No.264
牧野
真弓さん
地域おこし協力隊松代地区担当
歴史と風土に恵まれた町に
新しい風を吹き込む
文・写真 安斎高志
"生活水準が高い"暮らし
昨年から始まった長野市の地域おこし協力隊事業。今年度は6月から9人が加わり、市内各地で農林業などに取り組んでいます。松代地区担当の牧野真弓さんは現在、松代町豊栄地区の野菜生産組合で収穫や出荷などを手伝っています。朝5時半には仕事が始まる毎日ですが、充実していると目を輝かせます。
「今の暮らしは生活水準がすごく高いと私は思うんです。友達には『普通の人と基準が違うよ』と笑われてしまいましたけど(笑)。でも、空気もきれいだし、山があって、星も見えるし、町の人はやさしいし、野菜はいろんなところからもらえるし、もちろん自分でも作れるし。それってどこにでもあることじゃないですよね。だから、私の中では”いい暮らし”をしていると思うんです」
ナスをもぎ取り、「お土産に」と手渡す姿は、2か月前に赴任したとは思えないほど、畑の風景に馴染んでいました。
「カエルとトンボが一番好き。茨城にいたカエルだったら、声を聞けばすべて種類がわかる」
生き物が集まるから、田んぼが好き
牧野さんは愛知県の出身。愛知県の大学を経て、東京の大学院で環境問題を学びました。
「元々、興味はあったんですが、大学時代にカナダへ行ったとき、すごくきれいないいところなのに、人々の環境意識の低さにびっくりして、環境教育って大事だなと思ったんです」
大学院時代のフィールドワークで感じたのは、環境と農業の深い関係でした。
「その地区それぞれの農法だったり、昔からのやり方だったり、その場所にしかいない生き物がいたりして、すごく惹かれるものがありました」
卒業後、茨城県で環境を保全するNPOで働いていましたが、事業の持続可能性について疑問を抱いたことや、地域の中で地域の人と深く関わりながら一緒に課題を解決するような仕事をしていきたいという思いから、今回の地域おこし協力隊の募集に応募しました。
元々が大の自然好き。生き物がたくさん集まるから、田んぼにいるのが大好きだと笑顔を見せます。
「お土産に」と、取り立てのナスを差し出す。既に畑の風景に馴染んでいる
農業で生計を立てる、その先
本格的な農家生活は始まったばかりの牧野さんですが、既に確固たる将来のビジョンを持っています。お米、養蜂、養鶏の三本柱で生計を立てることが第一の目標。そしてさらにその先も見据えています。
「生き物を飼うというのは、命と向き合うということだと思っています。その三つの事業をやることで、そこが環境教育の場だったり、命を考える場だったり、何かを感じる場所になってくれたらいいなと思っています。でも、新しいことをやるには、色んなことを認めてもらわないと」
農家さんはもちろん、外国人観光客向けのインバウンドプロジェクトに参加するなど、幅広い人間関係を着々と築きつつあります。
「松代の人は自分たちが住んでいるところに誇りを持っているという感じがしますね。松代が好きで住んでいる人がいっぱいいるんです。それって地域の力になりますよね」
任期は3年。歴史や風土など、資源が豊富な松代町にどのような風を吹かせてくれるのか、期待が高まります。
毎日が新しいことの連続。撮影日は巨峰の出荷作業。徐々に手つきが慣れていく
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