No.415
熊谷
麻里子さん
「プロデューサーズ・ウェディング」 ウェディングプランナー
「結婚式は楽しくなくっちゃ!」 憧れのウェディングをトータルにサポート
文・写真 島田 浩美
一昔前は決められた場所で挙げるのが定番だった結婚式。今はそのスタイルが多様化しています。そんなオリジナリティあふれる挙式に対応するのが、豊富な知識や経験をもつフリーランスのウェディングプランナーです。熊谷麻里子さんは、長野市においてその先駆けといえる存在。どんな形でそれぞれの結婚式に関わっているのでしょう。
結婚式の選択肢を広げるフリーランスのウェディングプランナー
人生の新しい門出を祝う結婚式。新郎新婦や招待客の心に残る素敵なひとときをつくりあげるために、熊谷さんはカップルの要望に応えながらイメージやアイデアを引き出し、よきアドバイザーとなって結婚式当日までの一連の流れをトータルにサポートしています。
「私を訪ねてくるのは、結婚式場以外で挙式をしたい方や、ふたりらしいオリジナルのウェディングをしたい方、何も決まっていないけれどまずは話を聞きにきたという方が多いですね。そういう場合はおふたりがやりたいこと、もしくはやりたくないことを聞き、それが叶う場所を選んでいきます。例えば、とある料理人の新郎新婦様は自分たちで作った料理を提供し、飲食関係の友人にドリンク提供を任せたいという希望をもっていたことから、実現できる場所を選んでいった結果、キャンプ場で結婚式をしました。ほかにも、今は出身中学校で挙式をしたいというおふたりのために交渉を重ねています」
このほか、これまでには神社や宿坊といった和風の場所から、カフェのようなカジュアルな会場、新郎新婦の職場の老人福祉施設など、さまざまな場所での挙式を手がけたそう。そんな熊谷さんがプランナーとして大切にしているのは、新郎新婦の話をたくさん聞くことだと言います。
「『プロの目から見た私たちに合う結婚式は?』と聞かれることもありますが、好みは人それぞれで価値観も違うので、とにかくおふたりのことをよく知るためにコミュニケーションをとります。最近は新郎新婦様の情報量も多く、選択肢も広がっていますが、そのなかからどうやっておふたりに合った結婚式を導けるかが大事。一緒にドレスを見に行ったり、お花屋さんや美容室の打ち合わせについていき、そこでの会話や、お母さんも来ていたら母娘の会話などを聞き、おふたりが喜ぶどんな小さなきっかけも逃さないようにしています。もともと人と話すことが好きなのもあるのかもしれませんね」
▲宿坊での結婚式。かつて結婚式をプロデュースした新婦の友人とも再会したことから、新郎新婦と4人で撮影
▲親になった元新郎新婦が「赤ちゃんを抱っこしてほしい」と会いに来てくれることもあるのだとか
結婚・出産を経て夢を実現。人の縁に恵まれ、自然な形でフリーランスに
ウェディングプランナー歴は22年となる熊谷さん。かつてはレストランウェディングやゲストハウスウェディングを手がける式場で働き、2010年にフリーランスになる直前の3年間は、一軒家で1日1組貸切のウェディングを手がける長野市内の「ラ・マーレ プライベートガーデン」で支配人も務めました。
そんな熊谷さんがウェディングプランナーとなったきっかけは、実はご自身の結婚式だったそう。
「プランナーさんとの出会いもよかったし、何より準備が楽しかったんです。それに、自分が用意したものへの両親の反応やみんなが喜んでいる様子を見たら、結婚式が終わってしまう寂しさを覚えました。同時に『こういう仕事もあるんだ』と感じたんです」
そこで、通信教育で勉強し、妊娠・出産を経て、最初はパートとして複数の結婚式場で働き始めました。当初はチャペルの掃除をしているだけでも幸せを噛み締めていたそうですが、次第にプランナーの仕事を任せられるようになり、とうとう支配人に抜擢されたのです。
「責任も伴う重大な仕事ですし、マネジメント業が中心になるとプランナーとして現場に出られなくなると感じて、最初は断ったんです。でも、もし自分が責任ある立場になれば、若い女性プランナーたちに結婚後の働き方も示せると思いましたし、女性の立場で働きやすい環境を整えたり、風通しのよい雰囲気がつくれるかも、と考え直し、プランナーの仕事との両立を条件に引き受けました」
そして、スタッフ同士で「ラ・マーレファミリー」とよべるほどの家族のような信頼関係を築き、充実した日々を過ごしていましたが、長男が野球のシニアリーグに進み、遠征などに親が付き添う必要があったことから、断腸の思いで退職。奇しくも首都圏ではフリーウェディングプランナーという働き方が広がりつつあった頃で、熊谷さんは付き合いのあったカメラマンや衣装屋経由でカップルの結婚式の相談に乗るうちに、自然な形でフリーランスとなりました。
▲「ラ・マーレファミリー」のスタッフたちも熊谷さんの事情を理解してくれ、友人や家族、元新郎新婦たちの応援もフリーランスへの後押しになったそう
「その頃、ちょうど挙式をしない“ナシ婚”という言葉が出てきたのですが、私は『規模は小さくても結婚式はしたほうがいい』とカップルに伝えたいとずっと思っていたんです。すると、ご縁があって知人とシェアをする形で事務所も構えることができました」
こうしてフリーランスになるのとほぼ同時に、長野市内に拠点となる「プロデューサーズ・ウェディング」をオープンしました。
▲長野市高田にある「プロデューサーズ・ウェディング」
多くの人との出会いが喜びに。まだまだ広がる夢と希望
ところで、特定の式場や企業に所属するプランナーと違い、独立した立場で結婚式をプロデュースするフリーランスの仕事にはどのような魅力があるのでしょう。熊谷さんは、より新郎新婦の気持ちに寄り添え、トータルでサポートできることだと言います。
「式場ではどうしても営業面にとらわれがちですし、業務時間や提案内容も、ある程度限られてしまいます。でも、小さい不安が大きくなることもあるので、フリーランスの今はどんな些細なことでも疑問や不安があったら連絡してもらっています。準備を楽しむことで式当日も楽しく過ごせますし、私は新郎新婦様の満足度を一緒にあげていく専門家として、精神的にもサポートできる存在でありたいと思っています」
▲介添人として挙式もサポート
同時に、自分も一緒に楽しみながら準備をしたいとも話す熊谷さん。やりたいスタイルで信頼のおける仲間とチームを組むことはやりがいでもあり、さまざまな仕事に就く新郎新婦の話を聞くのも楽しく、そのつながりからさらに仕事仲間が広がったり、元新郎新婦と一緒に仕事をする機会があるのも、この職業ならではの面白さだと言います。
「そうしたなかで、相談にきたおふたりから『式場は決まっていなくても熊谷さんにお願いすることは決まっている』と言っていただけたり、結婚式終了後に『式を挙げてよかった』と新郎新婦様と3人で喜び合えるのがありがたく、いろいろな人との出会いがうれしいですね」
▲結婚式後に新郎新婦から「一緒に写真を撮って」と言われることも少なくないそう
最近では、かつて挙式を手伝った新郎新婦の兄弟の結婚式を担当する機会も増え、長年続けてきた喜びも感じています。
「ご両親と再会して『熊谷さんは我が家のプランナーだから』と言われると、続けてきてよかったと新たな喜びも感じます。それに、自分の子どもたちの野球仲間のプロデュースを控えていることは、老後的な楽しみですね(笑)」
▲挙式の場所は違えども、同じウェディングチームで姉妹の結婚式を担当したことも。ひとつの家族の記念日を同じメンバーで祝福でき、支えられた幸せのひととき
また、フリーランスになってからは「黒木学園専門学校カレッジオブキャリア」のブライダルコースの講師も務める熊谷さん。現役のウェディングプランナーとして生の情報を生徒たちに伝えていますが、各式場へと巣立っていった卒業生たちとのつながりもうれしいのだとか。
「この仕事は自分のライフスタイルに合わせて働け、お客様と平等に向き合える立場なので子どもがいても応援してもらえたり、新婦様とは同じ女性として話ができ、母として働く自分の経験も生かせます。結婚して子どもができるとやめてしまう人が多いのが現状ですが、私はその道を逆走してきたので、若い人たちに伝えたいですね」
そんな熊谷さんの最近の夢は、実はハワイでオーダーメイドウェディングをやることだとか。旅行会社のパックプランではなく、おいしいレストランや美しい砂浜での式を手がけてみたいと言います。
「今がつまらなくなったわけではなく、見たことのない風景を見たい思いです。これからさらにいろいろな知識を身に付けて勉強したいと思うなかで、海外での挙式まで頼りにされるような存在になりたいです」
一方で、長野での結婚式にも思いを馳せています。
「長野は自然資源が豊富で、また訪れたいと思える素敵な場所がいっぱいあるので、その土地の人と協力して結婚式をすることで、長野全体が幸せになればいいと思っています。週末にお嫁さんが歩いているまちがたくさんあるのも理想。子どもたちがお嫁さんを見る機会が増えれば、結婚式がより楽しく広がっていくのかな。そのためにも、一生現役でいたいですね」
一つひとつの言葉から、熊谷さんの仕事愛と頼もしさを感じたインタビュー。実は未婚の私ですが、いつか来る(はずの)挙式の際には、ぜひ熊谷さんにお願いしたいと強く心に誓ったのでした。
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会える場所 | プロデューサーズ・ウェディング 長野市大字高田1337 長野ブルービル1階 電話 026-217-2777 ホームページ http://www.pw-wedding.com/ |
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