するお父様を身近で見ていたこともあり、独立志向があった町田さんは、豆腐店で開業を考え始めます。背景には、お父様の会社の名前を残していきたいという思いもありました。
 
「父の会社を僕の代でつぶすのは申し訳ないという気持ちがありました。かといって、この年から土木の仕事を始めるのは厳しい。自分ができることはなんだろうと考えて、豆腐屋を考えた。母には反対されましたが、父は、やりたいならやってみろと言ってくれました」
 
川中島で開店、地域で愛される喜び
 
イメージしたのは昔ながらの町の豆腐店。1人でできる分だけ、じっくり手をかけて作りたいと考えました。伝統的なにがりをベースにした凝固剤を使い、大量生産で使われる消泡剤は使わずに、できる限り手作業で。地域の家庭の食卓に届く必要十分な量を想定し、事業計画を練りました。
 
お父様の会社名「丸八商会」を継ぎ、業態変更として豆腐店「かまおこせ」を開業したのは2020年のこと。地元から近い川中島にあった元自転車屋の物件を紹介され、リノベーションを行いました。
 
「住んだことがない地域なので迷いましたが、今ではここで始めてよかったとつくづく思います。駅前で人通りが多いですし、向かいが郵便局なので、お客さんが目に留めてくれやすいんですよ。郵便局の方も『向かいにお豆腐屋さんができましたよ』とお客さんに話してくれたりして」
 
近くの小学校の依頼で、子どもたちが菜園で育てた大豆を預かって豆腐を作り、食べてもらったことも。ぎっしり書き込まれたお礼カードを大切に飾っている(画像を加工しています)
▲近くの小学校の依頼で、子どもたちが菜園で育てた大豆を預かって豆腐を作り、食べてもらったことも。ぎっしり書き込まれたお礼カードを大切に飾っている(画像を加工しています)
 
「何より、近隣の方々がよそから来た僕を温かく受け入れてくれたんです。高齢の方もお子さん連れの方も来てくださって『うちの子ども、豆腐が好きじゃなかったけどかまおこせさんの豆腐は食べてくれるんです』と言ってくれたり、“はじめてのおつかい”にうちを選んでくれたりね。嬉しいですよね」
 
隣の「やきとり 義経」では、かまおこせのおぼろどうふをメニューで提供しているそう。義経こだわりの塩で食べる味は「うまいですよ(笑)」と笑います。
 

豆腐と惣菜で地域の食卓に愛される

豆腐や厚揚げと並んで大人気なのが、「がんもどき」「とうふコロッケ」「おからの煮物」といったお惣菜です。調理担当は町田さんのお母様。大豆や、豆腐作りの工程で出るおからを使ってオリジナルレシピを考案しています。どれも毎日食べたいやさしい味わい。特にがんもどきやとうふコロッケは人気で、早い時間に売り切れてしまうことも多いそう。
 
左は「ひとり娘のひたし豆」(税込130円)、右は「おからの煮物」(税込160円)
▲左は「ひとり娘のひたし豆」(税込130円)、右は「おからの煮物」(税込160円)
 
月・水・金曜に登場する「がんもどき」(税込200円)は絶品!
▲月・水・金曜に登場する「がんもどき」(税込200円)は絶品!
 
「豆腐だけじゃなくすぐに食卓に出せる一品を買って帰れたら、お客さんも食事の支度が楽になるなと思って。僕は料理ができないので母に相談したら、レシピを考えてくれました。母はずっと専業主婦だったんですが、昔は13人の大家族の食事を毎日作っていたんですよね。おからの煮物なんて、僕が小さい頃から食べていたままの味ですよ」
 
時には、妻の美紀さんが店番に立つことも。家族で協力しながら、地域の食卓に並ぶ豆腐作りを実直に続けています。
 
「厚揚げ」(税込180円)は、きぬごしともめんの2種類から選べる
▲「厚揚げ」(税込180円)は、きぬごしともめんの2種類から選べる
 
3年目を迎えた今なお、「いつでも同じおいしさを届けることにこだわりたい」と町田さん。
 
「例えば『もう少し甘みを引き出したいな』と大豆を煮る時間を長くしてみたり、豆をより細かく擦ってみたりしてみると、失敗するんですよ(笑)。欲張って基本を変えてはダメなんです。
 
お客さんの中には、『友達への手土産にしたい』と、豆腐を買って行ってくださる方もいます。うちの豆腐がおいしいと思って選んでくれているんだから、期待には常に100%応えなければいけないなと思う。自分としては毎日100点満点の豆腐が作れているわけではないけれど、いつも一定の基準をクリアして、同じ味わいを届けられること。派手なことはせず、それを大切に続けていきたいと思います」

 
豆腐と惣菜で地域の食卓に愛される
 

(2022/07/29掲載)

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会える場所 手作りとうふ かまおこせ
長野市川中島町上氷鉋1352-4
電話 026-284-2508
ホームページ https://kamaokose.kawaeki.com

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