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No.078

三浦

朋秋さん

木製家具修理・塗装キビクラフト

使い手の思いをくみ取り 家具の良さを引き出す

文・写真 Chieko Iwashima

飽きることのない修理の仕事

木製家具の修理・補修・塗装を専門にしているキビクラフトの三浦朋秋さん。

「まず同じ物はないし、未知の物もあって飽きなくて楽しいです。めんどうだなって思うことはいっぱいあって、それがおもしろいんです」

そうイキイキと語る表情からは、この仕事が好きで仕方がない、ということが伝わってきます。

「僕はなんでも出来そうな物は依頼を受けるんです。家具のなかでも色々な分野で専門の職人さんがいて、そういう職人さんには到底かなわないんですけど、僕のところで工夫してできそうなものは極力努力します」

三浦さんのそんなスタンスからか、一風変わった依頼も少なくありません。

「どこに頼んでいいのかわからないようなものが僕のところにきたりします。この前は競技用のライフルを塗りました。最初で最後だと思うんですけど、ああいう変わったものはテンション上がりますね」

深夜まで作業を続けることも珍しくない

家具修理という仕事との出会い

上田市出身の三浦さん。家具の修理という分野に足を踏み入れたのは、高校を卒業してすぐのことでした。

「なにか手に職つけたいなって思って、高校は東京の調理師学校に行ったんです。それが、どういうわけか家具のほうに…(笑)。近所に和家具の修理と販売をしているお店があって、おもしろそうだなと思ったんですよね」

高校卒業後、アンティーク和家具の修理・販売で知られる東京都世田谷区の家具店に入社。その後、家具のキズの補修を専門とする会社、塗装専門の会社でも働き、技術を学んでいきました。

「職場の先輩の仕事は常に見習ってやってきました。技術的にできないことや解らないことがあると悔しくて、いろいろ自分でも調べてやっていくうちにできることが増えていった感じですね。今もそうですし。だから独学みたいな部分も多いです」

常に創意工夫することを考えている三浦さんですが、ゼロから新しい物を作り出すよりも、すでにある物に手を加えることのほうが好きだと言います。

「若いときは”作るほう”に行こうと思ったこともあったんですけど、既存の物に手を加えることのほうがおもしろく感じるし、得意だなってどっかで気が付いたんですよね。新しい物を一から作ろうとするとすごく細かいところまで気になって頭パンクしちゃいそうで苦手なんです(笑)」

独立したのは、「たまたま機会に恵まれた」と振り返ります。

「ウェブデザインの仕事をしている兄が上田の家具屋さんのホームページを作っていて、そこが輸入してきた家具を直して売りたいということで、修理を頼まれたのがきっかけです」

現在、長野市三輪に工房を構え、5年目になりました。

「そろそろ、この工房も手狭になってきたので、もう少し広くて販売も一緒にできるような広い場所を探してるんですけど、いかんせん、においとか音とかクレームの種になりそうなことが多いので、なかなかなくて。そう考えると、ここに工房ができたのは奇跡的ですね。周りの人がいい人ばかりなのでありがたいです」

塗装し直した食器棚(左・修理前、右・修理後)。長野市西和田の「デコレットルームズ」で販売(2014年7月)

次へつながる修理

できるだけ予算を抑えてお客さんの希望を叶えられるようにしているという三浦さん。
何年、何十年と使ってもらえるようにするため、次に壊れたときに「きちんと修理ができるように修理する」ということにも心を配ります。

「修理がきくっていうのは、壊すこと無く分解できるかということもあるんですが、どうしても手間仕事である分、その物に対して修理の値段が釣り合わないということもあります。新しい物というより、安い予算で作られた物は使い込んだ良さが出ない素材であったり、メンテナンス性などは考えられていませんし、分解できないような作りで修理が難しいことが多いんです。そうなると修理の予算がかかってしまうので、いっそ買い換えるほうが安くなって、結果的に使い捨ての家具になっちゃうんですよね。量産品であったとしても手仕事の匂いが残っているような古い物は、今のような技術がまだなかったということもあると思うんですけど、修理できることも多いですし、使い続ける程に良さが出てくるんです」

そして、一番大切にしているのはお客さんの希望をくみ取ることです。

「古い物の良さを大事にしている人も多いので。ただ単にキレイに仕上げることは仕事としては分りやすいんですが、きれいにしすぎても元に戻せなくなるので、良さを見極めながらどの程度まできれいにしていいのか、慎重に聞くようにしています。自分とお客さんの感覚のズレがないようにすり合わせていく感じです」

「昔おばあちゃんが使っていて、ずっと物置にしまってあった物とか、家が取り壊しになったけど家具だけでもきれいに残したいとか、お客さんが家具を直そうとする理由はいろいろあります。出来上がりを見たお客さんに、これからずっと使っていきますねとか、子どもにも伝えていきますねって喜んでもらえたりしたら御の字ですね」

歴史や思い出が詰まった家具は、生活に深みや安心感を与えてくれるものだと思います。三浦さんは、そんな唯一無二の物の魅力をさらに引き出し、次の世代へと残していく役割も果たしているのだと思いました。

長野電鉄善光寺下駅近くにある工房。キビクラフトの「キビ」とは「木」と「美」からつけた

(2014/08/21掲載)

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電話 026‐217‐0984
ホームページ http://www.kibicraft.com/
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