No.357
望月
ひとみさん
喫茶・古本「大福屋」
故郷の風景を残したい
文・写真 小林隆史
望月ひとみさんは、東京から長野にUターンしてきて、2016年12月、喫茶と古本のお店「大福屋」をオープンさせました。「善光寺界隈は高校時代を過ごした思い出の地。この街の風景を残していきたい」と、善光寺の東、岩石町の趣ある建物で、お客さんを迎えています。
この建物と暮らしていきたい
「大福屋」は、珍しい造りの建物で、2棟の古民家がひとつにつながっています。店内には、下宿や魚屋を営んでいた頃の古い食器棚や机、本などが残っていて、どこか昔懐かしい雰囲気。1階に古本スペース、2階に喫茶スペースがあります。ゆったりと読書をしながら、コーヒーや牛乳、土鍋うどんを味わうのがオススメ。細い裏通りの先に、ひっそりと佇むこの場所は、ほっと安らぐ隠れ家のようです。
東京で観光に関わる仕事をしてきた望月さん。長野を離れても、いつも心のどこかに「地元の魅力を県外の人にも、地元の人にも知ってもらえるようなことがしたい」と考えていたそう。そして、昨年、長野市にUターンしてきました。
そんなある日、善光寺界隈で毎月開催されている「空き家見学会」に参加することに。高校時代を過ごしたこの街を、数年ぶりに巡った望月さん。周辺には、古民家を改修したお店や家がたくさんあることを知り、漠然と「古民家を改修して住んでみたい」と考えるようになりました。そして、この建物と出会い、望月さんの思いは大きく変わります。
「この建物と出会った時、なぜか『この建物を引き継いでいきたい』という強い思いが湧いてきました。そして、建物の造りを見て、もともと下宿として人が集まる場所だったということを聞いて、家ではなく、お店として開くことができないだろうかと考え始めていました」
石垣の土台に立つ手前の建物が古本スペース。入り口を開けて「こんにちは」と声をかけると、望月さんの「いらっしゃいませ」が2階の喫茶スペースから返ってくる
2階の喫茶スペースは、下宿を営んでいた頃の食堂と和室を改修。障子の向こう側には、縁側があり、外の陽が気持ちよく入ってくる
この建物の魅力に惹かれた望月さんは、お店を開くことを決意。古民家生活への憧れは、この建物でお店を営み、明かりを灯し続けていくという夢に変わりました。
実は、望月さんにとって、喫茶店や飲食店を営むのは初めての経験。しかし、喫茶店という枠にとらわれることなく、この場所だからこそできることを模索し、今後はイベントや演奏会なども企画していきたいと希望を膨らませています。
1階の古本スペース。開業前に実施したクラウドファンディングの出資者が出品するというユニークな仕組みを取り入れている。この場所らしさをテーマに、8組の出品者による選書が日々更新されていく
地域の拠り所にしたい
故郷に戻ってきた望月さんは、改めて、この街の古い建物や歴史、風情が好きになったと言います。そして、自分が生まれ育ったこの街のよさをもっと知りたいと思うようになったそう。
ーーー「この場所から、街を元気にするきっかけをつくっていきたい」。望月さんは笑顔でそう話します。
「生まれ育った長野という街は、自分にとってかけがえのないもの。善光寺門前町の街並みやここに暮らすご近所さんの人柄にあたたかさを感じています。『大福屋』は、地域の人たちが気軽に集まれる場所にしていきたいです。もっとこの街の良さを発見して、語り継いでいけたら嬉しい」
そう語り、お客さんとの出会いを楽しみにしている望月さん。
取材中、お手製のワッフルドックとコーヒーを口にしていた近所のご夫婦が、「落ち着くね。親戚の家に来たみたい」とつぶやいていました。望月さんの願いは叶いつつあるようです。
コーヒー(320円)とワッフルドック(290円)。「もうひとつの家のようにくつろいでほしい」と、手軽なメニューと親しみやすい料金設定にしている
鶏ガラスープをベースに、隠し味の牛乳がまろやかさを引き出す特製牛乳うどん。その名も「ぎゅうにゅうどん」(450円)。開業準備を手伝ってくれた知人たちと、一緒に食べた思い出の味。この他にも、スパイスを足したカレー味もある
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会える場所 | 大福屋 長野市岩石町222-1 電話 営業時間 不定休 |
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