八百屋「野菜のカネマツ」の流通担当であり、地域のリーダー的存在として親しまれる小山修也さん。
HUCOS協同建設株式会社の斉藤さんが語った「松代若者会議」の発起人でもある小山さんの思いを聞いた。
今回の取材中に、必ず誰からも名前が挙がったのが、減農薬・無農薬野菜や伝統野菜などを手がける「野菜のカネマツ」の流通担当・小山修也さん。元々、教員をめざして長野市内の商業高校で講師をしながら毎年教員採用試験を受けていたが、社長である母の都代さんから家業の相談を受けたことで、自営であればやり方次第で自分の思う教育活動もできると考え、学校を退職。妹の祐子さんと家業に加わった。
そんな小山さんが始めた活動のひとつが、松代特産、杏農家の高齢化により、困難となった摘果作業を地元・松代高校の生徒に手伝ってもらうもの。すっかり定着し、毎年実施されている。
「家業に携わるようになって地域を意識するようになりましたね。ここで商売をしていくなら、まちがにぎやかになり、仲間もいたほうがいいと感じたんです」
実は、地元を走る長野電鉄・屋代線の廃線も地元で商売をするまで知らなかった小山さん。すると、「夢空間 松代のまちと心を育てる会」理事長の香山篤美さんが、住民自治協議会やまちづくり研究会に誘ってくれた。
生産者の思いとともに消費者に届けている「野菜のカネマツ」。県内外にネットワークを広げ、200人を超える農家の農産物を取り扱っている。現在は社長である母のもと、兄弟3人で働く。写真右下は、2015年に地域の勉強会「佐久間象山塾」に松代若者会議が招かれた際のもの。
「参加すると、審議の中心にいるのは年配の人だと気付きました。そこで、若い人たちももっとこうした会議に参加できればいいと思ったんです」
そして住民自治協議会長の後押しもあり、2013年に地域の若者が集まって会議を実施。それを機に「松代若者会議」を立ち上げた。毎月一回、それぞれの思いを話したり、松代でのまちおこしの先輩を招いて講義をしたり。しかし、次第に各メンバーにさまざまな考えが生まれ、ひとつの形では動ききれなくなったことから、やりたい人がリーダーとなって賛同する仲間と活動をするものに変化したという。
「個人的には斉藤さんや甲志郎が企画する音楽のイベントが面白くなるといいですね。それに、智也さんや士文さんがいたりと芸術分野が面白いので、各自が動くことで新たな発見があるんじゃないかな」
それに伴い、会議の名称も「わっしょいまつしろ」に変わった。そんな小山さんが考えているのは、地域の伝統野菜について。
「この仕事を始めて、うちの強みは生産者さんたちと直接やりとりをさせてもらっていることだと感じました。それを生かすひとつとして『松代一本ねぎ』と『松代青大きうり』という地域の野菜を発掘して『信州の伝統野菜』の認定を受けたので、これを地域に根ざしていきたいですね」
県外出荷が主だが、現在は長野を代表するすき焼き料理店「すき亭」をはじめ市内の飲食店に卸し、少しずつ認知が広がっている。それによって生産者にも喜んでもらうことが小山さんの願いだ。
「この仕事を5年やってきて、大事なのは作り手の思いだと感じました。その思いを共有するためにも、生産者と向き合い、飲食店の注文にも細かく対応したりと、ほかの八百屋にはできないことをしているのはやりがいですね」
また、今は弟の有左さんも一緒に働くようになり、小山さんが伝統野菜、有左さんが有機野菜の流通と体にやさしい養生弁当の制作・配達を担当。祐子さんが店長となり、兄弟3人で力を合わせている。
「いろいろやってきたなかで、まちづくりの難しさを感じました。そこで、専門的な形は年配の人たちがつくり、自分たちはその中でつながり合うことが大事だと思っています。つながりさえあれば面白いことができ、仲間は増える。それにより子どもたちが面白いと思えるまちにしたいし、そのまちで自分も楽しい仕事をしていきたいですね」
生産者の思いとともに消費者に届けている「野菜のカネマツ」。県内外にネットワークを広げ、200人を超える農家の農産物を取り扱っている。現在は社長である母のもと、兄弟3人で働く。写真右下は、2015年に地域の勉強会「佐久間象山塾」に松代若者会議が招かれた際のもの。
上の野菜は松代青大きうり。下が松代一本ねぎ。元々地域で古くから作られていたものを小山さんが伝統野菜に申請し、2011年に認定された。
profile
松代出身。教員をめざし県外の大学に進学。卒業後、長野商業高校と母校・松代高校の講師を経て、家業へ。野菜の卸し先飲食店から希望があれば生産者の畑を案内するなど、独自の販売方法を確立。現在は母が共同代表を務める組織「NAGANO農と食の会」で市内の保育園の給食に無農薬野菜を卸すなどの活動も展開。
長野市松代町松代583
TEL 026‐278-1501