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No.294

西沢

朋美さん

百々活版

さまざまな経験を経て出会った「活版印刷」。
その魅力を、自分のペースで届けたい

文・写真 くぼたかおり

何十年と経った古い手キンという手動式活版印刷機を入手したことがきっかけで、「活版印刷を長野でやろう!」とUターンしてきた百々(どど)活版の西沢朋美さん。一見もの静かな印象を受けるのですが、話をしてみると、とても軽やかな女性でした。

自分の心にしたがって、進み続ける

須坂市在住の西沢朋美さんは、今年4月から東町にある「SHINKOJIアトリエ」に場所を構えています。彼女のスペースには手キンと呼ばれる活版印刷機と活字が並べられています。彼女はここで、名刺やポストカードサイズまでの小ぶりな印刷物を手キンで1枚ずつ制作しています。

西沢さんはもともと歴史や美術が好きだったことから、金沢美術工芸大学芸術学部に進学しました。その理由は単純で、「美術史がおもしろそう」だと感じたから。また海なし県で育ったのも影響しているのか、日本海側に興味があったと言います。
その後は長野市にある印刷会社で勤務し、2年半印刷技術を身につけたのち、ひょんなことからドイツへ。

「最初は名古屋に行こうかなと考えていたんです。それがなぜかワーキングホリデーを使ってドイツに(笑)。あまり深い理由は無いのですが、ドイツは市民大学がたくさんあって、移民などの外国人向けのドイツ語講座が多いんです。ちょうど自分が行きたいなというタイミングで始まる学校があったので、これにしようって決めちゃいました」

1年という期間の中で西沢さんは、ドイツ語を勉強しながら短期アルバイトなどをして過ごしたと言います。

「海外経験があると、自分探しがきっかけ?なんて聞かれるのですが全くそんなことなくて。ただ、その時に興味があることをしただけなんです」

小型活版印刷機「手キン」は、丸い部分にインクを付けてから左側のハンドルを上げ下げしてローラーにインクをなじませて1枚ずつ印刷していく

印刷博物館で、活版の世界を知る

帰国後は東京で印刷会社、デザイン会社のアシスタントを経て、「活版」という言葉に興味を抱いて「印刷博物館」に就職。そこでは活版インストラクターとして、来館した人たちに活版印刷機のワークショップや案内、活字の調査・研究などをしていました。

「今ではパソコンがあれば出来る印刷物ですが、もとは実際に活字を作るところから始まり、必要な活字を選ぶ「文選」し、指定された通りに文字や余白を作る「組版」など、それぞれ職人がいて作ってきたのか!と自分自身が知るきっかけになりました。活版だと出来ることが限られているので、そういった制約の中でいかに美しい印刷物を作るのか、そういう歴史や工程を知るのがおもしろかったです」

行間など余白を作るために込めものという道具を入れながら組版をする

西沢さんの好奇心を満たしたのか、印刷博物館ではそれまでの最長5年間勤めました。そんなある日、はんこ屋さんが所有していた手キンを譲り受けることに。

「せっかく活版印刷機を手に入れたのに私蔵したままではもったいないと思うようになって。すでに東京では活版印刷をされている方がいるので、どうせなら地元で始めようと考えました」

そして2013年春に実家がある須坂市へ引っ越し、近くに流れる川から名前を用いて「百々活版」としてひっそりとスタートしたのです。

リサイクルショップで見つけたという和文のタイプライター。「文字も結構揃っているので使い道がありそうです」

長野で活版印刷の魅力を届けるために

須坂市に戻ってからも、どこか良い場所があればアトリエにしたいと考えていた西沢さん。SHINKOJIアトリエのある小道を以前から気に入っていたそうですが、久しぶりに通ったらカフェなどが出来てさらに雰囲気が良くなって驚いたそうです。「あの場所は何なんだろう?」と興味を持って調べる中でアトリエの貸し出しを知り、2015年春から1スペースを使うようになりました。

「私の両隣には版画家さんと、シャドーボックスの作家さんがいます。ゆる~く紙でつながっている者同士です。2人が制作に励んでいる姿を見ると、自分も『よし、がんばろう!』と思える。その環境が心地いいです」

しかし自身については「思いつくままに生きてきただけ」と、謙虚に話す西沢さん。たしかに現在は活版印刷機をフル稼働できるほど環境が整っているわけではありません。

「今はまだ活字が少ないので、樹脂版を使いながら制作することもあるんです。今でも長野県内には活版印刷機や活字を残されている方がいると思うので、そういった方たちを探してお話を聞いたり、可能であれば譲り受けるなどしながら増やしていきたいです」

活版印刷と同様に、西沢さんは手製本のワークショップも開いています。元は友人の結婚式にオリジナルの絵本を作ろうとしたことがきっかけなのだそう。西沢さんが行動をすることの基準は、常に自身の”好奇心”にあると言えそうです。きっとこれからも自分のペースで、長野から活版の魅力を発信していくことでしょう。

お気に入りの文庫本をハードカバーにしたり、豆本を作るなど、手製本のワークショップも不定期で開いている

(2015/12/14掲載)

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会える場所 百々活版
長野市大門町48-2 SHINKOJIアトリエ2階
電話
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