No.02 SPECIAL TOPICS
金城
ジェオルジェさん
ブラジルエクスプレス
地球の裏側の食を届ける
文・写真 新津勇樹
母国の仲間のために
ブラジルエクスプレスの店主、金城ジェオルジェ保次さんは、日本のちょうど反対側に位置する南米ブラジルの食品を長野市で販売しています。
「日本で働いているブラジル人に母国のものを欲しがっている人がたくさんいたので、それなら私がみんなに届けようと思ったのがきっかけです」
そう話すジェオルジェさんは、現在神奈川県綾瀬市の本店を置き、関東4県を中心に移動販売していますが、これに加えて長野県上田市にも支店を持ち、月に1度は長野市に来てブラジルの食品を販売しています。
ジェオルジェさんは、ブラジル国籍。いとこが日本のソニーで働いていたことがきっかけで、1989年に来日します。
初は車のインジェクターの製造工場に勤務し、その後、日産の工場を経て、神奈川県にある輸入食品を扱う会社に転職。そこでの1年間が、今の移動販売につながったといいます。
「その会社は1年間だけでしたが、日本にはブラジル人が多いし、母国のものを欲しがる人が多いなと感じました。まだ他の場所にもブラジル人がたくさんいるはずで、その人たちは、どうしているんだろうと気になったんです」
そんな思いから1年間、輸入食品の会社で学んだノウハウを活かし、自分で日本にいるブラジル人に新鮮なものを届けようと、独立します。
来日してから、5年目のことでした。
母国の豊富な食材を乗せたブラジルエクスプレス号。信州で働く同胞のために月に1度訪れる
ブラジルで人気の伝統的料理パステオ。中にチーズを入れて油で揚げる餃子のようなものだという
分刻みのスケジュール
3連休の前日となる10月31日、ジェオルジェさんは神奈川県から長野県内に入り、翌日から2日間にわたり、長野市、中野市、佐久市、御代田町、上田市、諏訪市とかなりの距離にわたり、移動販売を行いました。
分刻みのスケジュールに関わらず、合い間をみては笑顔で取材に対応してくれるジェオルジェさん。
その笑顔からは、移動販売を通じて同郷の仲間に会える喜びがうかがえます。
ジェオルジェさんは現場に到着するや否や、すぐにお客さんに電話をします。すると、数分後に続々と現れるブラジル人。月に1度訪れる母国の食がぎっしりと詰まった宝の箱を前に、サンバのダンスが始まるのではないかと思うくらい、お客さんが心を踊らせていることが伝わってきます。
店内では、携帯電話から受信するブラジルのラジオ放送が流れるなか、お客さんがジェオルジェさんと談笑しながら、商品を買い求めていました。
「ここは食べ物もそうですが、ブラジル人が気軽に集まれる空間を提供しているんです。普段みんな、工場などで働いて精神的にも疲れていますから。ここは狭いけど居心地がいいらしくて、なかなか降りようとしないんですよ。ブラジル人は大きいから困るけど(笑)。でも、それも幸せですよ」
そう話しながら笑みをこぼすジェオルジェさんからは、心底この仕事を楽しんでいるということが伝わってきました。
開店準備に追われるジェオルジェさん。2日間で長野市、須坂市、中野市、高山村、佐久市、上田市、諏訪市と相当な距離を移動した
一人の消費者のためにも
今でこそ、東京、千葉、神奈川、埼玉をはじめ静岡、長野と活動の場を広げていますが、まだまだ消費者はいるといいます。
「商売である以上、ある程度の収入が見込めないと移動販売できないのが実情です。でも、欲しい人に新鮮なものを届けたいという気持ちは変わりません。だから、今後はウェブサイトを使い、一人の消費者のためにでも母国の新鮮な食を届けようと思います」
車を降りたお客さんは皆、ジェオルジェさんに手を振り、まるで上京する我が子を見送るふるさとの母のように寂しげに見つめていました。
ジェオルジェさんはそんな彼らに笑顔で手を振り、次の待ち人のために今日も車を走らせるのでした。
上田市には店舗も持つ。ここから食材を載せて県内を回る
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会える場所 | ブラジルエクスプレス (本店)神奈川県綾瀬市寺尾台1-13-36 (上田支店)上田市材木町2-12-6 電話 (本店)0467-79-6958 (上田支店)0268-21-1025 |
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