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No.208

小山

菜穂子さん

朗読家/C&Cハーモニックス代表

感動を伝える心の声
大人のための読み聞かせ

文・写真 Chieko Iwashima

感性を呼び覚ます朗読会

大人のための朗読会を開催している小山菜穂子さん。昨年11月も、この日を待ちわびたお客さんで会場は満席でした。小山さんの情感あふれる声で物語の世界にいざなわれ、思わず涙をこぼす人も少なくありません。

小山さんは、元アナウンサー。現在は朗読会のほか、司会やナレーション、電話応対診断など企業向けの研修も担当し、カルチャーセンターで朗読講座も受け持っています。

「いろんなことをやってきましたが、その中でも自分が一番やりたいことが朗読です。子どもだけじゃなく、大人も読み聞かせで感性を呼び覚ますような刺激が必要だと思います。それに、家族の誰かが感動して豊かな心になれば、それは子どもにも伝わると思うんです」

小山さん主催の「朗読かたばみの会」は年に1~2回開催。2014年秋は山本周五郎の『蕗問答』と『晩秋』の2作を朗読。琴や尺八など、作品に合わせた楽器の生演奏も加わる。今年の朗読会は12月5日(土)の予定

ずっと弱気だった自分から一歩前へ

大学卒業後、信越放送に入社した小山さん。アナウンサーとして働きながら、その心中は複雑だったと振り返ります。

「実はアナウンサーになりたくてなったわけじゃなかったんです。私はどちらかというと人前で話すのは苦手なタイプ。辞令をもらって、私なんかがいいのかと、ずっと気後れしているから何をやってもダメでした」

3年もすると仕事には慣れましたが、自信はないまま。そして5年間勤めたのち、結婚を機に退社します。しかし、子育てがひと段落すると、もう一度アナウンスの勉強をしてみたいという気持ちが湧いてきました。

「アナウンサーには向いていないと思っていましたが、声で表現すること自体は好きだったんです。結婚後もナレーションの仕事を頼まれて会社に行くことがあったんですが、頼まれたことをするのは気持ちも楽でした。会社にいたときはずっと腰が引けていたから、もう一度前向きにやってみたいと思ったんです」

そこで、アナウンサー時代の先輩が講師を務める話し方講座の手伝いをするように。先輩の影響もあり、次第に朗読に魅力を感じるようになりました。

そんなある日、夫が病気で亡くなります。子どもは小学校1年生と5年生でした。生活のために事務や経理など、転職を繰り返しますが、どこもしっくりきません。1996年、意を決しフリーアナウンサーとして独立します。

「夫が他界したとき、最初からフリーアナウンサーとして働く気にはなれなかったんです。やっぱり私なんて向いていないという気持ちが先に立ちました。独立を決めたときも自信はありませんでしたが、できるようになってからなんて思っていると一生何もできない。私はこれでやると宣言して、そこに追いつくように頑張るしかないと思いました」

仕事をしながら、カラーコーディネーターや産業カウンセラーの資格も取得。色彩心理学も学び、2000年にカラーとコミュニケーションをテーマにした「C&Cハーモニックス」を立ち上げました。2004年より法人となり、代表を務めています。

カフェなどを会場に少人数に向けての朗読会を行うこともある

自分を大切に思えるようになった出来事

2007年の秋のこと。突然、小山さんの顔の半分を覆うような湿疹ができました。一度治まったと思えば、また出たり治ったりを繰り返し、治るまで足掛け8年間。そんな状態で、仕事も減るかと思えば、湿疹が理由で断られた仕事は1件しかなかったそうです。

「ありがたかったですね。それ以上に、どうしてこんな状態なのにいいと言ってくれるんだろうと不思議なくらいでした。人前に出る仕事は、ある程度見た目も大事だと思っていたんですが、そんな自分の価値観を見直すきっかけになりました」

司会や朗読講座など、そのままの姿ではつらつと声を届ける小山さんの姿に勇気をもらったと言ってくれる人もいました。自分でも必要とされている何かがあるのかもしれない、そんな思いが芽生えたとき、今までになかった自己肯定感が出てきたといいます。

「以前は、私なんてって気持ちでいっぱいだったのに、この顔で人前に出る仕事をすることにも意味があるのかもしれないと思いました。顔の薄皮がはがれて肌が綺麗になっていくのと一緒に心の皮も剥けていった気がします」

吹っ切れた思いがした小山さんは、多少のことでは動じなくなったといいます。

「気が付いたら今までの経験がすべて朗読に生かせることだったんです。悩んで、いろんな回り道をして来たような気もするけれど、全部必要な経験だったと分かったから、過去の自分も肯定できるようになりました。肯定できるってことは、いい人生を歩ませていただいているということですよね」

毎週カルチャーセンターで朗読の講座。孫に読んであげたい人、ボランティアで読み聞かせをしたい人など習い始める動機はさまざま

朗読は心の声の波動を伝えること

朗読の奥は深い、と小山さん。大切なのは、「豊かな想像力を働かせて物語の内容をしっかり読みとり、自分勝手な解釈で表現しないように気をつけること」と語ります。聞いているだけでスッと物語の中に入ることができて、感動してもらえるものを届けるためにはどうしたらいいのかということをいつも考えて練習しています。

「”声は波動だ”と朗読講座の生徒さんにもよく言うのですが、感情の波動が声に乗って、人の心を打つんだと思います。物語の登場人物がその言葉を使いながら何を伝えたいのか。また、作者はその状況を描くことで何を伝えたいのか…?それは、作者や登場人物の気持ちになって、その場に自分を置いてみないと分かりません。難しいことですが、その場に自分を置くことによって初めて、聞く人に伝わるような声が出てくるのだと思います」

最近は、森鴎外の『高瀬舟』の登場人物の気持ちをどこまで読み取れるかで悩んでいるといいます。また、今年の善光寺御開帳イベントでも、善光寺縁起をもとにまとめられた『如是姫』に関する作品や『戸隠鬼女紅葉伝説』などを朗読する予定です。

「私だって、まだまだなんです。でも、これもきっと自分の糧になると思うから、大変そうだなと思う作品も挑戦してみたいです」

小山さんの話を聞いていると、こちらが励まされたような気持ちになり、声の波動が心を打つという意味に納得。いろんな作品に込められた思いを、小山さんの声を通して体感してみたいと思いました。

「私は朗読を通して普遍的なものを伝えたい。人間の根本はそんなには変わらないと思います。人間の思いというものは形がなくて、遠くにいてもつながることもできる…。やっぱり、私は”人間”が好きなんだと思います。だから、そういう人間に向かって語りかけたいんです」

「人それぞれの読み方があっていい」と小山さん。受講生から学ぶことも多いという

(2015/03/09掲載)

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