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No.299

相馬

佳織さん

ガラス作家/FUKU glassworks

気取らずナチュラルで
生活に寄り添う作品を

文・写真 安斎高志

1月10日にアトリエ兼ショップがオープン

気取らずナチュラルでありながら、生活に彩りを与え、気持ちを軽やかにしてくれる。そんなガラス作品を作る、相馬佳織さん。2014年11月の「工房からの風」を皮切りに、数多くの展示会、グループ展などに出品し、高い評価を得てきました。

1月10日には、相馬さんのアトリエ兼ショップ「FUKU glassworks」が善光寺門前にオープンします。ほぼひとりで改装した店内から、相馬さんは笑みを浮かべて通りを見つめます。

「ここは通勤や通学の人が結構通るし、近所の人が興味を持って入ってきてくれたりするので、作品を気軽に手に取ってもらいたいですね」

旧ブックカフェをセルフビルドで改装した

元々は人見知りで、ガラスがなければ人との接点がほとんどなかったかもしれないと話す相馬さん。しかし、新たにショップを開いたことで、作品や仕事にいい影響があるのではないかと期待しています。

「ガラスを媒介にして人とコミュニケーションするということが、飽き性な私がこれまで飽きずにガラスを作り続けてこられた理由でもあるんです。そして、お客さんとのやり取りがきっかけで新しい作品が生まれることもこれまで多々ありました。いろんなきっかけが増えたらいいなと思っています」

ショップの玄関は、大きなガラス戸。取材中も、通りがかりの人が興味深げに中を覗き込む姿が見られました。

善光寺門前には、ものづくりの先輩が多いので心強いと話す

手で覚えた11年

相馬さんは青森県生まれ。ものづくりに興味があり、秋田公立美術工芸短期大学に進みます。ガラスのほか、染織や陶芸、彫金など、工芸学科で学べる技術の中からいくつかを経験し、最終的にガラスを専攻することを決めます。

「他の素材と違って、吹きガラスはなかなかうまくいかなかったんです。彫金や染め物はどんどん目標に向かってできあがっていくのに、ガラスだけは思い通りに形作られていかなくて。悔しいと思って、次に取り組むんですけど、どこかしらの過程で上手くいかず、『次こそ』と思ううちにのめり込んでいました」

そして、没頭しているうちに、興味、関心は、個人の工房の経営がどうやって成り立っているのかということにも広がっていきます。

気取らずナチュラルでありながら、生活に彩りを与え、気持ちを軽やかにしてくれる

「どうやって作品を売るのか、工房を運営するのかということについて、いつの間にか考えるようになりました。そして、それは工房の中に入って働かないとわからないと思ったんです」

全国の個人工房の求人を探し、作風にも惹かれた東御市の「ガラス工房橙(だいだい)」に就職。そこで11年間、工房を営む寺西将樹さんのもとで働きます。

「寺西さんは職人気質。個性を伸ばすためにある『学校』という場から飛び込んだわけですから、ギャップはありました。でも、手を慣れさせるとか、手で覚えるということがすごく多くて、同じものをいくつも作る技術が身に付いたし、本当にありがたい環境でした」

大好きな多肉植物のポット。「お気に入りのものほど早く売れて悲しい」と笑う

コミュニケーションが生まれるきっかけを

2014年末、相馬さんは独立のため同工房を退職。その直前、新進気鋭の工芸作家が集う野外クラフト展「工房からの風」に応募し、選考を通りました。初めての展示となった同展で得た経験は大きいと話します。

「工房からの風のディレクター、稲垣早苗さんから、出展ブースをひとつの個展だと思いなさいと言われたんです。自分はどう見せたいのか、何ができるかをすごく考えさせられました。あれがあったからこそ、ギャラリーの方々にも声を掛けてもらえるようになったんだと思います」

2015年に入り、レンタル工房の窯を利用しながら個人作家としての活動をスタートさせますが、ギャラリーや他の作家から次々と声がかかり、休む間もなく1年がすぎたと振り返ります。

大きなガラス戸から光が差し込む。「気軽に覗いてほしい」と相馬さん

新たなアトリエ兼店舗は、吹きガラスの設備が整っていないため、加工がメインになります。そのため、いずれは吹きガラスができる窯が持ちたいと話す相馬さん。それに加えて、もうひとつ目標があるそうです。

「寺西さんが地元名産の胡桃を使ったガラス作品を作っていたんですけど、私も長野のものを使った器を作りたいですね。自分ならではの強みにもなるし、その土地で制作する意味にもなると思うので」

生活に寄り添い、コミュニケーションが生まれるきっかけをつくる。そんな作品のテーマどおり、インタビューは穏やかに進み、大きなガラス戸から差し込む日の光は、相馬さんの作品を通して柔らかな陽だまりをいくつもつくっていました。

いずれは吹きガラスができる窯が持ちたいと話す

(2016/01/06掲載)

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会える場所 FUKU glassworks
長野市三輪7-3-5 
電話
ホームページ http://www.sollaripple.com/
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