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No.126

宮坂

秀徳さん

遊菓里店主

ケーキ屋さんがそば打ってます!

文・写真 Yuuki Niitsu

回覧板が届けた人生の転機

そば粉をおすそわけしますっていう回覧板が回ってきたんですが、それがきっかけですね」

そう話すのは、長野市川中島で「軍配最中とフランス菓子の専門店 遊菓里」を営む、宮坂秀徳さんです。
宮坂さんはなんと洋菓子職人でありながら、自分で打ったそばをお店で提供しているという業界の風雲児。

「35年間、洋菓子を専門に作ってきましたが、そばを打ってみたいという願望がずっとあったんです。そんな時にタイミングよく回覧板が回ってきて。人生ってわからないですね」

そう笑って話す宮坂さんは、自分はあくまでもそば職人ではなく、楽しみの一つとしてマイペースにそばを作っているといいます。

宮坂さんは高校を卒業後、上京し大学で4年間学んだ後に製菓専門学校に通います。
その後、横浜と銀座でケーキ職人としての腕を磨き、先代が体調を崩したのを機に実家の長野市にあるお店を継ぎます。
先代は和菓子の専門で、最中(軍配最中、古戦場最中)だけで家族を養ってきたといいます。
そこに宮坂さんが洋菓子を取り入れ、和洋折衷の商品ラインナップで30年以上繁盛してきました。
そして2013年7月、新たにそばが加わり遊菓里はお店として第3章を迎えます。

本職は洋菓子職人。そば作りは楽しみでやっているというご主人。手にするのは先代の作ってきた軍配、古戦場最中

洋菓子職人としてのスタンスで

「そば」と「洋菓子」。
全く別の食べ物なため、さぞ苦労しているのではと素朴な疑問を投げかけてみると意外な答えが返ってきました。

「実は1回だけパソコンで作り方の動画を見ただけなんです。それで試しに作ってみたら好評で、5日後にはお店に出していました(笑)」

このように笑いながら話す宮坂さんですが、お店に出すようになってからはそば粉の配合を何度も調整して毎日試行錯誤してきたといいます。

「うちは配合を外二(そば粉1キロ:つなぎ200グラム)にしています。小麦粉はお菓子作りに使う薄力粉を多く使っているんですが、非常につるつるしたそばになるんですよ」
お昼には自身の打ったそばを奥様と毎日食べて確認しています。

「おかげで一年間で10キロ痩せましたよ(笑)」と話すご主人ですが、そば職人としてではなくケーキ職人としてのスタンスでそばを作っています。そのため道具も敢えてそば専用のものは揃えず、洋菓子で使用しているものを代用しています。

「大理石の上で、洋菓子のめん棒を使ってそばを伸ばしています。そば職人がみたら驚くかもしれないけどうちはあくまでも洋菓子の感覚で打っているんですよ」

「それに水回しもやり方が違うんです。うちは柏餅をこねる時に使う熱湯を使用していますから。それでそば玉を作ってから、2時間冷蔵庫で寝かすと成分がうまく混ざって生地がしっかりと伸びるんですよ」

楽しみでマイペースにやっているという宮坂さんだからこそ、既成概念にとらわれないやり方で挑戦できるのかもしれません。

洋菓子作りで使用する大理石でそばをこねるという。あるもので賄うところに遊菓里のそばの魅力がある

ちょい天ソバ700円。ざるそばに天ぷら5品と副菜2品がついてこの安さ

そばがくれた第二の人生

今では宮坂さんの一日はそば作りが中心となっています。朝起きてからそば玉を作り、冷蔵庫で寝かせている間にケーキや和菓子を段取りし、朝食後にそばを伸ばすという毎日。

そのため今日はどんなお客さんがそばを食べに来るかを考えるのが楽しみだそうです。

「お客さんから『ケーキお願いします』って注文が入ると、なんだケーキかよ、そばじゃないのかよって思っちゃうんだよ(笑)。あとで母ちゃんに言うと『うちはケーキ屋なんだから』って怒られるんだけどさ」

昨年の暮れには年越しそばを頼まれ夫婦で60食を作り年を越したといいます。

そばを打ち始めてから筋力がついたというご主人。58歳とは思えない力こぶ

「人生って何があるかわからないね。だから面白いんですよ」


「ケーキは華やかな食べ物。そばは素朴な食べ物。相反するものを作ることがいい気分転換になっているんですよ」

そばを作り始めてからは体重が減っただけでなく、血圧も下がり、筋力もつき、毎日が楽しいという宮坂さん。

「そばに第二の人生をもらった」という言葉が印象的でした。

「この張り紙がずっと気になって」と言って来店するお客さんが多いという。宣伝上手なご主人。見習いたいものである

(2014/10/31掲載)

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会える場所 軍配最中とフランス菓子の専門店「遊菓里」
長野市川中島町原1373-1
電話 026-284-4100
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