No.271
飯島
悠太さん
飯島豆腐店店主/地域おこし協力隊大岡地区担当
人気の味をもう一度
豆腐を通じて地域を元気に
文・写真 安斎高志
人気の手作り豆腐を復活させる
かつて地域で人気を集めていた豆腐の味をもう一度―。
地域おこし協力隊大岡地区担当の飯島悠太さんはことし4月、「飯島豆腐店」の屋号を掲げて手作り豆腐の販売を始めました。
旧・大岡村芦ノ尻地区で地元の人に愛されながら、店主の死去などで数年前に廃業した旭日屋豆腐店。飯島さんは昨年4月、大岡地区に赴任して以降、同店のおかみさんに豆腐作りを学んできました。
原材料の大豆も同地区で自ら栽培したもの。そして、設備のほとんどを地域の人たちから調達しました。かつては多くの農家が副業で豆腐作りを営んでいて、使っていない器具が次々と見つかったそうです。
「1年目からどれだけ地域に入れるかということを大事にしていて、おかげで地域のネットワークを通じて、技術だとか道具を得ることができました」
飯島さんの豆腐は地元の道の駅で販売されているほか、地元では訪問販売も行っていますが、おいしいと評判です。木曜に仕込み、金曜朝から製造して、その日のうちには売り切れてしまいます。
「豆腐は鮮度が命。すごい速さで味が落ちていくんです。そういう意味で訪問販売は理にかなっている。それと、地域の人にはなかなか買いに来られない人もいるし、顔を見に行く、会いに行くということも重要だと思っています」
畑では4種類の大豆を育てていて、そのうち3種類が豆腐に使われている。「素材がおいしさを決めている」と飯島さん
自らの意思で大岡で育つ
飯島さんは横浜市の出身。小学校4年生のときに、両親に勧められて旧・大岡村に山村留学します。
「何もかも楽しかったですね。自然の中で暮らすということも楽しかったし、小学校高学年から中学生まで共同生活も楽しかった。お祭りだとかイベントだとか、みんなでひとつのことをつくり上げていく過程もおもしろかったです」
結局、飯島さんは自らの意思で大岡での暮らしを選び、中学2年生まで山村留学を続けました。
大学、大学院は水産系の研究室を選びます。釣り上げられた魚にかかる負荷を調べていました。自分を育んだ山に対して水産系という選択は対照的に見えますが、そこにも大岡での体験が大きく関わってきていると話します。
「農家さんはものすごく生きるチカラを持っていて、単純にかっこいいな、すごいなと思ったんです。畑作業でのロープの結び方から、機械の使い方とか、男の子として、素直に心をくすぐられました。現場の男たちみたいなものをリスペクトみたいなものがあって、現場の近くで勉強ができる学科を選びました」
卒業後は釣りの情報誌で編集、執筆、営業などを担当しますが、子どもの頃育った、大好きな大岡地区で地域おこし協力隊の募集があることを知り、応募しました。
にがりを入れる量とタイミングが一番難しいという。気候条件や豆の質によって最適な作り方は変わってくる
地域の人と一緒に
地域おこし協力隊員として、地元で人間関係を築くことを最も大事にしている飯島さん。豆腐店と農業の傍ら、猟友会に入ったり、商工会のイベントを手伝ったりと、積極的に地域と関わりを持っています。
「農業をやっていると年配の方とは親しくなれるんですけど、若い人との接点はあまりなかったんです。幅広い人たちと一緒に何かできるよう、消防団にも入りました」
大岡地区の良さを知る一方、課題も見えてきました。
「大岡の良さを『自然がたくさんあって、人があたたかい』と言うのは簡単なんですけど、それは大岡だけではないんです。自然を使ったりしながら、ここの人たちと一緒にいろんな活動ができるところが魅力だと思うし、それを発信していきたいです」
豆腐を煮る回転釜をはじめほとんどの器具を、地元の人たちから借りたり譲り受けたりして調達した
10月2日の「豆腐の日」には自ら企画した特別講演とワークショップを開催します。自身のこれまでの挑戦を紹介するほか、ビジネスアイデアを募ります。
「豆腐で儲けを出していくのはなかなか難しいです。大量生産では今の味は保てないし、ストーリー性もなくなってしまう。豆腐作りから派生した活動をお金に結びつけていくことを考えなければならないし、そのために他の地区ともコラボレーションしていきたいと考えています」
課題を語りながらも、力強く未来を見据える飯島さん。個性ある中山間地の魅力を作り出し、発信していくという挑戦が続きます。
戸隠地区の地域おこし協力隊員がロゴ、Tシャツ、HPなどをデザインした。金曜の朝、道の駅に並ぶが、その日のうちに売り切れてしまう
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会える場所 | 飯島豆腐店 長野市大岡甲5275-1 電話 ホームページ http://i-tofu.com/ 販売場所:道の駅 長野市大岡特産センター 特別講演・ワークショップ |
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