No.270
竹内
和也さん
信州ジェラードwith店主
自分が生まれ育った真島地区で、
長野県の食の魅力を届けたい
文・写真 くぼたかおり
1998年に開催された長野冬季オリンピックで、フィギュアスケート、ショートトラックスピードスケートの会場として使われた「ホワイトリング」がある通りに、今年7月突然表れた1台のトレーラーハウス。1台、また1台と車で立ち寄っては中に入っていく人たち。さて、何のお店でしょう。
一環したテーマ。それは"地域振興"
トレーラーハウスへと続くウッドデッキを上ると、目の前には田んぼが広がります。収穫時期を迎えた稲の穂はたくさんの実を付け、重そうに風に揺れています。のどかで心地よい風景を眺めながら店に入ると、色とりどりのジェラートが陳列されています。「ジェラート」は”凍った”という意味を持つイタリア発祥のアイスクリームで、果肉や果汁、牛乳などを混ぜたものを凍らせて作ります。
店主の竹内和也さんは、東京農業大学地域環境学部造園科学科出身で、当時は公園の設計に興味を抱いていました。しかし勉強を進めるごとに身体を動かすことが好きだという事に気が付き、卒業後は旅行会社に就職をして、営業や添乗員として地域の魅力を伝えていくように。
「大学の研究室では地域振興をテーマにしていました。旅行会社に就職したのは、その一環なんです」
ところが昔から抱いていた「教師になる」夢を実現するべく、通信大学で勉強を再開。28歳で教員免許を取得し、中学・高校の教師として忙しい毎日を送っていました。
ホワイトリングへと向かう途中にあり、真島小学校の側に立つ
ジェラート屋に訪れることが、日常の一部になるように
やっとのことで教師になったものの、さまざまな経験を積み重ねるうちに、新たなステップを考えるようになります。大学時代に研究室で地域振興をテーマに研究をしていたことから、自分が好きな長野県を何かしらの形で盛り上げる仕事は無いだろうかと調べ始めました。
「長野県の農産物は、とても美味しいんです。いかに多くの人にその魅力を伝えるのかを考えた時に、老若男女に食べてもらえ、素材そのものの味を引き出して味わえるジェラートにたどり着いたんです。だから最初からジェラート屋になりたかったわけではなく、伝えるツールとしてジェラート屋に行き着いたんです」
教員を退職してからは、ジェラートの本場であるイタリアのフィレンツェで店舗研修に行き、機械の使い方をはじめさまざまな技術を習得して帰国。そこから開店に向けて準備を進めていきました。
店内にはイートインスペースがあり、2テーブル6席が用意されている
「当初は篠ノ井駅前エリアも考えていましたが、やはり地元である真島を元気にしたいという想いがありました。トレーラーハウスにしたのは移動が可能なこと、デザインがカントリー風で真島ののどかな風景とマッチしたこと、そして車で通り過ぎる時に「あれ、何だろ?」と気にかけてもらいたいという理由からです。住宅と同じように断熱材もしっかり入れているので、これから冬のシーズンも大丈夫なんです」
入口の料金表をチェックすると、シングル300円、ダブル350円、トリプル400円、ミニ220円(カップのみ)と、とても良心的な価格です。
「値段に関しては、とても悩みました。でも消費者の立場になった時に、ジェラートが非日常になってしまってはいけないと思ったんです。近所の人たちが『ちょっと冷たいもん食べに行こうか?』と気軽に来てもらえる値段設定にしました」
また他の店ではあまり見かけない「ミニサイズ」を用意した理由には、少しだけ食べたい時があった竹内さん自身の経験から作られました。
撮影したのは、高山村前田牧場の「こだわり牛乳」と飯綱で栽培されている「夏いちごのシャーベット」のジェラート
大学、会社員、教師。それぞれの経験が糧に
開店前には真島地区にちらしをポスティングをしました。
「まずは地元の人たちが、いつでも気軽に訪れる店でありたい。初めてわずかですが、リピーターが増えてきたのを実感しています。少しずつ口コミで良さが伝わっていけばいいなと思います」
取材時には飯綱の夏いちご、須坂のナガノパープル、高山村の牛乳、天龍村の紅茶などのジェラートが用意されていました。どのように農産物を仕入れているのでしょうか。
「食材の仕入れは、長野県中を周っています。直接生産者の方にアプローチをして、訪ねていきます。生産者から直接こだわりや美味しさを伺うことで、農産物の良さを深く理解することができるんです。そして、自分で食べて納得した食材しか使いません」
実際にwithのジェラードは、一番美味しい瞬間を閉じ込めているような味わいです。これからのシーズンはリンゴやブドウ、栗、クルミをはじめ、チーズを使ったジェラートも研究していくそうです。気軽に味わえるジェラートから、長野県の”美味しい!”を味わってみませんか?
週末になると、ひっきりなしにお客様が訪れることも。スタッフからお客様に、使用している農産物の味わいなど伝える場面も見られ、ジェラートを通してあたたかな交流が育まれているようだ
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会える場所 | 信州ジェラードwith 長野市真島町真島1447-1 電話 026-285-6722 ホームページ https://www.facebook.com/sinsyuu.with |
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