No.426
内山
敏行さん
SHOWER coastwind
大人が見てもかっこいい、着るともっと魅力的。独自のセレクトが光る子ども服ショップ
文・写真 石井 妙子
シルエットがかわいいサルエルパンツ、遊び心あるアシンメトリーのカットソー、飾っておきたくなるポップな柄のロンパース……。
大人もワクワクする、時には「自分も着てみたい!」とさえ感じる子ども服に出会える「SHOWER coastwind(シャワー コーストウインド)」。オープンから22年を数える子ども服専門のセレクトショップです。個性豊かな品揃えに、市内はもとより市外から訪れるファンも多数。店主の内山敏行さんは、長野市で20年以上子ども服に携わり続けるプロフェッショナルです。
パパも一緒に選びたくなる、かっこいい子ども服を
兵庫発の「MoL」に岡山発の「FABRIQ REPORT」、東京発「nunuforme」など、国内各地から選りすぐった個性豊かな子ども服ブランド。どれも内山さんがデザインと品質を見て触れて確かめ、選び抜いたものです。ファッション誌から抜け出してきたようなコーディネートは、大人が見ても「おしゃれ!」と驚いてしまうほど。
「大人も着たいと思うもの、パパやママと一緒に歩いても雰囲気が合うことを大切に選んでいます。キッズラインにもトレンドの影響はありますが、トレンドそのままではなく、デザイナーが独自に解釈して表現しているブランドが多いですね」
▲ベビー向けから150cmまで幅広いサイズを扱っています
▲店内のトルソーもおしゃれ!帽子やシューズまでトータルコーディネートできます
そしてもう一つ内山さんがこだわり続けているのが、「長野で、ここでしか出会えない品揃え」。
「有名ブランドは百貨店やショッピングモールでたくさん扱っているからこそ、うちでしか扱えないものを長野の人に届けたいと思っています」
内山さんが異業種から子ども服の世界に入り、「SHOWER coastwind」をオープンしたのは22年前のこと。スタートは、長野駅前のキッズ専門ビル内のセレクトショップでした。巨大なサンタクロースが壁を登っていたビル、といえば思い出す方も多いのではないでしょうか?
「当時のブランド子ども服といえば、カラフルで、かわいらしいブランドキャラクターをあしらった“いかにも子どもらしい服”が王道でした。当時うちの子も小さくて、奥さんと子ども服売り場に出かけることもあったんですが、私にはあの世界観が今ひとつ共感できなくて(笑)。そういうパパは、私以外にもいるんじゃないかなと思ったんですよね。それで『パパも一緒に選べる、かっこいい子ども服を扱いたい』と考えたんです」
当時はインターネットが発達していなかったため、雑誌を見たり県外のショップに足を運んだりしながら方向性を検討。そんな中、「一番ツボだった」のが、アメリカの有名デニムブランドやサーフブランドのキッズラインでした。当時あまり知られていなかったそれらにいち早く目をつけた内山さんは、自ら輸入して県内初の「子ども向けアメカジセレクトショップ」をスタート。その感性に共感した人たちから人気を集めました。
しかし時代の変化でブランド子ども服が売れにくくなり、入居していたキッズ専門ビルは閉店。2007年に現在の場所に移転し、路面店としてリニューアルオープンしました。同時に内山さんは、方向転換を迫られます。
「売っていたアメカジブランドを、大手メーカーが次々と扱い始めて。うちでしか買えない服を探さなきゃと、新しいブランド探しに駆け回りました」
▲現在はパパママ向けアイテムも取り扱っていて、親子でリンクコーデを楽しめます。子どもとお揃いになりすぎないよう、あえて色違いを入荷するのが内山さんのこだわり
無名でもいい、個性豊かな国内の作り手を探して
そんな時、ある展示会で出会ったのが広島の子ども服ブランド「BNT」。看板商品は、腹巻きとパンツを組み合わせたような立体裁断のベビー向けパンツです。履きやすくしめつけず、抱っこしても背中やお腹が出にくい快適なつくりは、長年子ども服を見てきた内山さんにとっても驚きでした。
▲「使いやすくて便利」とファンが多いBNTの定番ベビーパンツ。3,900円+税〜
「こんな服見たことない、なんだこれは!とびっくりしました。細部まで考えられたつくりで縫製も丁寧で、デザインもかわいい。それまでの子ども服は、シルエットは普通だけど柄やプリントで勝負するのが王道だったんです。でもこういったシルエットや素材感で魅せる服があるんだ、いいな、と思った。大人も『かっこいいな』って思うし、おしゃれなパパやママと一緒に歩いても似合いますよね」
そこから展示会をめぐり、無名でもデザインも品質も良い国内ブランドをコツコツ探し歩いた内山さん。現在ならインターネットで探せますが、当時は「とにかく足を使いました。あとは勘ですね(笑)」と振り返ります。
「無名のブランドが多かったので、最初は不安でした。でもうちのセレクトを気に入ってくれるお客様がいて、リピーターになってくださって。そうした方々に支えられて、ここまで続けることができました」
現在では全国的な人気ブランドとなったものも多く、内山さんの先見の明を感じます。
お客様は「ママとパパとお子さん、揃って買いに来てくれる方が多い」そう。美容業界やアパレル業界で働く人などおしゃれ感度が高いお客様も多く、ブランド名より内山さんのセレクトに共感してリピーターになる方が多いといいます。
「そうしたお客様の反応に自信をもらいましたし、一番の転機になりました。おしゃれなパパやママに楽しんでもらえる店にしていこう!と」
▲ファッション誌のように世界観が凝縮されたブランドカタログ
そして子ども服だからこそ、おしゃれさだけでなく動きやすさも重視するのが内山さんのこだわり。
「走ったり遊んだりしやすいかどうかは考えますね。『かわいいけど、この服でご飯は食べにくそう』と思うものは選ばない。おしゃれすぎて『長野でこれを着てどこ行くんだ?』という服もありますしね(笑)」
服で変身する楽しさを、子どもの頃から味わってほしい
20年経験を重ねた今も、課題はあります。子ども服はサイズがベビーから小学生まで幅広いためどうしてもロスが出てしまうこと、また最近はファストファッションの影響で服にお金をかけない人が増え、子ども服も安い商品が主流になりつつあるのも悩みの一つです。
「うちの服は、百貨店では中間ぐらいの価格帯です。以前なら普段着として提案していたような服も、最近は『もったいなくて保育園になんて着せていけない』とおっしゃる方もいますね。
そうした変化はしかたがないことだけど、例えばお出かけの時にかわいい服で出かけると嬉しいし、写真に残してもいい思い出になりますよね。おしゃれしたい時に頼ってもらえる、そういう店でありたいと思っています」
▲定番アイテム以外は、人気商品であっても各サイズ1点ずつの入荷。他の人とかぶらない「とっておき感」を大切にしています
もう一つ、アパレル業界全体の変化として感じているのが、ネットショッピングが増えて実店舗へ足を運ぶ人が減ったこと。「SHOWER coastwind」もオンラインショップを開設していますが、内山さんは「お店で試着する時間をぜひ楽しんでほしい」と話します。
「子どもたちがいろんな服を試着して変身する姿って、見ていてすごく楽しいんですよ。同じ服でも、コーディネート次第で新しい発見もある。ネットショップでは体験できない、そういう過程を楽しんでもらいたいんです。
私が服を選ぶうえで大切にしているのは『着てかわいい服』であること。子どもにだって個性があって、似合う似合わないがありますよね。大人の趣味を押しつけても、似合わない服は似合わない。服が主役なんじゃなくて、『●●ちゃん、似合うね!』という喜びを大切にしてくれたら」
▲ワイドなシルエットやドロップショルダー、立体裁断など、着て初めて魅力が分かる服も多いからこそ、試着がおすすめ
「“服育”じゃないですけど、子ども時代からいい服に触れていると、勉強では得られない感性が養われると思います。小さな頃からうちで服を買ってくれている子なんて、シンプルだけど形がおもしろい、言ってしまえば“子どもに媚びない服”に目を輝かせたりして、私の方が驚いちゃいますよ(笑)
そうやって自分の好きな服を知ったり、組み合わせを楽しんだりする経験を子どもの頃からしていれば、大人になっても自由にファッションを楽しめるんじゃないかな」
▲「スタイリストはパパとママ。私は助手としてお手伝いできたら」と内山さん。コーディネートの相談にもどんどん乗ってくれます
長野市内を見ても、個人経営のアパレルショップは年々減ってきています。そんな中で、「ファッションを楽しめるこの場所を、できる限り続けていきたい」と内山さん。おしゃれを楽しむ心を育む場所が、ここにあります。
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会える場所 | SHOWER coastwind 長野市北石堂町1427 こおきビル1F 電話 026-224-8066 ホームページ https://shower-cw.amebaownd.com 営業時間:10:30〜18:30 |
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