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No.018

北村

秀雄さん

シニアワインアドバイザー/セラーキタムラ経営

ワインアドバイザー全国選手権の優勝経験者
ナガノワイン普及 立役者の一人

文・写真 Takashi Anzai

「ワインアドバイザー」とは何か。
ワインに関する資格として最も有名な「ソムリエ」は、飲食店でワインを提供する人を対象としたものです。
それに対して、「ワインアドバイザー」は酒販店の従事者が対象となります。ソムリエの認定試験の合格率は毎年40%前後で推移していますが、ワインアドバイザーの合格率は20%台で、より狭き門となっています。

北村さんは、その狭き門をくぐり抜けたエキスパートたちの中で争われる全国選手権でトップを勝ち取った人です。正にエキスパートの中のエキスパート。

審査は、テイスティング、筆記試験などで構成され、最終審査は仮想の顧客を相手にした接客を通し、商品知識や接し方などで順位が決まります。必要な知識は、リアルタイムで更新していかなければならないため、北村さんは「相当勉強しましたね」と当時を振り返ります。

北村さんが経営するセラーキタムラは、善光寺大門にほど近い、表参道から少し入った場所にあります。北村さんは戦前から続く酒販店の三代目。
大学を出てすぐには家業を継がず、ビールメーカーに就職。そこで取り扱っていたワインにのめりこみました。

「ワインはラベルの奥にあるストーリーが見えます。もちろん他のお酒にもあるのですが、ワインは世界中に広まっているので、興味も無限大に広がっていくのです」

北村さんにとってワインは料理の引き立て役であるといいます。卸売も行っている北村さんに「どんなお店に好感を持つか」を尋ねると、こう答えが返ってきました。

「お店のお料理にワインがどう寄り添うかということを考えているお店ですね。僕は料理ありきだと思っていますから。繊細なお料理にコテコテの渋みの強い赤ワインを持ってきても、喧嘩するだけです。そこをお店の人が理解して、そこに僕の提案がうまく合うことで、お食事をしていてワインがおいしいと思っていただくのが理想です」

現在の活躍のフィールドは、酒販店経営者としてだけにとどまりません。長野県原産地呼称管理委員会の委員を務めるなど公的な活動のほか、自らのワインセミナーで業界関係や一般ユーザー等、幅広い層の方々にワインの魅力を伝えています。

「原産地呼称制度の認定率は今年90%を超えました。第一回は20%台でしたから、この11年で長野県のワインのレベルが格段に上がっています。
温暖化によるブドウの質の向上がマスコミなどで取り上げられていますが、私は長野の造り手さんの情熱がレベルをここまで引き上げたのだと思っています」

店内には北村さんセレクトの国内外のワインが所狭しと並ぶ

ワインに携わる若い料理人やソムリエからも厚い支持を受けています。
善光寺門前屈指の人気店「パスタと自然派ワインのお店 こまつや」の廣政真也シェフは「私なんかが評価するのはおこがましいですが」と前置きした上で、北村さんについてこう話します。

「高いレベルでのテイスティング能力や知識を持ちながら、それを押し付けることなくワイン自体の魅力や楽しさを第一に伝えているところが素晴らしいと思います。

北村さんのセミナーなどを通してワインに魅力を感じた人たちが、ワイナリーの立ち上げに出資したり、収穫を手伝ったりしています。そう考えると、現在の長野ワインのレベルを間接的に押し上げた貴重な人だということは間違いないと思います」

昨年、セラーキタムラは長野駅前の店を善光寺門前の店に集約し、改装オープンしました。北村さんは門前町の最近の変化について非常にポジティブな印象を受けているといいます。

「この界隈にも個性的な店が出てきていますよね。非常に空間的に心地よくなってきている、それは感じます。

若い人たちの思いが具現化されているお店があって、その人たちが地元を愛して、盛り上げようとしている。もともと地元にあるところだけじゃなくて、Iターン組も地元を愛してくれている、それはすごくうれしいことですね」

「長野市全体の飲食店も、全国系でない個店の方々が非常に頑張っています。そういう方たちが長野の飲食店を盛り上げていて、とてもいい傾向にあると思います」

店を心地よい空間であるように心がけているというだけあって、「居心地がいい」と言われることが多いセラーキタムラ。顧客の滞在時間も長いといいます。実際、取材中もお客さんが何人も訪れていましたが、北村さんは商品を吟味するお客さんと一定の距離を取りながら目を配り、決して押しつけがましい説明はせず、質問には丁寧に答えるというスタンスを保っていました。

「新幹線が金沢延伸するにあたって、長野市は単なる通過点じゃなくて、人を呼び込むような魅力ある街にならなくてはなりません。街の発展のためにうちができることは、街の中でごひいきをいただくお店になるということですかね。大型店にはない、魅力ある個店が増えれば、街の魅力に繋がりますから」

北村さんの言うとおり、セラーキタムラのような魅力的な個店が魅力的な街をつくっていくのではないでしょうか。決して押しつけがましさがなく、相手のシチュエーションや料理に合わせた銘柄を提案してくれる北村さん。人通りの多い場所にあるわけではありませんが、絶えずお客さんが訪れるのも頷けると感じました。

善光寺門前で3代続く老舗の酒店

(2014/05/28掲載)

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ホームページ http://www.e-kitamura.com/

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