信州新町には篠ノ井高等学校犀峡校があり、眼下に犀川を見下ろすことができます。
同校のカヌー部が来たる8月7日から10日まで山梨県富士河口湖町精進湖カヌー競技場にて行われるインターハイに出場が決まりました。

「この高校に赴任して3年目ですが、赴任して早々『カヌー部の顧問やってもらうから』って言われて、すぐにマイクロバスとモーターボートの免許を取りに行きましたよ」

こう話すのはカヌー部の顧問、吉澤国将さんです。
伊那北高等学校時代は3年間ラグビーでセンターをやったバリバリのスポーツマン。大学に進学しスポーツの楽しさを伝えたいという思いから教師を目指します。
県内で８年ほど保健体育の講師を務め、3年前に篠ノ井高等学校犀峡校に教諭として赴任します。そして、赴任して早々に冒頭の出来事。

それまではカヌー未経験だったため、前任の顧問の先生に付きながら勉強していったそうです。
カヌーにはカナディアンとカヤックの2種類がありますが、篠ノ井高校犀峡校カヌー部は、今年カナディアンのシングルとペア、男女カヤックのシングルとペアの競技においてインターハイ出場を決めました。

現在夏休みに入り、インターハイを間近に控えたカヌー部の1日は、朝9時30分から始まります。
練習メニューは「乗艇」といって、12時まで専ら犀川で漕ぐ練習を繰り返します。
2分~2分30秒ひたすら漕ぎ続け、その後インターバルをあけてまた漕ぎます。途中に水分を摂る休憩はありますが、これをひたすら繰り返します。お昼を挟み、午後も1時から4時まで同様のメニューを行います。

「非常に練習はきついと思いますが、大会では500メートルを全力で漕ぎ続けるため、筋スタミナと心肺機能が必要なんです」
と吉澤さんはいいます。
また、川での練習が出来ないときはウエイトトレーニングや走り込みを行い、日々、体力強化に努めているそうです。

これだけのトレーニングをしているのであれば、さぞムキムキの部員たちが来るのでは？と筋肉マニアの編集部・新津の胸筋がピクピクしていると、現れた部員は意外にもスマートでした。
疑問を吉澤さんにぶつけてみるとこんな意外な答えが返ってきました。
「カヌーは上半身ばかりをそんなに鍛える必要はないんですよ。漕いでいる最中に左右にぶれないためには、むしろ体幹と下半身が大事。彼らは見た目は細身ですが、芯はしっかりしていますよ」
上半身だけ鍛えて人間としての芯がしっかりしていない編集部・新津には胸に突き刺さる一言。

そんな理想的なボディーを持つ部員たちは川の上で、いとも簡単に乗りこなします。
「簡単に乗っているようですが、訓練を積まないとすぐに沈（沈水するの意）しちゃいます。だから乗っているだけでもすごいことなんですよ。一番難しいのは止まっている状態です。バランスが非常に必要なんですよ。だから、パドルで水面を叩きながらバランスを取るんです」
とカヌーの難しさを教えてくれました。

最後に、今年が最後の大会になる3年生の部長、宮嵜雅喗（まさき）さんにお話を聞きました。

「中学時代から入りたかったカヌー部で念願のインターハイに出られて非常に嬉しいです。今年最後の大会なので、個人としての目標は上位入賞。チームとしては各々の目標を達成してほしいと思っています」

卒業後も大学でカヌー部に入り、地元に帰った際には後輩の指導もしたいという宮嵜さん。

1996年に創設されたカヌー部は今年で18年目を迎えますが、一貫して行っていることがあります。

「練習中でも必ず川のゴミ拾いをします。そして、川という自然を使わせてもらっているので感謝する。これは、部員たちに徹底させています」
と吉澤さんは話します。

男女合わせて7名の水上の漕魂たちが是非とも故郷に錦を飾ることを願うばかりです。