No.322
石川
太一さん
株式会社美廣社デザイン製版部
長野から全国へ。
若手がつなぐものづくり
文・写真 小林隆史
やっぱり、この仕事が好き
Tシャツのシルクスクリーンプリントを中心に事業を展開する株式会社美廣社。長野市内には3つの工場があり、たくさんのTシャツがこの場所から全国に届けられています。
石川太一さんは、製版からプリントを行っているデザイン製版チームに所属しています。平成元年生まれの石川さん。ちょうど同じ年に美廣社が創業。自身と同い年の会社で、ものづくりの魅力に引き込まれていったと話します。
「もともとつくることが好きで、つくることを仕事にしたいと思っていました。友だちと仕事の話をすると『仕事に行きたくない』と言う人も中にはいますが、僕にはその感覚が全くないので、やっぱりこの仕事が好きなんだなと実感しています。今では担当させてもらっているお客さんのTシャツを最初から最後まで自分でやっているので、責任感をもって仕事に向き合っています」
覚えている手の感覚のままに、一瞬で刷り上げていく
そんな石川さんの仕事ぶりを見てきて、副社長の渕上泰博さんはこう話します。
「石川さんは技術やノウハウが身についているのはもちろんのこと、幅広い視野をもち、自分で見て、手で確かめて、さまざまなことから学ぼうとしている姿勢にお客様からの信頼を得ている。だから、会社でも自分で受けた仕事は自分でやってもらっている。お客さんのことを一番わかっている人に任せる。お客さんの顔を見て、ちゃんと気持ちの入った仕事をすることが一番大切。そうした意識がないといい商品にはなりません」
細かな配置などもこれまで見てきたものを手が覚えている
手仕事
Tシャツのプリントには大きく分けて2種類あります。インクジェットプリントは簡単に言えば、家庭用のプリンターで紙に印刷するようなものです。シルクスクリーンプリントは、メッシュのかかった版に型をつくり、インクを刷り上げていきます。インクの濃淡や、かすれ具合、プリントの配置などたくさんの要素が込められており、美廣社では手刷りを基本とするため、つくり手の感覚が必要とされます。
石川さんは入社当初から、Tシャツにプリントが施されるまでの一連の流れを幾度も自分の手で確かめてきました。パソコンでデータを処理する工程も多いですが、結局はこれまで自分の手で確かめてきた感覚こそが最後に生きてきます。
これまでの仕上げてきたいくつものTシャツの版
「お客さんから求められるものに対して、どうやったら表現できるだろうかを考えます。入社当初は窓口業務だけで自分でプリントをしてきたわけではありませんでした。けれど、そこでたくさんの商品に触れてきたことで、プリント加工の良し悪しに判断基準ができていきました。今まで見てきたものを生かして、お客さんのニーズに応える高い品質を求めています」
工場で黙々と仕事だけしていればいいというわけではない、という共通の意識が会社内全体に広がっています。効率ばかりを求めるよりも、お客さんから「あなたに任せる」と言われる人になることと、そうした姿勢を次の世代に引き継ぐことを大切に考えています。
いいチームで仕事をさせてもらえていると笑顔で話す石川さん
着る人の笑顔が原点
とてもいいチームワークで、それぞれの力が自由に発揮できる環境が、気持ちの入った仕事につながっています。最近では、石川さんをはじめとする部署内のチームでワークショップも行っています。お客さんが自分でシルクスクリーンプリントを体験する様子を見ることで、着る人の反応が直接伝わってきて、一枚のTシャツにかける思いが変わったと話します。
「お客さんがプリント体験をしている様子を見ると、反応が直接伝わってきて、とても楽しいです。工場にいるだけでは目にすることができない笑顔が見れます。着る人の笑顔を想像するよい機会になっています。喜んでもらった瞬間にも、やっぱりこの仕事が好きなんだなと実感しますね」
着る人の笑顔を想像したものづくり。石川さんが美廣社から受けたバトンは、これからまた次の世代に繋がっていきます。
子どもに教えるのも楽しい、とやりがいを感じている
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