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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.008

久保田

清隆さん

まごころ・ふれあい農園

純粋な長野の恵みを
アクティブに育てる農業人

文・写真 Rumiko Miyairi

有機野菜を年間100品目以上作っている農業人を長野市中条で見つけました。
農薬や化学肥料を使わない有機農園「まごころ・ふれあい農園」を営んでいる久保田清隆さんです。
久保田さんの農園は虫倉山の中腹にあります。

取材に伺ったところは自宅とつながった作業場。雪の下から掘り起こしてきたばかりの人参を丁寧に磨きながら、農園や野菜作りへの思いを語ってくれました。

「日本中の農地を見て歩いた結果、思い描いたのは、この虫倉山のふもとで農業をやる姿。ここが原点です。」
こう言い切る久保田さん。農園の広さは、全部で4ヘクタールあるといいます。実に広大な農地を想像しましたが、久保田さんの農園は違いました。

朝一番に土の中から掘り起こした人参を磨く久保田さん。人参は一年中切らさず収穫している

農地は、長野市川中島や中条や小川村などに散らばっていて、山の傾斜地から平地まで、広さや条件はさまざま。そして、ほとんどが荒廃農地から開墾して作ったそうです。作る野菜は季節に応じて種まきから収穫まで1品目ずつ手間をかけて育てます。

旬の時季に食べてもらいたいという思いで、収穫品目の少ない時は15種類くらい、多い時は30種類の中から選び入れた野菜を宅配パックにします。その箱には、それぞれの野菜を活かした食べ方や料理のレシピに久保田さんや有機農業の研修生のコメントを添えてお届けしています。

「お客様に健康をお届けしたくて。野菜たちはその期待に応えてくれますよ(笑)」

野菜をまるで優秀な社員のように例える誇らしげな久保田さんも、以前は野菜の種を生産する会社のサラリーマン。化学農法を指導する技術員という仕事に携わっていたので、有機無農薬での野菜作りに対しては関心が薄かったと言います。

「野菜作りは、看護師をしていた妻の『有機野菜が食べたい!!』という一言がきっかけでしたが、仕事柄のせいか、無農薬で満足に野菜が作れるわけがないと、正直、半信半疑でしたから。しょうがないなぁって、思って始めたのです」

その後、野菜を作っていくうちに、自分の考えと異なる変化に気づき始めました。
「最初、庭先の家庭菜園程度だったんですけど、だんだんイイもの(野菜)が獲れてきてね。しかも、その野菜を食べた子どもたちは、やたらと元気で健康そのもの。野菜が健康だと人も健康になれるって、そこで、気づかせてもらえました。」

『土が健康だと野菜が健康になる、野菜が健康だと人も健康になれる』

健康な野菜作りに意欲を燃やした久保田さんでしたが、当時まだ、中条周辺で有機無農薬野菜栽培をしている人がいなかったこともあり、周りからは疑念を抱かれてしまったそうです。

久保田さんが作った獲れたて白菜。艶があり生き生きとしていて健康そのもの

「いままでサラリーマンだった奴が、急に『有機無農薬だ』と言って、朝から晩まで畑に出て帰らなくなったから、親戚や友人から様子がおかしいと、変わり者扱いされて。みんな、私を避けるようになったのです。その時は、すべて失った感じでした。でもね、自分からは避けず自然にしていよう、ありのままの自分でいようと、いつも思っていました」

いつも自然体で、野菜作り一筋に取り組む久保田さん。その情熱を注ぐ姿が伝わり、徐々に周囲の目も変わっていったと言います。

「農業オタクだと自分で思いますよ。畑にいれば充分で、登山やバイクや釣りや…そんな趣味も忘れるくらいでしたから」
と、自らを評する久保田さん。
手間と時間をかけ、根気の要る有機無農薬栽培はまったく苦にならなかったそうです。

そして「野菜になぜ虫がつくの?なぜ病気になるの?」と、畑に出ては野菜と会話をし、答えを見つけては、やってみる。あらゆることを、常に野菜と一緒に解決していく久保田さんのスタイルが発揮されていきました。

「そのうち、野菜たちから活かしてほしいという純粋な気持ちが聞こえてくるような気がして。
野菜と話しているかのようでした。そうしたら、病気にならないように薬を撒く、という考えにはなりませんでした。自然に任せて生かすと、土も健康になり野菜も健康になると思いました」

「健康な野菜は健康な土と環境作りから」という単純な理論。しかしながら、その理論どおりに実践するためには、様々な困難や相当の努力が必要とされました。

就農してから猛烈に働き続けて15年になります。

有機野菜を一年中切らさず宅配パックでお客さんにお届けすることのほかに、できるだけ多くの人に農業を知ってもらいたいと、有機農業の研修も行い、300人以上が研修にきました。そして、子育て中のお母さんたちや子どもたちにも是非、農園に農業体験に来てほしいとも考えています。
来てくれた人に、久保田さんがいつも伝えていることがあります。

「植物との接し方やお客さんとの関わり方、どんな気持ちで付き合うべきか、常に相手の立場に立って、何を望まれているかを考えると、自然に行動は決まってきますよ。結局、育てる人の気持ちが元気であること。コミュニケーションを大切にすることなんです」

虫倉山の中腹にあるまごころふれあい農園。自宅と並んで作業場もある。久保田さんの友達が協力してくれて描かれた、こんな文字が農園の目印

人も植物も等しい。
すべてに通じるという久保田さんの考え方は至ってシンプルですが、次世代へしっかりと受け継がれています。

実は、久保田さんの農園がある虫倉山には、昔から「怪我や病気をしないよう子どもたちを守ってくださるという山姥様がいた」という子育てにまつわる伝説がありました。

久保田さんがこの山を原点に選んだことに、なんとなく通じるものがあるように思えませんか?

春は久保田さんの麦畑から雪が残る北アルプスが一望できる

(2014/05/14掲載)

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会える場所 まごころ・ふれあい農園
長野市中条御山里8338
電話 026-268-3564

FAX 026-227-0493

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