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わくわく・共感できる長野の元気情報を配信します!

ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.128

青木

卓也さん

長野高等学校3年/N-STATION

若い力で日本の未来を変えよう!

文・写真 Yuuki Niitsu

自分の目で確かめること

2011年3月11日に東日本大震災が発生して3年半が過ぎた9月13日から3日間にわたり、長野県社会福祉協議会の主催で岩手県大槌町(おおつちちょう)視察・交流バスツアーが開催されました。
参加者は長野県内各地の高校生16名と随行者です。

「高校生が被災地を訪れ現状を自分の目で確かめること。そして現地の高校生と接することで、自分の中で何が出来るかを確かめて、今後の活動に活かしてほしいです」

視察前に今回のツアーの目的を話してくれたのは、主催の長野県社会福祉協議会、平林拓朗さんです。
2013年12月に長野県栄村で行われた「高校生のスキー交流会+しゃべり場in栄村」(飯山市社会福祉協議会 主催)において、岩手県と栄村の被災した高校生同士の交流イベントがあり、こういった動きから今度は長野県から岩手県を訪問しようと、今回の視察ツアーが実現しました。

車内にて自己紹介する参加者たち。それぞれの意気込みを話してくれた

高校生が見た現実

今回このツアーに参加した長野高校3年生青木卓也さんは、長野県の高校生が長野県で頑張っている人を取材し、記事にする高校生ボランティアグループ「N-Station」の一員。今回のツアーもN-STATIONで活動している中で知ったといいます。

「今までニュースや新聞など色んなメディアで被災地を見てきましたが、自分の目で見ないと何も始まらないと思いました」
青木さんは今回のツアーに参加した理由をそう話してくれました。

9月13日、16名の高校生はバスの中で自己紹介をし、震災当日の映像を見ながら、それぞれが明日初めて目にする被災地を思い描き、緊張と決意を胸に眠りにつきました。

翌朝5時、岩手県大槌町に入るや否や変わり果てた姿が視界に広がります。
車中泊で満足な睡眠ができなかったはずの16名ですが、その目は外にくぎ付けになっているのがひと目でわかりました。
いよいよかという緊張感の伝わる車内は、異様な空気に包まれていました。
朝食をとり最初に向かったのは、バスの車内で見た震災当日の映像を撮った大槌町の城山公園の高台。そこから見る変わり果てた町の光景を見て「言葉が出てこないです。出来ればもっと早く来たかったです」と青木さんは動揺を隠せません。

これからの大槌町に明るい未来を映し出す「希望の光」という灯火を背に、彼らは自分の頭の中を整理するのがやっとという面持ちでその場に立ちすくんでいました。

その後、震災当時のまま時間が止まっているという時計がある旧大槌町役場や震災前までは大槌町住民の憩いの場であった吉里吉里(きりきり)海岸などを視察。

車内で見た津波の映像を撮影した、城山公園高台から。それぞれが自分の目と心に今の町の姿を焼きつけていた

「こんなにも静かできれいな海岸に15メートルもの大津波が到来したとは思えないです」

そう話す青木さん複雑な表情を浮かべます。

海に向かって立つ高い堤防のフェンスが折れ曲がっている光景は、当時の津波の大きさと威力を物語っていました。

そして気になったのは、このフェンスが海方向に曲がっていたことです。
このことに多くの生徒が疑問を持っていると、大槌町社会福祉協議会の渡辺賢也さんが説明してくれました。

「津波は押し寄せる力よりも引く力の方が圧倒的に強いんです。だから、フェンスが海側に曲がっています」

「津波は押し寄せる力よりも引く力の方が圧倒的に強いんです。だから、フェンスが海側に曲がっています」

被災地を歩く参加者たち。復興までの長い道のりをひしひしと感じている

まずは自分の命を最優先

渡辺さんは震災当時、背後に津波が迫るなか自身の祖母を背負いながらも、なんとか命からがら逃げてきたという経験をもちます。

「自分もあの時は奇跡的に助かりましたが、とにかくまずは自分の命を大事にしてください。自分が生き残らなければ何の意味もありません。それで余裕があったら他の人の支援をしてほしいです」

渡辺さんの説得力ある言葉にその場にいた全員が聞き入り、波の音が静かに響き渡ります。

「そして被災地は東北だけではなく、土砂崩れの起きた広島、台風被害のあった徳島など他にもたくさんあるので、ぜひ目を向けてほしいです。君たちのような若い世代が関心を持ってくれることは、被災地にとっても大変ありがたい。高校生にだから話してくれる住民もいると思うんです」

瞬きもせず熱心に話す渡辺さんが印象的でした。

旧大槌町役場にて。大槌町社協の渡辺さん(中央奥)が自分の体験した当時の状況を伝える

自らが考え今後何が出来るか

「今回の被災地視察ツアーは現地の高校生と長野県の高校生が交流することで、長野県の高校生には現実を直視し、今後の災害意識を高め、地域で活動を起こすきっかけにしてほしいんです」

そう主催の平林さんは話します。
そのため日程の中には何度も発表会や交流会、まとめシートの記入などが設定されていました。

特に交流会では、大槌町と長野県の高校生が一緒になり、自らで撮影した写真とエピソードを模造紙にまとめ発表。
スタッフがそれについて質問していくというかたちをとり、生徒の率直な感想と今後の課題を検討しました。

「今回の交流会に参加し、普段見ている風景も遠くから来た人たちが見ると、感じ方が違うんだなと思いました。あらためて復興すべきところがまだまだたくさんあると気付かされた交流会でした」

「被災地はマイナスのイメージがあると思うんですが、とにかく一度来てほしいです。食べ物もおいしいし、美しい吉里吉里海岸もあります」

ツアーに参加した岩手県大槌高校2年生の小林望さんは全国へ向けて力強いメッセージを残してくれました。

今夏が過ぎると堤防工事で閉鎖されてしまうという吉里吉里海岸。この夏大勢の地元住民が集まり、その別れを惜しんだといいます。

海の方向に曲がるフェンス。津波は引くときの力の方が強いということを物語っている

若い世代がつなげる支援の輪

復路の車中、今回の視察ツアーを通しての感想を青木さんに聞きました。

「城山公園高台から旧大槌町役場までを歩き、10メートル近く土砂を積み上げないと建物が建てられないという現実、そのために何年も調査して適正な高さを調整しているという現実を知り、3年半たってもまだそこまでしか復興が進まないんだという印象でした」

「被災地は、雇用不足から若い世代が仕事をなくし都会へ就職した結果、後継者問題や高齢化というように、日本の社会問題が凝縮されていると実感しました。この現実を受け止めて、帰ったら新聞で紹介したり、地域での活動につなげたいです」

被災地を歩いたほんのわずかな時間でも、復興までの長い道のりを感じたという青木さん。しかし、その表情は確実に前を見据えていました。

3日間の視察ツアーを終え、多くの荷物と課題を背負って帰る生徒たちの確実に成長した姿を感じ、主催の平林さんは目を細めます。

「参加した高校生はきちんと自分の考えを持っていることを実感しました。以前行われた長野県栄村での交流会も高校生が主体となり行われました。今回の視察後も、彼らのような若い世代が中心となり次につなげてくれることを願います」

震災から3年半が過ぎた今、もう一度被災地に目を向け我々に何が出来るかを考え、それを地域に還元していくこと。そして、この現実を風化させないこと。

今回のように若い世代が被災地で掴んできた現実や課題と今後どう向き合うか、そこに是非注目していきたいと思いました。

被災地で見てきたものをまとめる。地図や絵、写真、コメントとそれぞれが協力して制作

(2014/11/05掲載)

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