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No.129

塚田

まゆりさん

白鳥バレエ学園講師

心技体を整え
世界の舞台で活躍するダンサーを輩出

文・写真 Takashi Anzai

信条はみんなを元気にすること

2014年1月、松本市の高校生・二山治雄さんが、世界で活躍するバレエダンサーの登竜門「ローザンヌ国際バレエコンクール」で優勝しました。熊川哲也さん以来、日本人3人目の快挙です。
その二山さんが小学校5年生から通っているのが、長野市にある白鳥バレエ学園です。

白鳥バレエ学園は塚田たまゑさんと、その娘である、みほりさん、まゆりさんの母娘3人で経営しています。
二山さんだけでなく、これまでも海外で活躍する数多くのバレエダンサーを輩出してきました。

二山さんへの指導に関しては、主にたまゑさんとみほりさんがバレエの技術を担当し、そしてまゆりさんがフィットネスなどで身体作りを担当してきました。多忙を極める3人のうち、今回はまゆりさんに話を聞くことができました。

まゆりさんは2歳の時から母・たまゑさんの下でバレエを習っていました。しかし、バレエを続けるには才能に恵まれていなかったと振り返ります。物心ついてからは「いつ辞めてやろうか」といつも考えていたそうです。高校では新体操部に所属。部活動で多忙を極めたため、そこでバレエと距離を置きました。
その後はジャズダンスやフィットネスなどの世界へのめり込み、留学までしました。

それでも現在は白鳥バレエ学園に戻ってきています。その理由はまゆりさんの信条にあるようです。

海外で活躍するダンサーを数多く輩出してきた白鳥バレエ学園

まゆりさんの信条は、ごくシンプルです。
それは「みんなを元気にすること」。
そのためのツールがたまたまジャズダンスだったりフィットネスだったり、そしてその中にバレエがあっただけだったといいます。

「ニーズに合わせてみんなを元気にしたいんです。カテゴリを多く用意して、相手のニーズに合わせて、バラエティ広くやっています。自分自身が色んな舞台に通用するように鍛えてきたものが教えることに繋がってきたんですね」

バランスのよい身体作りを

まゆりさんは1983年ニューヨークへ留学。大学で語学を勉強しながら、アメリカンダンスセンターでジャズダンスやエアロビクスを専攻していました。ジャズダンスやフィットネスの教授法などを学び、充実した日々を過ごしていましたが、1986年母からジャズダンスなどの講師を依頼され、日本へ呼び戻されます。

最初は半年だけという約束でしたが、そのうち忙しくなり半年は日本、半年はアメリカという生活を経て、いつの間にか日本を中心とした生活に。
それでも最先端の教授法や表現に触れるため、アメリカには必ず年1回は訪れるといいます。

「たとえばバレエだけやっていると、外側に開く力だけが鍛えられて、インサイドマッスルや中側に締めようとする力を鍛えなければいけなくなります」

白鳥バレエ学園から多くの優れたダンサーが育っているのはバランスの良い身体作りにあるのかもしれません。

1週間に700〜800人を指導する。「子どもたちにとってサードプレイスでありたい」と塚田さん

子どもたちのサードプレイスとして

まゆりさんは一週間に700~800人の生徒を指導しています。しかし、これだけ多くの生徒を持っていても、携わるのは身体づくりやバレエの技術だけではないといいます。

「バレエのダンサーを育てる学校というより、教育の場所として、みんなが健全に思いやりのある子供たちに育っていってほしいですね。教育機関としての思いがあるので、一人一人のお母さんへの対応や、子どもたちの進路や悩みごとまで一緒に見つめてあげることができていると思います」

学園づくりで大事にしているのは、第三の場所という意味の「サードプレイス」としての機能です。

人間って三つ居場所があれば、場所を変えることで気分がよくなったり、精神的に安定して来たりします。子どもたちにとってのサードプレイスでありたい。学校は6年や3年で卒業してしまいますが、この学園はいつもここにある。バレエの上手下手関係なく帰ってきてもらって、その子たちがここで学んだことを今度は皆のために伝えていってくれたら」

二山さんはローザンヌ国際バレエコンクールの前々日の練習で大きく失敗して、精神的にかなり落ち込んでいたといいます。しかし、翌日の午前はバレエの練習を休んでピラティスをやって、心と体を整え、午後は知的障害者の作品を集めた美術館を訪れて、平常心を取り戻したそうです。

「昂ぶることなくいつもの練習通り、プライズ(賞)とか意識しないでやったのがよかったのではないでしょうか。練習通り、舞い上がることなくできましたよね」

そう分析するまゆりさん。
母と妹、三人四脚で指導しているからこそ、引き出しがいっぱいあって、「この子にはこうしてあげればいい」というアイディアが浮かぶといいます。

「あんまり『勝つんだ!』とか『誰かのために!』とか、目的だけに向かって気持ちだけが前に出ると、気持ちと体が離れてしまいます。いつもの練習はそうじゃないのに。そうすると、コントロールできなくなってしまう。いかに普段を大事にしてあげて、本番ではいかに普段通りできるようにしてあげられるかですね」

心技体すべてをバランスよく整えてあげる、そのことが世界の舞台を前にしても揺らがないからこそ、多くの生徒が素晴らしい結果を残しているのではないかと感じました。まゆりさんの話を聞いていたら、3歳と5歳のわが子にも習わせたくなりました。

「バレエのダンサーを育てる学校というより、教育の場所として、みんなが健全に思いやりのある子供たちに育っていってほしい」

(2014/11/06掲載)

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長野市南県町639
電話 026-234-4551
ホームページ http://www.hakucho-ballet.jp/
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