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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.163

野池

征永さん

吹きガラス工房 naga-no-glass

1200℃との闘い!

文・写真 Yuuki Niitsu

Tシャツ、短パンで作るガラス

「ガラスは冷たいとか、硬いというイメージがありますが、逆に温かさや柔らかさを伝えたいんです」

取材した11月中旬に、短パンにTシャツ、それにビーチサンダルという、晩秋にしては軽装すぎる姿で話すのは、長野市稲里町で吹きガラス工房を営む野池征永さんです。

吹きガラスは、ガラス作りの中の1つのジャンルです。野池さんは北海道富良野で6年間修業をしたのち、今年、満を持して故郷の長野市に戻ってきました。

現在、自宅にあった土蔵を工房に改装し、作品づくりの毎日を送っています。

冒頭にも述べたように、ガラスの既存のイメージを覆すような、温かさ、柔らかさを表現することをモットーとし、ガラスらしくないものをイメージした陶器のような風合いを出したものから、可愛さを表現した動物の置きものまでその作品は多岐にわたります。

ガラス制作の舞台となる工房内には、大きな電気式ガラス溶解炉があり、24時間体制で1200度の熱を維持しています。

「この時期は快適ですが、夏は室温が40度くらいまで上がりますよ」

冒頭に説明した野池さんの格好がようやく理解できました。

「やけどやガラスの破片が足に刺さるのは日常茶飯事でしたけど、工房のスタッフは何故かサンダル、雪駄を履く人が半分くらいいるんですよね(笑)」

これぞガラス職人の勲章!とばかりに、笑いながら足のやけどの跡を見せる野池さんからは、繊細なイメージのガラスとは違う大胆ささえ感じました。

1200度の熱を24時間入れ続けているという電気式ガラス溶解炉。軽装になるのも納得である

ガラスとの出会い

野池さんは東京の大学を中退後、やりたいことを模索していたといいます。

「よくあるパターンだと思うんですが、やりたいことが見つからなかったんですよ。周りからは、夢を持ちなさいって言われていたんですが」

そう当時を振り返る野池さんですが、偶然目にしたテレビ番組がきっかけでその後の人生が変わります。

「ある時、TVチャンピオンという番組を見ていたら、『ガラスアート王決定戦』という企画があったんです。それを見た時、ガラス作りって、身近で誰もやっていないし、手を動かしながらやる仕事って面白そうだなぁと思ったんですよ」

この番組がきっかけとなり、2005年、当時新木場にあった東京国際ガラス学院に入学します。
そしてこの学校での出会いが、再び野池さんの人生の転機となります。

「うちの学校が、TVチャンピオンのロケ地になったんですよ。その時に出演された、北海道のガラス工房の河野工房長が、撮影終了後に、誰にというわけではなく『来年卒業したら、うちにおいでよ』と言ったんです」

その言葉が野池さんを動かします。

「工房長は冗談で言ったかもしれませんが、それを真に受けて、勢いと弾みだけで卒業後、北海道に行きました」

こうして、2007年に、工房スタッフとして就職することになります。

七つ道具の種切りバサミ(左2つ)とジャック

6年間の修業

「工房スタッフは先ずは、アシスタントとして働きます。1日30~40個のガラス製品を同じ大きさ、形で作ります。さらにそのガラス製品と同じ数のポンテ(ガラスを作る工程での前半と後半の入れ替え作業)を繰り返します。1週間の作業はこれの繰り返しでした」

華やかに見えたガラスの世界は、こうした地道な作業の連続だったと当時を振り返ります。

そして、特に驚いたのは冬の室内と外気の気温差だそうです。
冒頭にも述べたように、1200度の熱を常時、ガラス溶解炉で維持しているため、その温度差はかなりだったといいます。

「冬は室温が30度まで上がるのに対して、外は-25度ですよ。その差は55度。最初の頃は体調を崩しましたね」

気温差、怪我、そして地道な作業の連続。心身共に鍛え上げられた野池さんは6年間の富良野での修業を終え、今年故郷長野市へ戻る決意をしました。

動物の置物はガラスが3層になっている。陶器のような風合いを出したガラス(中央左)は長野の山をイメージ

ガラス作りは秒単位の世界

現在、野池さんは工房で一日の大半を作品づくりに費やしています。

「ガラスは1200度の溶解炉で溶かし、そこから出すと固まっていくので、形を作るのは1秒2秒という時間で勝負する世界なんです」

そう話すと、野池さんは溶解炉から真っ赤に染まったガラスを出し、すぐさま1000度あるグローリーホールという焼き戻しの窯に入れて、柔らかくなっているうちに、形を作りました。

器用にテキパキと作業をしているように見える野池さんでしたが、ゴミ箱に収まるいくつかのガラスの残骸を見ると、時間勝負の難しさを感じ取ることが出来ました。

「出来たものは480度の徐冷炉の中に置いておくんです。作業終了後、一晩かけてゆっくり冷ましていくと、割れることなく出来上がります。なのでガラス作りは最短でも1日はかかります」

ガラスの形を作るのは秒単位の勝負。しかし、完成するまでは1日がかり。野池さんは、この時間との葛藤の中で日々、腕を磨いています。

「北信地方はまだガラスに馴染みが薄いので、アピールしていきたいです」

そう今後の抱負を語る野池さんは現在、ぱてぃお大門にある「葉っぱカフェギャラリー」にて来春開催予定の作品展の準備を進めています。

北海道で知り合った奥様は、店頭での販売が専門で、野池さんの作品の一番の理解者。今後、夫婦二人三脚で吹きガラス工房を広めていきたいと話します。

熱を冷ましながら制作していくガラスとは相反し、野池さんの野望はどんどんと燃え上がっていくのを感じました。

同色の3種類の色ガラス。デザインや模様によって色の付け方を変えている

(2014/12/26掲載)

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会える場所 吹きガラス工房naga-no-glass
長野市稲里町中氷鉋906
電話
ホームページ https://naga-no-glass.storeinfo.jp/

E-MAIL:noike_glass@yahoo.co.jp

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