No.393
山越
久美子さん
NPO法人ITサポート銀のかささぎ理事長
すべての子どもが学べる機会を持てるように支援の輪を広げる
文・写真 松井明子
児童養護施設などでiPadを使った学習支援のボランティアを行っているNPO法人「ITサポート銀のかささぎ」の理事長を務める山越久美子さん。ホームページ作成やIT講師など、IT関連の仕事をしながらNPO法人の運営をしています。
学習支援をはじめたきっかけ
2012年に東京児童相談センター 一時保護所で学習支援活動を開始。翌年に「ITサポート銀のかささぎ」を設立しました。
現在、東京では主に学生たちが、長野では20代~50代の約10人の社会人が学習支援ボランティアとして活動しています。
最初は、子ども虐待防止活動をしていた方から進められたのが、活動をはじめるきっかけでした。
「ITの相談を受けたり、教育に関わる仕事をずっとしてきて、わかることの喜びを感じてもらえる仕事にやりがいを感じていました。そんな中、一時保護所で学習面で厳しい状況にある子どもたちに出会い、iPadを使った学習支援ができないかと考えました」
隔離されているため学校に行くことができず、簡単な紙のプリントしかない学習環境で、指導できる職員もいない環境を目の当たりにした山越さん。東京大学のボランティアに関心のある学生たちが賛同し、活動がはじまりました。
「銀のかささぎ」の名前は、七夕伝説で彦星と織姫星をつなぐ「かささぎ」のように、銀のタブレットで子どもたちを支援の輪でつなぎたいという思いがこめられています。
子どもたちに学ぶ喜びを知ってほしい
その後、支援活動は縁あって地元の長野市でも開始。現在、松代にある児童養護施設「松代福祉寮」で月2回の学習支援に入っています。年相応の学習が身についていない子が多く、理解にも時間がかかります。
タブレットだと、その場ですぐに採点結果が分かり、花まるがもらえます。学習履歴がデータで残り、それまでの学習の積み重ねが一目でわかるので、モチベーションもアップ。ゲーム性もあり、子どもがやる気になる仕掛けがたくさんあります。
銀のかささぎのメンバーと共に、子どもたちを見守る
「自分は勉強ができないと思っている子でも、教えるとちゃんと理解に結びつきます。『できた!』と喜ぶ姿を見るのがうれしいです。ボランティアが来て、わからないところを教えてくれたり、はげましたりほめたりしてくれるから、やる気になる。『自分でやってね』とタブレットをただ渡されても続けられないでしょう。
それに、『将来、こういう大人になりたい』と思えるロールモデルがまわりにいなかった子たちなので、ボランティアの学生や大人と接することは、勉強以上の価値があることなんです」
一方で、ボランティアの学生たちにも、困難を抱えた家庭の子どもたちに接することで、世の中には様々な家庭があることを知って社会に出ていってほしいという願いもあります。
これからの活動
今年は松代まち歩きセンターで、一般の小学生向けのiPad講習会や、Pepper(ペッパー)を使ってプログラミング体験を開催。施設の子どもだけでなく、一般の家庭の子どもにもICT教育を広げています。
ソフトバンクグループの社会貢献プログラムでPepper(ペッパー)が貸し出されている
「施設の子どもたちだけでなく、ひとり親家庭など行政の支援が届きにくい家庭の子どもにも学習支援の輪を広げたい。誰もが学べる環境をつくりたい気持ちで活動しています」
より多くの子どもたちのために支援を広げようと、iPadを使った学習支援のしくみを全県に発信するためのポータルサイトを近々立ち上げる予定です。
来年以降には、学習支援コーディネーターを育成して、子どもたちが実際に各地でICT教育を受けられるようにしていこうと準備を進めています。
*本記事はナガラボ地元編集塾卒業生が作成しました。
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