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No.493

戸谷

尚弘さん

カフェ&パティスリー「Rondinella(ロンディネッラ)」シェフパティシエ 株式会社メゾンビー代表取締役

茶臼山の絶景カフェからフランス菓子と長野の食材の魅力を発信

文・写真 島田 浩美

表面にこんがりと焼き色が付いたインパクトのある見た目と、クリーミーで濃厚な味わいが特徴のバスクチーズケーキ。2018年頃から日本で一大ブームとなり、いまやすっかり市民権を得た大人向けのスイーツです。そんなトレンドのスイーツの火付け役でもあるパティシエ・戸谷尚弘(とだになおひろ)さんが手がけるカフェ&パティスリー「Rondinella(ロンディネッラ)」は、長野市の里山・茶臼山の中腹という、わざわざ目指して行かなければたどり着かないような立地ながら、2022年1月にオープンするやいなや、絶品スイーツと絶景が楽しめるとあって、瞬く間に評判が広がりました。今では県内外からこぞって客が訪れる人気店として知られます。
 
表面にこんがりと焼き色が付いたインパクトのある見た目と、クリーミーで濃厚な味わいが特徴のバスクチーズケーキ。
 

日本で培った技術を生かし、憧れのフランスでパティシエとして成長

看板メニューは、やはり戸谷さんの代名詞ともいえるバスクチーズケーキ。天龍村の特産「中井侍銘茶」を使ったバスクチーズケーキなど、県内産の素材を使ったここでしか味わえない限定品も揃います。ほかに、地元産のりんごを使ったアップルパイやケーキ、焼き菓子も豊富。サンドなどの軽食や、ランチタイムには食事メニューも楽しめるとあって、平日といえども時間帯を問わず、老若男女の幅広い客層が訪れます。
 
茶臼山東側の斜面に佇む店舗は周囲にりんご畑が広がり、眼下には善光寺平を一望できる
▲茶臼山東側の斜面に佇む店舗は周囲にりんご畑が広がり、眼下には善光寺平を一望できる
 
戸谷さんがパティシエを目指すようになったのは20歳の頃。昔から料理に興味があり、東京の料理専門学校を卒業後、都内のフレンチレストランに就職しました。そこで最初に任されたデザート作りが、パティシエの原点です。
 
「自分で初めてクレームブリュレを作って、すごく感動しました。もともと洋菓子を食べることも大好きだったので、それを作れる喜びが生まれ、勤務先のシェフにパティシエになりたいと相談しました」
 
戸谷さんがパティシエを目指すようになったのは20歳の頃。
 
シェフの返事は「洋菓子は人間が生きていくために必要なカロリーではなく、特に日本人にとっては生活に不可欠なものではないので厳しい道になるが、食事の最後に提供される特別なもので、誕生日や結婚式などでは主役にもなれる。人の心を満たせる素敵な職業だ」というもの。
 
こうして、戸谷さんはパティシエへと方向転換し、職場のグループ店に勤めるフランス人パティシエからお菓子作りを学ぶようになりました。
 
こうして、戸谷さんはパティシエへと方向転換し、職場のグループ店に勤めるフランス人パティシエからお菓子作りを学ぶようになりました。
 
次第にフランス菓子やフランスの文化など、フランス自体に興味が湧き、日本でより専門的な知識と技術を得てから渡仏しようと、フレンチレストランからパティスリーに転職。十数年間、修業を積み、2013年、30代半ばで念願のパリへと向かいました。
 
当初はフランス語が喋れずゼロベースでのスタートだったため、言語には苦労しましたが、パティスリーを兼ねたパン屋に就職。その後、現地で知り合った日本人の紹介で、1834年創業の老舗パティスリー「ラ・ヴィエイユ・フランス」に転職しました。
 
「クラシックな厨房はまるで博物館のようで、100年前から使っている型や、見たこともないような道具などが使われていました。作られるケーキもクラシックなものが多く、古いものが好きなので、働いていて面白かったですね」
 
戸谷尚弘さん カフェ&パティスリー「Rondinella(ロンディネッラ)」シェフパティシエ
 
しかし、やはり不慣れなフランス語によるコミュニケーションには苦労しました。もともと日本でフランス人パティシエと働いていた経験から、レシピや材料など、製菓の専門用語のフランス語は理解していましたが、会話ができず、当初は自己嫌悪に陥ったそうです。
 
それでも、店の仕事を早く覚えなければいけないなかで、語学学校にも通いながら、とにかく真面目に前向きに働くことを意識しました。
 
「自分に何ができるかを考え、卵を早く割るなどの技術をアピールしつつ、伝えたい表現を単語帳に書き出して相手に文字で伝え、少しずつコミュニケーションを取って店の流れに入っていきました」
 
カフェ&パティスリー「Rondinella(ロンディネッラ)」
 
最初は辛い日々でしたが、少しずつ語学力もアップ。実直な働きぶりも評価され、「ラ・ヴィエイユ・フランス」のシェフとマダムからは、親子のように可愛がってもらえたそう。
 
「この店で、フランスのことやフランス人の懐の深さなどを知りました。今でもフランスに行くときは、いつもシェフとマダムの家に泊めてもらっています」
 
「この店で、フランスのことやフランス人の懐の深さなどを知りました。今でもフランスに行くときは、いつもシェフとマダムの家に泊めてもらっています」
 
こうして8ヵ月が経った頃、少しずつフランスの地方都市にも目を向けるようになった戸谷さん。もともと地方での菓子作りに興味があったことから、旅行でフランス各地を訪れていましたが、フランス・バスク地方のリゾート地、ビアリッツという美しい街で出合ったのが、伝統菓子のガトーバスクです。
 
それまで戸谷さんがイメージしていたガトーバスクは、カスタードクリームが入ったホールの焼き菓子。ところが現地では、ホール以外にも、一つひとつ小さく焼かれたタイプがあり、バスク地方の特産であるさくらんぼのジャムが入ったものが定番でした。
 
「自分が今まで日本で食べたり、イメージしていたものと全く違い、感銘を受けました。この街でガトーバスクの製法を学びたい、なかでも自分が最もおいしいと思った店『ミルモン』で働きたいと、履歴書を持って飛び込みました」
 
現在「Rondinella」で販売しているガトーバスク。アーモンド入りのクッキー生地に黒さくらんぼのコンフィチュールを詰めて焼き上げている
▲現在「Rondinella」で販売しているガトーバスク。アーモンド入りのクッキー生地に黒さくらんぼのコンフィチュールを詰めて焼き上げている
 
「ミルモン」もまた、地域を代表する老舗パティスリー。お世話になった「ラ・ヴィエイユ・フランス」のシェフ夫妻も、戸谷さんの人間性や仕事ぶりを評価し推薦してくれ、バスク地方で新たな技術を学ぶことになったのです。
 
「ミルモン」もまた、地域を代表する老舗パティスリー。お世話になった「ラ・ヴィエイユ・フランス」のシェフ夫妻も、戸谷さんの人間性や仕事ぶりを評価し推薦してくれ、バスク地方で新たな技術を学ぶことになったのです。
 

チーズケーキの概念を覆す出合いと前向きなチャレンジ精神

「ラ・ヴィエイユ・フランス」が少数精鋭の小さな店舗だったのに対し、「ミルモン」は従業員が多く、若くやる気のあるスタッフがあふれる競争社会でした。仕事を積極的に取りにいかないといけない状況のなか、戸谷さんは入って2日目に、シェフと一緒に働くという機会に恵まれます。
 
これまでにないほどの気合を入れて臨み、神経を研ぎ澄ませ、素早く正確な動きを意識した戸谷さん。結果、技術が認められ、限られたビザの期限内で多くを学べるよう、シェフと仕事をするメインのポジションを任されるようになりました。
 
「日本人の技術力は世界でも通用するのだと実感しましたし、シェフも周囲の若いスタッフたちも僕を信頼してくれ、仲間同士でふざけ合ったりもしつつ緊張感もある職場はすごく楽しかったですね」
 
「日本人の技術力は世界でも通用するのだと実感しましたし、シェフも周囲の若いスタッフたちも僕を信頼してくれ、仲間同士でふざけ合ったりもしつつ緊張感もある職場はすごく楽しかったですね」
 
仕事は朝早くから始まる分、終業時間も早かったため、退勤後は食事や飲みに出かけることも多かったそう。ビアリッツから電車で1時間ほどにあるスペイン側のバスク地方の観光地で、“美食の街”として知られるサン・セバスチャンの旧市街のバル街にもよく足を伸ばしていました。
 
なかでも世界的に有名なバル「ラ・ビーニャ」のチーズケーキ(Tarta de Queso)はずっと食べたいと思っていた一品。このチーズケーキこそが、まさに、戸谷さんが生み出したバスクチーズケーキのルーツです。
 
「『ラ・ビーニャ』のチーズケーキは食べたいという期待値が上がりすぎていたのに、初めて食べたときは期待以上の味わいに衝撃を受けました。こんなにおいしいチーズケーキがあるんだと驚き、気が付いたら食べ終わっていました。シンプルな焼きっぱなしのチーズケーキなのに、外側の香ばしさと、とろっとしたなめらかな中身にストーリー性を感じ、感動的でしたね」
 
「『ラ・ビーニャ』のチーズケーキは食べたいという期待値が上がりすぎていたのに、初めて食べたときは期待以上の味わいに衝撃を受けました。こんなにおいしいチーズケーキがあるんだと驚き、気が付いたら食べ終わっていました。シンプルな焼きっぱなしのチーズケーキなのに、外側の香ばしさと、とろっとしたなめらかな中身にストーリー性を感じ、感動的でしたね」
 
製法を学びたかったものの、フランスの就労ビザではスペインで働けないため、何回も食べに行ってはレシピを想像したそう。そして、フランスでの2年間の修業を終え、2015年に帰国。日本でバスク地方を表現するお菓子を提供しようと、同年6月、東京・白金に、戸谷さんの第一号店となる菓子店「MAISON D’AHNI(メゾン・ダーニ)」をオープンしました。
 
「『ガトーバスク』を中心に、少しずつ商品のラインアップを増やしていきました。そんななかで、次第にチーズケーキも作りたいと思うようになり、想像していたレシピで『ラ・ビーニャ』のチーズケーキを再現しようとしたんです。しかし、何回試しても、それらしきものはできるものの、なかなか本場の味にはなりません。安易に考えていました」
 
「『ガトーバスク』を中心に、少しずつ商品のラインアップを増やしていきました。そんななかで、次第にチーズケーキも作りたいと思うようになり、想像していたレシピで『ラ・ビーニャ』のチーズケーキを再現しようとしたんです。しかし、何回試しても、それらしきものはできるものの、なかなか本場の味にはなりません。安易に考えていました」
 
「MAISON D’AHNI」を開店後も、何度も現地に赴いては「ラ・ビーニャ」でチーズケーキを食べ、帰国して試作を繰り返す日々。いよいよ自分ひとりでの完成は難しいと考えた戸谷さんは、かつて「ミルモン」に飛び込んだように、思い切って日本から、手紙やSNSで製法を学びたい旨を送り続けました。しかし、2年間アタックしても返事は来ず。半ば諦めかけ、最後にもう一度、現地で食べて踏ん切りをつけようと、2018年、再び「ラ・ビーニャ」に向かったのです。
 
すると、ちょうど空いている時間帯で、日本人客が珍しいこともあってか、シェフから「以前もよく来てくれていたよね」と話しかけられました。そこで、これまでの経緯や手紙を送り続けていたことを伝えたところ、どうやら、手紙は読んでいたものの同様の問い合わせが多く、返事ができない状態だったことが判明。また、労働保険の制度上、家族以外が働けない規定により、外国人が働くことは難しいことがわかったのです。
 
それでも、戸谷さんの再来店を喜び、その熱意を買ってくれたシェフ。「この場でなら教えられる」と戸谷さんを厨房に招き入れ、直々に作り方とレシピを教えてくれました。
 
「やはり、実際に教えてもらうと根本が違っていたことがわかりました。からくりが解けた感じです。教えてもらわなければゴールには到達できませんでした」
 
こうして「ラ・ビーニャ」のチーズケーキの再現に成功した戸谷さん。メニュー名を「バスクチーズケーキ」とし、せっかくなら専門店を立ち上げようと、2018年に二号店となる「GAZTA(ガスタ)」を一号店近くにオープンしました。
 
こうして「ラ・ビーニャ」のチーズケーキの再現に成功した戸谷さん。メニュー名を「バスクチーズケーキ」とし、せっかくなら専門店を立ち上げようと、2018年に二号店となる「GAZTA(ガスタ)」を一号店近くにオープンしました。
 
“美食の街の真っ黒チーズケーキが日本初上陸”の話題はネット上で広がり、開店早々、大人気に。そこに目をつけたのが、コンビニエンスストア「ローソン」です。開発責任者が「GAZTA」のバスクチーズケーキを高く評価し、開発を重ね、2019年に「バスチー」の商品名で全国展開。「バスクチーズケーキ」が一気にトレンドとなり、本家「ラ・ビーニャ」から製法を継承した唯一の店として、「GAZTA」の名はたちまちスイーツ界に広がりました。
 
“美食の街の真っ黒チーズケーキが日本初上陸”の話題はネット上で広がり、開店早々、大人気に。そこに目をつけたのが、コンビニエンスストア「ローソン」です。開発責任者が「GAZTA」のバスクチーズケーキを高く評価し、開発を重ね、2019年に「バスチー」の商品名で全国展開。「バスクチーズケーキ」が一気にトレンドとなり、本家「ラ・ビーニャ」から製法を継承した唯一の店として、「GAZTA」の名はたちまちスイーツ界に広がりました。
 

景観と素材の魅力に惚れ込み、決意した長野での開業

その後も、東京・白金に5店舗をオープンし、6店舗目にして、初の東京以外の地方出店となったのが「Rondinella」です。きっかけは、一号店「MAISON D’AHNI」創業時から続けている、全国の素晴らしい食材探し。各地を訪ねるなかで、知人を介して知り合ったのが、長野市篠ノ井有旅(うたび)地区の茶臼山斜面でりんごを栽培する「小林農園」の小林 仁さんでした。
 
「小林さんのりんごはすごくおいしいですし、栽培に対するこだわりや思いを聞くなかで、菓子作りとりんご作りに共通する部分を感じました。男として尊敬できる人だと思っています」
 
こうして2015年以来、小林さんと交流を続け、東京のスタッフを連れてりんごの収穫を手伝いに来ることも。りんご以外にも、キウイフルーツやシャインマスカット、洋梨、栗、ラズベリーやブルーベリーなどを作る小林さんの畑から見える風景にも、戸谷さんは魅了されました。
 
「こんなに素晴らしい景色の場所でカフェができたらいいなと思うようになりました。それに、小林さんからいつも言われていたのは『どういう状態で果物を使うのか』ということ。そこで、長野に来て小林さんと素材の状態をすり合わせ、東京に送ってもらったら即座に加工をしていましたが、もし畑に隣接する場所でケーキを作れたら、素材をすぐに使えて最高だとも思っていました」
 
「こんなに素晴らしい景色の場所でカフェができたらいいなと思うようになりました。それに、小林さんからいつも言われていたのは『どういう状態で果物を使うのか』ということ。そこで、長野に来て小林さんと素材の状態をすり合わせ、東京に送ってもらったら即座に加工をしていましたが、もし畑に隣接する場所でケーキを作れたら、素材をすぐに使えて最高だとも思っていました」
 
次第にその思いが高まり、70歳を過ぎた小林さんの後継者が不在だったことも考慮して、「この風景とりんごを守りたい」との思いで、意を決してカフェの開業を小林さんに相談。長年の交流で築いた信頼関係により承諾も得られ、実現することになったのです。
 
次第にその思いが高まり、70歳を過ぎた小林さんの後継者が不在だったことも考慮して、「この風景とりんごを守りたい」との思いで、意を決してカフェの開業を小林さんに相談。長年の交流で築いた信頼関係により承諾も得られ、実現することになったのです。
 
カフェの建物は、蔵があった見晴らしのよい場所に新築。景観を配慮し、小林さんの思い出も引き継ぎつつ、季節ごとに移り変わる四季折々の風景や、朝昼晩と1日のなかでも変化する景色と空気感を大切にしたいとの思いでつくり上げていきました。
 
もともと「小林農園」の蔵に付いていた標章を外壁に活用
▲もともと「小林農園」の蔵に付いていた標章を外壁に活用
 
店名の「Rondinella」は、可愛らしいツバメのヒナを意味するイタリア語。毎年、蔵にツバメが飛来して巣を作り、居心地よさそうに過ごしていたヒナたちが巣立っていく様子が見られたことが由来です。
 
「ツバメのヒナのように、お客さまにもここで心地よく過ごしてもらい、1階のファクトリーでは果物の宝庫である長野の食材を使ったスイーツを手作りして、全国に送り出すことでおいしさを広く届けたいとの思いを店名に込めました」
 
「ツバメのヒナのように、お客さまにもここで心地よく過ごしてもらい、1階のファクトリーでは果物の宝庫である長野の食材を使ったスイーツを手作りして、全国に送り出すことでおいしさを広く届けたいとの思いを店名に込めました」
 
提供するスイーツには、小さなキズや変形がある規格外の果物も積極的に使用。小林農園のものだけでなく、長野市役所から紹介を受けた農家のはねだしも使っています。
 
「キズを取り除けばおいしさは全く遜色がありません。出荷できない果物を使うことで農家さんを支援できますし、我々としても素材を安く仕入れることができます。当初、中心市街地から離れた立地には不安もありましたが、このように地元の方々や市役所の職員と携わっていくなかで皆さんの優しさや協力に助けられ、開店の後押しになりましたね」
 
生産者の顔が見える食材は手を加えすぎず、素材自体のおいしさが引き立つよう製法にも配慮しています。
 
シャインマスカットは皮ごと食べられる食感を大切に、まるごと味わえるようなスイーツに
▲シャインマスカットは皮ごと食べられる食感を大切に、まるごと味わえるようなスイーツに
 
また「小林農園」のりんごは糖度が高いことから砂糖を加えすぎず、りんご本来の甘さや香りが立つよう工夫。限定品の「窯出しアップルパイ」は、サンふじの甘みを生かし、こっくりとした深みのある味わいで、サクサクのパイ生地とアーモンド風味のクッキー生地とも好相性の絶品です。
 
小林農園のりんごを使った「窯出しアップルパイ」
▲小林農園のりんごを使った「窯出しアップルパイ」
 
「長野に来たことで、炎天下や風雨の寒さにも耐え、生産者さんが日々努力して育てた農作物を預かる立場として、素材を大切に作らないといけないという責任感は今までよりも強くなりました」
 
加えて、小林さんから、近年は地域の人口減少が進み、人と野生動物との生活環境の境界が曖昧になっていることで、農作物の鳥獣被害も増えていると聞いたことから「スタッフやお客さまが往来することで、地域に活気を生み出し、獣害対策の力にもなれたら」と戸谷さん。その思いも踏まえ、食事メニューでは長野市産の鹿肉など、ジビエを使った料理も提供しています。
 
人気メニューのひとつ「長野市産ジビエ鹿肉の焼きカレー」。じっくり煮込んだ鹿肉カレーにたっぷりとチーズをのせて焼き上げ、中からとろける卵が現れる一品
▲人気メニューのひとつ「長野市産ジビエ鹿肉の焼きカレー」。じっくり煮込んだ鹿肉カレーにたっぷりとチーズをのせて焼き上げ、中からとろける卵が現れる一品
 
店内で使っている器や皿、オブジェなどの陶器は、有旅地区内の4つの窯元に作ってもらったオリジナル。「地域の魅力を伝える場所としても一役買いたい」との思いで使用している
▲店内で使っている器や皿、オブジェなどの陶器は、有旅地区内の4つの窯元に作ってもらったオリジナル。「地域の魅力を伝える場所としても一役買いたい」との思いで使用している
 
さらに、開店準備の期間中はコロナ禍だったことから、小学生の子を持つ親でもある戸谷さんの心境の変化もあったそう。
 
「東京では子どもが公園などで遊べなくなりましたが、長野に連れてきたら、虫を見たり走り回ったりと自由に遊ぶんです。その姿を見て、自然豊かな長野は、食材だけでなく遊び場としても刺激的だと感じました」
 
自然に調和した建物は「第35回長野市景観賞」を受賞。約60施設のノミネートのなかで3施設が選ばれ、ほかが公共施設だったのに対し、店舗の受賞は唯一
▲自然に調和した建物は「第35回長野市景観賞」を受賞。約60施設のノミネートのなかで3施設が選ばれ、ほかが公共施設だったのに対し、店舗の受賞は唯一
 
こうして開店以来、客足の絶えない人気店としての地位を確立し、地域に新しい風を吹き込んでいる「Rondinella」。戸谷さんは、お菓子作りや接客を通じて人に幸せを提供し、喜んでもらううれしさが、結果的に自分の幸せにもつながる循環をスタッフとも共有したいと話します。
 
「幸せを提供する空間として、ここからさまざまなつながりをつくっていきたいですね」
 
テラス席も含め、客席は予約可能。特に混み合うランチからティータイムの時間帯は予約がおすすめ
▲テラス席も含め、客席は予約可能。特に混み合うランチからティータイムの時間帯は予約がおすすめ
 
今年4月には、新たに東京・白金にカヌレ専門店「ルトレーズ」もオープン。精力的に活動し、業界を牽引する華やかな経歴を持つ戸谷さんですが、取材を通して見えたのは、誠実な人柄と真摯に洋菓子作りに向き合う姿勢です。その魅力こそが「Rondinella」の人気の糧になっているのでしょう。この場所から広がっていく多彩な可能性とつながりに、未来を感じずにはいられません。
 
カフェ&パティスリー「Rondinella」

(2023/12/11掲載)

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会える場所 カフェ&パティスリー「Rondinella」
長野市篠ノ井有旅6408-1
電話 026-299-3566
ホームページ https://valuet.co.jp/maison-b/rondinella/


9時〜18時(土・日曜、祝日8時〜)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)

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