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No.328

早川

和明さん

ガラス作家・Sow GLASS

ガラスから広がる無限の宇宙から
人々のダイナミズムを感じたい


文・写真 島田浩美

第一志望の企業の内定を捨ててガラスアートの世界へ

青い地球に星雲のような渦巻き、無数にまたたく星々や神秘的な光…。
まるで無限に広がる宇宙空間を眺めているような錯覚に陥るほど不思議なガラス作品展「早川和明ガラス展 宇宙散歩2016」が5月上旬、長野市南千歳にある「珈琲倶楽部 寛(ひろ)」で開催されました。手がけた作家・早川和明さんは「ボロシリケイトガラス」という透明度の高い特殊な硬質ガラスを使って、これらの作品を生み出しています。

早川さんがこのガラスと出合ったのは、東京の大学に通っていた2004年。ふと入った店でペンダントやオブジェの展示に魅了され、アルバイトで貯めたお金ですぐに購入しました。

「ガラスの中に表現されている世界観がおもしろかったんですよね。それで、その後、就職活動が始まって第一希望の企業から内定ももらったんですが、同時に、このガラスを使って表現をしたいという思いがすごく湧いてきて、全国のボロシリケイトガラスのアーティストに会いに行ったんです。そして、生き様や考え方を聞くことで、やはりこの世界はすごいなと感動して、就職せずにこのガラスで何かをやろうと決めました」

とはいえ、それまでに何かを制作した経験が全くなかった早川さん。しかも当時は、まだまだボロシリケイトガラスを手がけている作家は全国でも数えるほどで、あえてイバラの道を歩む決意をした息子に対し、両親は猛反対したのだそう。

「特に親父からは『わけのわからない方面に行くなんて』と言われました。でも、僕の人生だし、この道で得られるものが必ずあると思ったから、両親には確固たる意志を伝えました。すると、親父が『そこまで言うのだったら応援する』と言ってくれて、実家の敷地を工房として貸してくれることになったんです。でも、翌日には『で、いつ就職するんだ?』と言ってきたんですけどね(笑)。だから、余計に火が付きました」

こうして卒業までの1年間は、卒論を書きながらもアルバイトをして資金を貯蓄。卒業後は長野市篠ノ井にある実家に帰り、必要な道具を揃えていきました。

2016年5月1日~5日まで「珈琲倶楽部 寛」で開催されていた「早川和明ガラス展 宇宙散歩2016」。2007年の初開催以来、同店のゴールデンウィーク恒例展示となっていて、毎年訪れるファンも多い

光の角度によっても輝きや雰囲気が変化する、宇宙を閉じ込めたような早川さんの作品。直径1cmほどのペンダントトップから揃い、1万円台から手に入る(写真は早川さん提供)

大好きな星空をガラスで表現

しかし、創作を始めるにあたっては、まずはどこかで修業をしなければいけません。ただでさえ数が少ないボロシリケイトガラスの作家は弟子を受け入れている人もおらず、なんとかたどり着いたのが、白馬在住のガラス作家・石岡大和さんでした。
石岡さんもまた、弟子を受け入れてはいない立場。しかし、技術が優れて人間的にも魅力的な石岡さんにぜひ教えてもらいたいと思った早川さんは、工房に通い続けた結果、教えてもらえることになったのです。ただし、その内容は初歩的なことのみ。いわゆる“必殺ワザ”は教えてもらえなかったのだとか。それでも早川さんは「なぜか、これで成功できるという自信があった(笑)」そうで、3週間でひと通り習ったら、あとは独学で学ぼうと、2006年8月に自宅工房を立ち上げました。
そんな早川さんが創作のテーマにしたのが「宇宙」です。

「昔から星がすごく好きで、高校生の時も夜な夜な家を抜け出して星がきれいな場所に友だちと集合して、いろいろなことを語り合っていました。そこで、ガラスの中に無限に広がる星空や人の思いを表現したいと思って、早い段階で『宇宙』をテーマにしようと決めていました」

こうして創作活動を始め、なんと秋には母親の伝手で「珈琲倶楽部 寛」のギャラリーを紹介されます。

2007年に初開催した「早川和明 ガラス展 宇宙散歩2007」のDM。この展示では作品に直接ライトを当てず、来場者に懐中電灯を渡して、真っ暗な中、自分で作品にライトを当てることで宇宙を散歩しているイメージを演出した

1つの作品を完成させるまでは約1時間半~3時間。ボロシリケイトガラスをバーナーで溶かし、回転させて形を整えながら金属や色のついたガラス棒で細工をして形を閉じ込めていく(写真は早川さん提供)

「当時は個展の『こ』の字も知らなかったんですが、マスターやママさんが曇りなき眼で作品を評価して気に入ってくれて、その半年後に展示・販売をしました。お客さんの反応はとてもよくて『宇宙に行けるみたい』『本当に宇宙散歩をした感じ』と言ってもらえてうれしかったですね。テレビ番組で特集も組まれて、人のつながりや他のギャラリーへの広がりもでき、両親からもやっと心から認めてもらえるようになりました。そこから、個展『宇宙散歩シリーズ』は続いています。だから、この場所は僕にとっての原点。すごく大切にしています」

大きな球体作品の制作のために、日本では誰も持っていない特大アメリカ製バーナーも取り寄せたという

ドイツで新たな表現力を磨きながら、長野での活動も展開

そんな早川さん、実は今、ドイツを拠点に創作活動をしています。きっかけは2009年、ガラス技術が進んだアメリカ・オレゴン州のポートランドでの1カ月間の滞在にあります。現地のアーティストと触れ合う中で、ヒッピー文化から生まれた同地のアートに対して、自分が表現したいものはもっと別の、人間の可能性や生命の根源的なものだと気付いたのだと言います。そして、日本を大事にしながらもヨーロッパのアートシーンを見てみたいと思ったタイミングで、現在の妻となるドイツ人のElla(エラ)さんと東京で出会い、2014年、彼女との結婚を決めてドイツに移住しました。

「ドイツに住まいを置いて、いろいろな経験をしながら制作にチャレンジしたいと思ったんです。実際、ヨーロッパではガラスの表現方法も違いますし、さまざまな絵画も観に出かけましたが、すごく“やられてしまった感”がありました。特にグスタフ・クリムトの絵の衝撃は言葉では言い表せません。それに、ドイツでは道具をイチから揃える苦労はあったものの、同じような技法を用いて制作をしている人は全くいなかったのもよかったですね」

現在はそうした経験を踏まえて、さまざまな素材を使いながら、電気炉の中でガラスを熱したり、コールドワーク(冷めた状態で成形する加工技法)を取り入れたり、削る、貼り付ける、クラッシュさせて欠片を使うなどの技法もミックスして、多彩な表現方法にも取り組んでいます。

「ドイツでは時間の流れも日本と違うし、ガラス制作のバックグラウンドも違うし、最初は言語も使えないし、深刻な社会問題や外国人に対する法律の壁もあります。その分、自分ができることは何かを考えるようになりましたし、自分の気持ちをストレートに表現する文化の人たちに対して、どうしたら伝わるかを考えるようにもなりました」

「創作はとにかく楽しくて、迷いもなくワクワクして駆け抜けてきた」と話す早川さん。本当に納得がいくものができた時は手が震えて落としてしまったり、あまりのきれいさに見とれてしまい温度変化で割ってしまうこともあるのだとか。それでも、好きでやっていることに苦はないと言う

さまざまな職業においてマイスター資格制度が存在するドイツ。ガラスを吹く場合はマイスターライセンスを取得しなければならないため、早川さんはアーティストとして活動している。そのため器などの日用品は作れないが、その分、さまざまな表現方法を考えるようになった(写真はドイツの最寄り駅、早川さん提供)

また、2009年には師匠だった石岡さんの死を経験し、生死観についても深く考えるようになったそうです。そして今、Ellaさんは妊娠中で、もうすぐお子さんが誕生します。新たな命を迎えることで、早川さんにはきっとさらなる相乗効果が生まれることでしょう。

「宇宙や人の心、生命観というメインテーマは、これからも変わりません。その中で、ドイツで表現力を磨きつつ、大好きな長野でもいろいろな方に作品を見ていただける機会を作っていきたいですね。これまでには、僕の作品を通してワクワクしてもらえたり『生きる希望や勇気が湧いてきた』と言っていただけたこともありました。こんな風に、その人のダイナミズムが見えた時は最高の気分になります。僕自身もそういう思いを持ちながら、これからも創作を続けていきたいです」

現在は妻のEllaさんとドイツのドルトムント近くに位置するハムという街に在住する早川さん。6月3日~5日にはドイツのアートフェア「EUNIQUE」に出展した。今秋には「安曇野アートヒルズミュージアム」で個展の開催を予定している(写真は京都で撮影、早川さん提供)

(2016/06/20掲載)

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