No.93
長野駅東口公園
ナガラボ編集部のマイフェイバリット
長野オリンピックから21年「豊かな緑を後世に引き継ぐ」
文・写真 小林 隆史
長野駅東口は、観光客や通勤・通学の市民の姿は少なく、比較的閑静なエリアです。この地域におおらかな緑が広がる憩いの場〈長野駅東口公園〉があります。1998年の第18回オリンピック冬季競技大会とパラリンピック開催をきっかけに、約20年間以上に渡り、長野市が取り組んできた「土地区画整備事業」の一貫として、2019年(令和元年)5月に完成しました。
これまでに「地元住民とのワークショップを重ね、地元役員が組織する公園委員会が名称を決めるなどして、地域の暮らしに寄り添う場づくりを目指してきました」と話す長野市駅周辺整備課に、公園整備に至る経緯や目的を詳しく聞いてみました。
自然と共にある長野市を目指して
建造物の間に広がる緑の芝生、自然石の舗装やサークルベンチ、ステージのような屋根付きの休憩所、にぎやかな彩りの遊具などが計画された〈長野駅東口公園〉。完成に至るまでの経緯は、約20年以上前の長野オリンピックの開催から遡ります。
〈長野駅東口公園〉は、長野市が施行する『長野駅周辺第二土地区画整備事業』において整備された都市公園です。『土地区画整備事業』は、公共施設の整備改善による健全な市街地の造成、宅地の利用増進を目的としており、事業面積の3%を公園することを定めています。
「立地条件の良い長野駅東口地区は、昭和の経済成長と共に、無秩序な市街化が急速に進んだ地域でした。駅前広場や公園等の公共施設整備が遅れ、密集した木造住宅の存在など、生活環境の低下や防災において支障をきたしており、そのまま放置しておけない状況にありました。
そこで、第18回オリンピック冬季競技大会及び長野パラリンピックの開催決定を契機に、新幹線、高速道路等の高速交通時代に対応すべく長野駅東口を拠点とする交通網の整備、都市環境の整備が求められ、平成5年から『土地区画整理事業』に着手しました」
豊かな自然を市街地に取り入れ、防災の基盤をつくる。自然と共にある長野市を目指す『土地区画整理事業』は、これからの日本の都市開発における先進的な見本と言えるかもしれません。
「街中に豊かな緑を」市民の憩いと安全を守る
全国4位の広さを誇る長野県。県土の約8割に森林が広がり、自然公園の面積は全国でも3番目に大きいことが特徴です(環境省自然環境局 平成29年3月調べ)。
市街地から数分で、自然豊かな森林や自然公園にアクセスできる環境は、後世に引き継ぐべき長野の魅力と言えるでしょう。小さな子どもが自然のなかで遊ぶ。日々の仕事の疲れを、自然のなかで癒す。こうした暮らしを市街地に育む〈長野駅東口公園〉の整備目的を、以下のように語ります。
「〈長野駅東口公園〉は、市民の憩いの場である公園の整備と、地域コミュニティの活性化を目標として、設計にあたっては、地元住民の代表者で構成したワークショップを開催しました。その中でテーマに掲げてきたのは、『まちなかの豊かなみどりのなかで、“遊び・憩い・ふれあい”ができる公園』です。
そのために、遊具を集め、子どもたちが楽しめる遊びの広場と噴水を整備し、さらに、防災備蓄倉庫、耐震性貯水槽を備えた防災のエリアも計画しました」
永く愛される公園
市民の憩いと安全を守る公園。「地域のコミュニティの活性化を目標としながら、地域住民が心地よく使える公園を目指していく」と、公園緑地課は説明します。
「他の公園と同様に利用者の方々に気持ち良く利用していただき、永きに渡って愛される公園となるよう維持管理に努めてまいります」
市街地に公園を設けて、「経済と生活」「市街地と自然」のちょうど良いバランスを図っていく。長野オリンピック開催から約20年以上を経て築いてきた『長野駅周辺第二土地区画整理事業』をモデルに、東京オリンピック開催後の東京が、自然と共に豊かな暮らしを育む街になることを願うばかりです。
<info>
長野駅東口公園
<お問い合わせ>
長野市駅周辺整備課:026-224-5162
長野市公園緑地課:026-224-5054
住所:380-0921 長野市大字栗田973番地1