No.069
池内
宏明さん
小諸高等学校音楽科主任教諭
開幕を告げる歌声を生む
文・写真 Yuuki Niitsu
開会式のもう一つの見どころ
いよいよ夏本番! 夏といえば甲子園の季節です。信州でも7月12日(土)に87チームが松本市野球場に集合し、第96回全国高等学校野球選手権長野大会の開会式が行われました。天気にも恵まれ、選手宣誓と同時に球児たちの熱い夏が始まりました。
そしてこの長野県大会の開会式では、もう一つの見所があります。それは毎年、小諸高等学校の音楽科の生徒が独唱する甲子園のテーマソング「栄冠は君に輝く」です。
「第85回目の長野県大会の時に、当時の高校野球連盟の事務局が小諸ということもあり、うちの音楽科の先生と交流があったんです。高校野球に何か新しい風を吹き込みたいと話した中で、それなら県内唯一のうちの音楽科の生徒に開会式で歌ってもらおう、という流れになったのがきっかけでなんです」
こう話すのは、長野市在住の小諸高等学校音楽科教主任教諭の池内宏明さんです。
長野県内唯一の音楽科。専用の音楽棟には最先端の設備が整っている (写真提供:小諸高等学校)
今年の歌姫は・・・・・・
毎年、開会式に歌う生徒をオーディションで選ばれます。今年は男子1名を含む8名がエントリーし、高校野球連盟関係者、うちの音楽科の教員やその他の職員を含む20数名が審査をし投票で決めました。
そして今年の歌姫に選ばれたのが、生徒会長でもある音楽科3年生の増田彩音さんです。
「アカペラで独唱するため、度胸もさることながら音程や響きも自分で作ります。メンタル的な部分、あとは歌唱力も評価されて彼女が選ばれました」
さぞかし、当日まで「栄冠は君に輝く」を猛練習をしてきたのではと思い池内先生に聞いてみると
「この歌だけを猛練習というわけにいかないんですよ。それ以外にも音楽科の生徒は、毎日授業や課題がありますから、その合間を見つけて数回練習しただけだと思います」
との意外な答え。まさに歌の申し子は”天性の感覚で歌う”ということでしょうか。
開会式当日には学校に「とてもいい歌声でした」「感動した」などテレビ中継を見ていた視聴者からの反響がたくさんあり、それが全てを物語っているということでしょう。
この経験が必ず本人の人生に活きるはずと池内先生は願います。
今年の歌姫の増田さん。生徒会長もやっている彼女は大舞台でも物おじせず堂々と歌い切る
県内唯一の音楽科として
県内唯一の音楽科で主任を務める池内先生は、なんと小学校1年生からピアノを演奏してきた生粋のピアノマン。
「ピアノの魅力は一人で音楽を操れることですかね」
とその魅力を語ります。
一般的にピアニスト=手先が器用というイメージがあると思いますが、池内先生は手先が不器用で裁縫なども苦手だといいます。
意外な一言の後に、
「不器用ですが、農業はやりますよ!」
という信州人らしい一言が親近感を漂わせる池内先生。
今年で20年目を迎える小諸高等学校音楽科は、現在1年生から3年生まで男女合わせて90名ほどが在籍しており、声楽、ピアノ、弦楽器、管楽器、電子オルガンとコースが分かれています。
「長野県にいながら関東の音楽大学の先生を呼んで、レッスンを無料で受けられるんですよ。専門の音楽棟があるの、うちだけなんです」
週の3分の1は音楽の授業という充実したカリキュラムと最先端の施設。この学び舎で腕を磨いた生徒だからこそ、緊張感張り詰める大勢の球児たちの前でも歌えるのだといいます。
後日、開会式で独唱した増田さんに当日の感想を聞きました。
「開会式では、大勢の人がいたので緊張しましたが、選手の皆さんに自分の思いを伝えられた歌になったと思います。この経験を活かし将来、学校の先生になって生徒たちと一緒に音楽を創っていければ最高だなと思います」
是非、母校で信州の音楽を盛り上げてほしいと池内先生は望んでいます。
帰り際、すれ違う音楽科の生徒さん達から掛けてもらった「こんにちわ」
という挨拶でさえ美声で驚きました。
子どもの頃からガラガラ声で「アヒルのガーガーちゃん」というあだ名を付けられていた編集部・新津にとっては、まさに高嶺の花。
来年はどんな生徒が球児たちの熱き闘いの火蓋を開けるのか楽しみでなりません。
音楽科には電子オルガンも完備されている
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会える場所 | 小諸高等学校音楽科 長野県小諸市東雲4-1-1 電話 0267-22-1696 ホームページ http://www.nagano-c.ed.jp/komorohs/ongakuka/index.html |
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