No.453
平塚
淳子さん
マルチおけいこサロン L’atelier Cannelle(アトリエカネル)
オトナ女子に「自分のための時間」を諦めないでほしい
文・写真 宮木 慧美
「アイシングクッキー」に「あんフラワー®&あんクラフト®」、「お絵かきロール®」、「フラワーゼリー」などなど…。
長野市篠ノ井でマルチおけいこサロン L’atelier Cannelle(アトリエカネル)を主宰する平塚淳子さんは、スイーツからクラフトまで、さまざまな分野のレッスンを開催しています。「オトナ女子のパワースポットとなるようなサロンを目指しています」と語る平塚さんにお話を伺いました。
ゼロから生み出す“ものづくり”が好き。『アイシングクッキー』をはじめ20以上の資格を取得
長野県富士見町出身の平塚さん。中学・高校を長野市で過ごし、県外の大学へ進学。職場で出会った夫との結婚を機に長野市へUターンしました。
「長野市に戻ってきたのは2014年。仕事を辞めたタイミングで『何をやろうかな』と色々調べていたんです。アイシングクッキーにはもともと興味があって、かわいいな、素敵だなと思っていたのですが、当時は“買うもの”というイメージで。まさか資格が取れるなんて思ってもいなくて(笑)。ちょうど同じ頃に松本市でアイシングクッキーの資格取得ができる教室がオープンすると知り、『ゼロからだけど勉強してみようかな』と通い始めました」
アイシングクッキーとは、クッキーの表面を砂糖と卵白でコーティングしたもの。かわいらしい見た目のものが人気です。
はじめは純粋に「つくれるようになりたい」という気持ちでスタートしたという平塚さん。意外だったのは、周りの友人たちの反応でした。
「資格取得を報告した友人から『教えて教えて!』『つくって!』と想像以上の反響がありました。そんな声に背中を押されるように、2015年にL’atelier Cannelle(アトリエカネル)をオープンしたんです。理想的なスタートの仕方でしたね」
平塚さんはアトリエのオープン後も、数えきれないほどの資格を取得していきます。
あんこのクリームを花びらのように絞って飾り付ける「あんフラワー®&あんクラフト®」や立体的なケーキがつくれる「パーティーデコレーションケーキ」、オリジナルのクッキー型を製作できる「3Dプリンタ」や、クレイ(粘土)を好きな色に着色して、インテリアやアクセサリーをつくる「クレイクラフト」など、今では20以上の資格を保有しているそう。アトリエには、初心者から資格取得を目指す方まで、幅広い方が通っています。
「私、学ぶことが好きなんです。知らないことを知って、新しくできることが増えるとうれしくなりますね。
フード系・クラフト系の資格を多く取得してきましたが、全てに共通しているのは“つくる”ということ。ゼロから生み出していくことが何よりも楽しくて、気づいたらたくさんの資格を取得していました(笑)。ここに来ればいろんなことが学べる、新しい世界を知れる、と生徒さんには喜んでいただいています」
▲アイシングクッキーを持つ平塚さん。サロンの中には、平塚さんが手がけたフード系・クラフト系の作品が数多く並んでいる
L’atelier Cannelle(アトリエカネル)をパワースポットに
アトリエの名前になっている「Cannelle(カネル)」とはフランス語で「シナモン」の意味。シナモンの甘くやさしい香りのように、生徒さんに癒しの時間を過ごしてほしいという願いを込めてこの名前をつけたそう。
「生徒さんの9割は女性で、子育て中のママさんやシニアの方、転勤族の奥様なども多くいらっしゃいます。このサロンが、そんな女性たちのパワースポットになれたらいいな、と思ってL’atelier Cannelle(アトリエカネル)という名前をつけました。
女性はさまざまなライフイベントで暮らし方や生き方がガラリと変わりますよね。サロンに来て“ものづくり”をする理由も、ある人にとっては“趣味”、ある人にとっては“友だちづくり”、ある人にとっては“資格を取っていずれ開業したい”とさまざまだと思います。そのどれもが素晴らしいですし、応援したい気持ちでいます。『また明日から頑張ろう』と思ってもらえるように、ちょっと日常から離れて、リフレッシュできる時間を提供していきたいですね」
▲ピンセットなどを用いて繊細な作品をつくる『アイシングクッキー』。レッスンでは、シュガーペーストを使用した立体的なアイシングやお花飾りなど専門的な技術を学ぶことができる
さらに“マルチおけいこサロン”の名前の通り、多ジャンルの“ものづくり”が学べるのが、L’atelier Cannelle(アトリエカネル)の魅力です。女性のお友だち同士で、ご夫婦で、お子さんと一緒に、赤ちゃんと一緒に…とさまざまな方がレッスンに来られるそうですが、とある講座に参加した男性の“受講理由”が印象的だったと言います。
「その日は3Dプリンタを使って、“クッキー型”をつくる講座を開きました。機械を扱うためか、男性の参加者が多い講座でしたね。その中に、富山からいらした男性の生徒さんがいたんです。お話を伺うと『姉がクッキーのお店を開くからそれに合わせてクッキー型をつくれるようになりたい』と受講理由を教えてくださったんです。その日もお姉さまと二人でいらしていて。サロンでの講座をきっかけに、生徒さんの未来の可能性が広がっていくような気がして、とてもうれしかったのを覚えています」
県内のみならず、全国から問い合わせがあるというL’atelier Cannelle(アトリエカネル)。特にアイシングクッキーのオーダーは1年を通して全国から寄せられているそう。
「レッスン以外のお問い合わせで多いのがアイシングクッキーのオーダーです。結婚祝いや建築祝いとして、ご注文いただくことが多いですね。私自身も、誰かにプレゼントを贈る時はスイーツやクラフトを手づくりすることが増えました。その人のことを思って、ひとつだけのオリジナルを贈れるのが魅力ではないでしょうか」
▲L’atelier Cannelle(アトリエカネル)のInstagramはまるで平塚さんの作品集。フード系・クラフト系のさまざまな作品を見ることができる
さらに平塚さんの活躍の場は、サロンのある長野市にとどまりません。東信・北信を中心に、県内の複数のエリアでもレッスンを受け持っているのだとか。
「依頼を受けて出張レッスン・ワークショップを開く機会も増えました。中野市や飯山市では、生涯学習プログラムの一環としてアイシングクッキー講座を受け持っています。毎年多くの方に受講いただく、人気講座になっていますよ。
私がサロンをはじめた当初は、県内在住の講師の方は少なく、サロンや教室の数も限られていました。しかし近年は興味を持ってくださる方が増えて、資格を取得してサロンを開業する方もいらっしゃいますね。L’atelier Cannelle(アトリエカネル)出身の講師の方も各地で活躍されているんですよ」
▲平塚さんが手がけた作品たち。アート作品のような美しさと繊細さを感じる作品ばかりで「かわいすぎて食べられない」と言われることもあるそう(写真提供:L’atelier Cannelle(アトリエカネル))
長野県のママには、もっと自分の時間を持ってほしい
平塚さんは、サロン運営を通して「地域のためになる活動もできたら」と考えているそう。そのひとつが、資格を取得した生徒さんのサポートです。
「サロンで資格を取ってくれた生徒さんの中には、小さなお子さんがいるママさんも多いんです。『子どもがいてフルタイムの仕事ができない』という悩みや、『資格を活かして、自分のペースで仕事にしていきたい』という展望を聞くうちに、『資格を取得したらおしまい』という関係にはなりたくないなと思うようになりました。
L’atelier Cannelle(アトリエカネル)のオープンから5年で培ってきたノウハウや、私が得意としてる広報ツール・SNSの使い方、パンフレットの制作の仕方など『私がお伝えできることはすべてお伝えしたい』と思っています。ママさん講師は特に、サロン運営にかけられるお金も限られていると思うんです。資格取得だけでも大きな費用がかかりますから、無料ツールや自作できるツールを活用して、効率的に広報ができる方法をいっしょに考えています」
システムエンジニアを目指していたという“リケジョ”のスキルを活かし、生徒がそれぞれの拠点で“ゼロかつくり上げていく活動”のサポートにも力を入れている平塚さん。その原動力はどこから来るのでしょうか。
「生徒さんに『諦めてほしくない』という思いがあるんです。『子どもがいるから仕事はできない』とか『家族を優先するために私が我慢すればいい』とか、そうやって自分の可能性や楽しいことを諦めないでほしいですね。
長野県の県民性なのか、『自分の習い事より子どもの習い事にお金をかけたい』『ママとして家族を支えなきゃ』と考えている女性が多いように感じています。家族を第一に考えるってとても素敵なことですが、それだけだと息が詰まってしまうこともありますよね。仕事にしても趣味にしても、自分のための時間を持つことにもっと積極的になってもいいんじゃないかな。
地域の中に、楽しく働くママさんや趣味を満喫しているママさんが増えれば、“ものづくり”が楽しめる素敵な拠点もさまざまな場所に増えていくはずです。そんな相乗効果が生み出せたらいいですね」
▲アトリエにあるアイシングクッキー用の道具。「先月からカリグラフィー文字の勉強をはじめました。“ものづくり”への好奇心はいつまでもなくなりません」。今も積極的に新しい資格・技術取得に挑戦し続けている
地域のために、仲間とともにできることを
さらに、「地域のためになる活動」としてイベント活動も積極的に行なっています。2019年12月には台風19号のチャリティマルシェを開催しました。
▲クリスマスチャリティマルシェのチラシ。クッキーやマフィンなどのスイーツから、アクセサリー・布小物などのクラフトの販売、参加型のワークショップを行った(写真提供:L’atelier Cannelle(アトリエカネル))
「2019年の台風19号の時は、アトリエのある長野市篠ノ井にも避難勧告が出されました。生徒さんや友人の中には、被災してしまった人も。そんな状況の中で何ができるのかと考え、クリスマスに合わせてチャリティマルシェを企画したんです。
アイシングクッキーの講師をしている元生徒さんたちといっしょに『オリジナルカレンダー』を制作したり、クラフト作家の仲間たちに出店を依頼したり。カレンダーの売り上げとチャリティマルシェの収益、およそ10万円は長野県に寄付させていただきました。
うれしかったのはこれまでサロンを通じて知り合えたみなさんとマルシェをやり切れたことですね。カレンダーは各月でテーマを決めて制作しましたが、私一人では絶対につくることのできないものが完成しました。とても好評で、何冊も購入してくださる方がいて、これまでやってきてよかったなと思いましたね」
▲大好評を博した「オリジナルカレンダー」。県内で活躍するアイシングクッキー講師が一丸となり制作。各月ごとに個性的な作品が並ぶ。平塚さんは5月を担当
長野ライフをエンジョイするきっかけの場所に
L’atelier Cannelle(アトリエカネル)を「オトナ女子のパワースポットにしたい」という平塚さん。長野市にあるサロンの役割として、こんなことをお話ししてくれました。
「私自身も長野市へのUターンなので、『知り合いがいなくて寂しい』『友だちができるかな』と不安な気持ちを抱えている移住者やママさんの気持ちがよくわかります。そんな方たちがふらりと立ち寄れるサロンになれたらうれしいですね。長野ライフをエンジョイするきっかけの場所として、生徒さんにはここで“パワーチャージ”をしてもらいたいです。
幅広いジャンルのレッスンを開講していますから、同じ興味を持つ方と出会えたり、新しい趣味を始めたり。いろんな方に来ていただいて、リフレッシュしてもらえたらと思います。長野のママさんは特に、頑張りすぎている人が多いような気がするので“自分のための時間”を確保して、ぜひ新しい自分の世界を広げてもらいたいです。L’atelier Cannelle(アトリエカネル)でみなさまのお越しをお待ちしています」
友人の家に遊びに行くようなアットホームさもL’atelier Cannelle(アトリエカネル)ならでは。平塚さんの穏やかな人柄と確かな技術に触れると“ものづくり”の楽しさに心が躍りだすかもしれません。自分のためのとっておきの時間を楽しむために、L’atelier Cannelle(アトリエカネル)に訪れてみてはいかがでしょうか。
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会える場所 | マルチおけいこサロン L'atelier Cannelle 長野県長野市篠ノ井 電話 080-5109-0779 |
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