近年、高い評価を得ている長野県産ワイン。その普及、振興を後押ししているのが「NAGANO WINE応援団運営委員会」です。
代表でシニアソムリエの成澤篤人さんは県産ワインの魅力をこう話します。

「ワイナリーやブドウ畑に行って、つくっている人の話を聞いたり、景色を見たりする。そうすると、単純にワインの味を楽しむだけではなくて、その背景にある人の思いだとか、育った風景だとかも思い浮かべながら味わえます。地元のワインは、そういう楽しみ方ができますね」

成澤さんが県産ワインに魅入られたのは、自身が独立してお店を開く以前のこと。知人の付き添いで小布施ワイナリーへ行く機会があり、そこでワイン畑の美しさと、醸造所で働く人たちの思いに触れ、心を動かされます。

「自分のお店を出したら、地元のワインをたくさん出したいなと思いました。地元でこんなに頑張っている人がいるんだから、こういう人たちを応援していくようなソムリエになりたいなと思ったんです」

成澤さんがソムリエの資格を取ったばかりのことでした。

8月22日（金）からの3日間、成澤さんたちNAGANO WINE応援団運営委員会は「ワインガーデン・イン・ナガノ2014」を長野市の南千歳公園で開きます。長野市では初めてとなる野外での大規模なワインイベントです。

「ワインが好きな人だけではなくて、このイベントをきっかけに『地元のワインってこんなにおいしいんだ』って知ってもらいたいんです。こういうのって続けていかない限り、定着していかないと思うんで、これからも継続して一般の人たちが県産ワインに触れる機会を作りたいと思っています」

イベントには、県内の殆どと言っていい25のワイナリーが参加します。初めての開催だけあって手探りの準備が続いていて、集客も読めない部分が大きいといいますが、成澤さんは当日を心待ちにしています。
原動力になっているのは、つくり手の思いを伝えたいという気持ちです。ワイン応援団の活動のみならず、自身のお店の経営にもその気持ちが大きく影響しているといいます。

「ワイナリーの皆さんは、つくるのに忙しいですからね。出荷してしまえば、そこから先は自分の思いを伝えることが難しいと思いますので、自分たちみたいに一番飲む側に近い人間が、このワインはどんな人がどういう思いで作っている、というのを伝えて、ファンになってもらえたらいいなと思っています」

成澤さんは2014年、シニアソムリエの資格を取得しました。既にNAGANO WINE応援団運営委員会の代表として活動していた成澤さんにとって、大きなプレッシャーのかかる試験でした。それを乗り越えることができたのは、県産ワイン普及の旗振り役としての覚悟が大きかったといいます。

「（県が提唱する）ワインバレー構想も10年先まで見据えているとうたっていますけど、高い水準で続くかという不安は持っています。一過性のものに終わるのが一番こわいんですよ。そうならないために、自分は前に出て、声を出す。ずーっと声を出している人間がいれば、一過性のものに終わらないと思うので。そうした使命感は持っています。誰から言われたものでもないんですけど、長野県のワインを広めるために今自分が存在していると自分で思っていれば、自分がやらなければいけないことになりますから」

“なりたい自分”を口外することで、自分の店を持ち、県産ワインの旗振り役となり、シニアソムリエにも合格した成澤さん。現在、口外している夢は、自身のワイナリーを持つことです。

「4年前から言っていますね。言っていると、何となくかたちになっていて、あと4年後くらいにはできている気がしています」

成澤さんのワイナリーが建設されることを心待ちにしている人は少なくありません。地元・坂城町では成澤さんのワイナリー向けに出荷することを夢見てよりよいワインブドウ作りに励んでいる人もいます。

つくり手の思いを伝える立場から、つくり手として思いをボトルに詰め込む側へ。

「なるようにしかならないんですよ。でもね、できると思っています」

そう笑いながら、成澤さんは力強く前を見据えます。

成澤さんのお店には多くのファンがいます。応援団としての活動にも多くの支持者がいます。その理由の一端が見えたインタビューでした。