村田商店の「道祖神納豆」は、全国納豆鑑評会でたびたび認められ、平成24年度には日本一の納豆に選ばれました。納豆屋の3代目を継ぐ村田滋さんは、価格競争の嵐にもまれながら、薄利多売から品質重視へと舵を切り、村田の納豆を世に示しました。
大豆農家や経木屋さん、そして近隣の納豆メーカーとも手を携えて、長野産のおいしい納豆を追求しています。
納豆づくりは、昔は冬の風物詩でした。お米を収穫してできたワラで、味噌づくり用に煮た大豆を包む。年に一度のイベントのような感じでしょうか。今では朝に限らず納豆を食べますが、朝ごはんの定番になったのは江戸時代の頃。毎朝、納豆売りがかけ声とともに売りに来たそうです。納豆売りといえば、新聞配達と一緒で、昔は学費を稼ぐ子どもの仕事のひとつだったそうです。
うちのルーツは宮城県の納豆屋です。祖父が長野市で創業し、私が3代目になります。私が継いでから、大量につくって安く売るというやり方を思い切ってやめて、大豆生産農家のみなさんとやりとりしながら、原料から重視した納豆づくりをしています。
添付のタレについても、メーカーさんにお願いして、少しずつ添加物を減らそうと取り組んでいます。商品によってタレをつけていないのもあります。うちの食卓にあった醤油が一番しっくりきた、というのが理由ですが。
2013年に工場併設の直売所を設けました。そこで毎月末に販売するのが「温泉たまご納豆」です。温泉卵と納豆と、薬味やタレもセットにした直売所限定の商品です。
発酵学の権威、小泉武夫先生の著書にヒントを得た、村田家定番の「納豆丼」
東京・渋谷のヒカリエ8階にある「d47食堂」でうちの大粒納豆をお出ししてるんですが、5月開催予定のイベント限定販売用に、特別の温玉納豆を開発しているところです。富山の「セイアグリー健康卵」と、大阪の「こんぶ土居」さんにお願いした特注のだしを使って。どんなものになるのか、価格も含めてドキドキしています。
食べたい納豆が好きな食べ方で用意してある、食卓に定位置がある、というように、食事のなかのしっかりとしたポジションを確立したい。村田の納豆でご飯を食べたいと言ってもらえたら、ありがたいです。
朝のエネルギーを摂取するためにも、食習慣を身につけるためにも、子どもには朝ごはんを食べさせたいものです。朝、食べ残したら、夜に出せばいいと、私は思うんですけど。嫌いなものでも、必ず家族全員同じものを出します。嫌いだから食べなくていい、食べないから用意しない、というのはよくないと思います。
子どもが楽しみにしてくれるメニューがあったらいいなと思ってご紹介している食べ方が、わが家流の「納豆丼」です。油をひいて熱したフライパンに味つけした納豆を置いて、真ん中をくぼませて卵を割り入れます。下がカリッと、黄身が半熟になるくらい焼いたら、ご飯にのせます。ネギとおかかをかけて、醤油をさっと回しかければできあがり。これはおいしいですよ。ぜひお試しください。(談)
村田商店 代表取締役
村田 滋さん
1951(昭和26)年創業、「一茶納豆」でも知られる村田商店の3代目。90(平成2)年に家業に入り、96(同8)年から代表取締役を務める。地元の神楽保存会では獅子を舞う。
村田商店 | 長野市若里1-4-8 電話 026-226-6771 |
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