娘の誕生を機に、妻の実家がある自然豊かな松代で育てたいと移住した加藤士文さん。日本人の父とイタリア人の母のハーフとして東京で生まれ、自分のアイデンティティを見つけられないまま18歳で渡米。2年間アメリカで暮らした経歴をもつ。帰国後、本格的に音楽や絵の創作活動を始動した士文さんにとって、松代の暮らしは心地がいいそうだ。
「シンプルで静かで自然が多くていいですよ。東京では描くことで自然やインディアンのスピリットを身近に感じようとしていたけど、こっちは自然が近いから以前よりガツガツ描かなくなったし、気持ちが満たされているよね。俺は定住タイプではなく嫌だと思ったらすかさずどこかに行っちゃうけど、今はすごくいいです」
そんな松代では、インバウンド向け冊子や地図制作の仕事をしたり、鶴田さんとドラム×ライブペイントのコラボ企画を行ったり。そんななか、特に最近、精力的に取り組んでいるのが音楽と踊りの融合だ。もともと東日本大震災前に龍(ドラゴン)の夢を見て以来、龍を題材に絵を描き続けてきた士文さん。松代ではさらに衣食住への感謝を表すため、その魂の表現方法として、松代(まつしろ)=真っ白の獅子が思い浮かんだという。その白獅子の踊りと音楽演奏を、松代や須坂の仲間と各地で行っている。
「題材と大体のイメージは決めるけど、あとは自由に魂のふれあいを絵や踊りや言葉で表現します。それが面白い。本気の魂がなかったら、どの活動にも意味はないじゃん」
こうして、松代と周辺地域をつなげるパイプ役も担っているという士文さん。その活動はまだまだ進化していく。
ドラムレッスンなども行っている加藤さん。ドラムと踊りの融合は、須坂市・萬龍寺の住職でドイツ人とのハーフである兄とダンサーの弟とともに始めたもので、「魔空跳舞(マクトゥーブ)」というユニット名で活動している。
profile
東京出身。幼少期からドラムを始め、米国留学期間中にアメリカンインディアンの生き方と深く共鳴し、自身のアイデンティティの根幹を見つける。1998年、帰国後、東京でアーティスト集団「風の人」結成を機に本格的に音楽と絵と詩の創作活動を始動。パフォーマンスの中で日本で初めて「ライブペイント」という言葉を使い始める。2014年、松代に移住。