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No.427

ダイナマイトマンダム

さん

ラジオパーソナリティ、歌謡曲DJ、「新夜食堂エニシング」オーナー

地元こそがおもしろい!興味のあること全部が仕事になる

文・写真 塚田 結子(文)、安斎 高志(写真)

毎週月曜から木曜の夕方に放送されているFM長野の「ラジモ!」で、小林新さんとともに水曜を担当するのがダイナマイトマンダムさんです。男性ふたりで夕方レギュラーを担当するのはFM長野開局以来はじめてのこと。
 
2019年7月で放送開始から丸3年となりますが、放課後の教室で盛り上がるサブカル男子の話に耳を傾けているような、ゆるくも熱い漢(おとこ)トークが楽しめる番組です。
 
「この、地元ネタや音楽にくわしくて、秘境とか場末の食堂とか“パラダイス”にやたら足を運んでいる、バイアスのかかった豊富な知識の持ち主は、いったい誰?」
 
そんな疑問を持つ人が多いのか、検索窓に「ダイナマイトマンダム」と打ち込みと、「誰」という予測変換が続いて表示されます。
 

「クリエイティブなことをするぞ!」

マンダムさんは、長野市出身、在住。ラジオパーソナリティであり、歌謡曲DJとしてクラブイベントなどで音楽を鳴らし、毎日新聞長野県版で地元ネタのコラムを執筆し、長野市北石堂町で「新夜食堂エニシング」を営んでいます。
 

 
▲エニシング店頭に佇む梅宮辰夫人形。お店は夜9時から朝6時まで営業している。名物の豚汁が絶品です
 
高校生の頃からネオンホールに通っていたマンダム少年は、放送班員として学校行事の司会をこなし、引っ張り出されて生徒会長に就任し、ステージに立ってマイクを持つこともしばしば。
 
高校卒業後は「クリエイティブなことをするぞ」と心に決め、明治大学二部商学部へ進学。1990年代当時、世代人口の多さから熾烈な受験戦争が繰り広げられ、浪人するのはあたりまえ。二部(夜間)へ進学する学生も多かったのです。
 
昼間はバイトでNHK放送関連のイベント会社へ。夜は神田駿河台のキャンパスへ。仲間とともに自主映画を撮りつつ、DJを始めたのもこの頃です。
 
「歌謡曲のドーナツ盤しか持っていない」のに、それでいいと知人から声をかけられて、新宿でDJデビューすることに。フライヤーに記載するDJネームをどうするか、電話口で答えを急かされ、しばし「う〜ん……」と逡巡のあと、口をついたのが
 
「マンダム」
 
こうして「DJマンダム」を名乗るようになったものの、「mixi」登録の際に、たくさんの同名利用者がいることがわかり、「ダイナマイトマンダム」に変更。以降、このmixiネームが通り名となりました。
 
ちなみにチャールズ・ブロンソンがCMキャラクターを務め、「う〜ん、マンダム」の流行語を生み出した男性用化粧品のポスターが、マンダムさんの店に貼ってあります。
 

映像を仕事にする楽しさと虚しさと

大学卒業後は、バラエティ番組制作会社へ就職。「タモリ倶楽部」の担当を希望したものの、街歩きが好きだからという理由で配属されたのはテレビ東京系の「出没!アド街ック天国」でした。休みを取ることはおろか、風呂に入ることも、寝ることすらままならない過酷な番組制作という仕事。
 
「若いから体力はあったし、めちゃくちゃ楽しかったから平気だった」と言う一方で、「無理を言ってカメラの前に立ってもらった人の映像があっさりボツになって、やるせないことも」
 
街でふれあい、放送を楽しみにしてくれる市井の人と、一方で、長年番組制作に携わるうちに、人間らしさを欠いていく業界の先輩たち。両者の温度差に、やがて疑問を抱くように。そして昼夜なく働き続け、その何倍にも感じられる3年間を過ごした後、退社します。
 

 
帰郷したマンダムさんは「映像をやっていたなら手伝って」と声をかけられ、長野美術専門学校に新設される映像部門の立ち上げに携わることになります。そして週1、2日勤務の非常勤講師となりました。
 
また、完成したばかりのシネコンで映写技師の職も得ます。が、1年後に契約更新ならず。理由は「君が言うことは正論だけど、不快」だから。会社へ改善すべきことを要望していたマンダムさんに対する上司からの言葉でした。
 

話すことが仕事に。同じくらい聞くことが好き

天職とも思えた映写の仕事を失い、その理不尽な解雇理由に憤るマンダムさんは、行きつけのバーのマスターから「じゃあ、うちで働けば」と声をかけられます。そうしてはじめた新たな仕事が、カウンターでお酒を作り、接客をすることでした。
 
DJ つながりでAC長野パルセイロのスタジアムDJを依頼されたこともありました。「ラジオでしゃべるディスクジョッキーと勘違いされた」とわかっていながら、「できる?」と問われ、「やってみます」と答えたマンダムさん。主要メンバー以外うろ覚えのまま、試合開始ギリギリで手渡されたディレクター手書きのミミズ文字を頼りに、スターティングメンバー紹介と実況に挑みました。
 
曜日によっては昼夜逆転のトリプルワークも辛くはなく、「自分のペースで決められる」から制作会社勤務時代に比べれば、自分らしく楽しく働けているとマンダムさんは言います。
 
「不思議なもので、どんなに辛い経験もつながるというか。無駄なことはありませんね」
 
2011年には、定年退職した父とともに「新夜食堂エニシング」を開店しました。みずから飲食業をはじめてわかったことは、「僕は、自分が話す以前に、人の話を聞くのが好き」だということ。
 

 
▲店へ至る階段壁面にびっしり貼られるのは、団塊ジュニア世代には懐かしいシールやポスター
 
ふり返れば子どもの頃、ひたすらくりかえされる祖父母の話に「唯一つき合えたのが僕だったんです」。家族全員が音をあげる無限ループに「そこは聞いたよ。それで?」と的確な合いの手を入れると、新たなエピソードが語られるのだとか。
 
「お客さんの話も、いくらでも聞いてられますよ。そこから教えてもらうことも多いんです」
 
「依頼を断ることはあるんですか?」とたずねると、
 
「なんで僕に(依頼が)来たのか、僕がやる意味はあるのかと考えつつ、やったことがなくても、おもしろそうだなと思ったら引き受けます」
 
なんでもできるわけじゃない。むしろ好きなことや興味のあることは偏っている。マンダムさんの興味を引くニッチな対象とは、建物と建物の間の路地みたいなもので、その隙間にこそ、人々が暮らすリアルな街の姿があるのでしょう。
 
「地元を探るのは楽しいですよ」
 
と言うマンダムさん。おじいちゃんやおばあちゃんの話に耳を傾ける姿はきっと、地元をおもしろがることにつながるのです。
 

▲「パラダイス」の呼び声高い愛知県犬山市の桃太郎神社にて(マンダムさんのFBより)。「探偵!ナイトスクープ」では珍妙な娯楽施設をパラダイスと呼ぶ
 

(2019/06/07掲載)

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