No.386
中村
早希さん
長野市権堂イーストプラザ 市民交流センター センター長
「市民」という共通項でゆるやかにつながる場に。
文・写真 小林 拓水
株式会社まちづくり長野が指定管理者として管理・運営する公共施設「長野市権堂イーストプラザ 市民交流センター(以下、市民交流センター)」。
この場所では、元気に遊ぶ子どもやその様子を見守る母親たち、ハンモックで談笑する若者、趣味を楽しむシニアサークルなど、多くの人が思い思いの時間を過ごしています。
センター長として、この施設の運営を担っているのが中村早希さん。長野県信濃町で生まれ育ち、都内の児童館に勤務後Uターンして、2017年4月1日よりこの仕事に就きました。中村さんに話を聞いたのは、就任してからわずか3ヶ月あまりの頃。はやくもこの場所には変化が起きていました。
地元への想いと運命が交差したUターン
—中村さんが今の仕事に至るまでのお話を聞かせてください。
大学進学を機に地元の長野県を離れて上京し、都内の大学で社会福祉を学びました。在学中に、中学校のカウンセリングルームで不登校の子どもと面談をするというボランティア活動に参加して。
そこで話をしていたある生徒が「児童館みたいでここは来やすいな」と言ってくれたんです。当時は「児童館」って存在を知らなくて、そんなに安心感を与える場所ってなんなんだと調べていくうちに、自分もそこで働きたいと思ったんです。
そして、大学卒業後は都内の児童館に就職しました。働いてからは、施設の管理以外にも、赤ちゃんとその母親向けのイベントを企画したりとか、地域のお祭りに参加したりとか、コミュニティを広げていくような取り組みもたくさんしましたね。仕事は本当に充実していました。
—上京して、働きたい仕事に出会えて、充実した日々を過ごしていたなかで、長野に戻ろうと決めたのには、どういった背景があったのですか。
はじめの頃は、都会はキラキラしていて街を歩くことが楽しかったんですけど、しばらくすると休日は山とか川へ自然と足が向くようになっていて。「私の心は長野を欲している…!」とふと気づいちゃったんです(笑)。
ちょうどその頃、都内に新たにできる児童館の館長にならないかという誘いがあって、これからの進路を考えたときに「やっぱり長野への気持ちを大切にしたい!」と思い至り、Uターンを決意しました。
—長野への想いがあふれてUターンを決意されたわけですが、そこから市民交流センターのセンター長に就任されるまでにはどんなストーリーがあったのでしょうか。
Uターンしたら地域活性に関わる仕事をしたいと思っていました。そのなかで目に入ったのが、今の施設の運営会社でもある「株式会社まちづくり長野」。この会社名なら間違いないと思って、すぐに求人に応募しました。
でも、そのとき募集していたのは経理の仕事。経験も知識もないので、その枠では不採用。
ただおもしろいことに、後日会社が長野市からの委託を受けて市民交流センターの管理団体になることが決まったんです。そこで「こういう施設を運営することになったんですけど、もしよかったらどうですか」と改めて電話をくれて。「これは運命かもしれない」と思って、ありがたく話を受けることにしました。
施設に賑わいをもたらすために動き続ける
—2017年4月にセンター長に就任してからは、具体的にどんな取り組みをしたのでしょうか。
私が就任した当初は、どちらかというと一人で訪れる方が多かったんですよね。でも、「市民交流センター」という名もついてますし、せっかくならば訪れる方同士が交流できるような場にしたくて。
児童館での経験を活かして、まず取り組んだのは親子の交流。キッズスペースを2倍近くに拡大させて、親と子どもが思いっきり遊べるようにしたり、地域の親子同士で横のつながりもつくろうと子ども服をシェアできるスペースを設けました。
ほかにも、音楽ライブを企画したりマルシェを開催したり、この場に人が集まってもらうために自分たちができることはどんどん発信していこうと決めて取り組んでいったんです。そうした行動を重ねていたら、徐々に「賑やかになったね、明るくなったね」と言ってくださる方が増えてきました。そうおっしゃっていただけるとやはり嬉しいし、励みになりますね。
さまざまな目的や人を受けとめる“器”に
—着実に変化が起きつつある市民交流センター。最後に、中村さんが目指している場づくりについて聞かせてください。
この空間では、仲間同士の交流はもちろん、異なるコミュニティ間の交流も生まれているんです。
たとえば、ある日お年寄りの方が将棋を指しているのを、近くで子どもが興味深そうに見ていたんですけど、しばらくしたらお年寄りの方と一緒になって将棋を楽しんでいたんです。
そういったことが自然発生的に起こっているのを見るとやはり嬉しいですね。
市民交流センターは立場も、年齢も関係なく、いろんな人が自由に時を過ごせて、交わることができる場。これからもさまざまな目的、さまざまな人を受けとめる“器”のような存在でありたいなと思いますね。
私が差し出せるのは、小さな子どもとそのお母さん、思春期の中高生やお年寄りまで、さまざまな立場の人と関わるなかで自分の中に蓄えられたいろんな人の視点。その財産を活かして、ここに来る人たちが、自分の目的や興味関心に従って自由に時間を過ごし、それをお互い尊重し合える空間をつくっていきたいと思います。
中村さんが目指しているのは、年齢や肩書きは違っても「市民」という共通項でゆるやかにつながる場。
新たなアイデアを次々に実行するフットワークの軽さと、さまざまな立場の人に寄り添える豊富な視点で、どんな人にも居心地のいい空間をつくっていきます。
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会える場所 | 長野市権堂イーストプラザ 市民交流センター 〒380-0833 長野市大字鶴賀権堂町2201番地20 電話 026-234-2906 ホームページ http://gondo-eastplaza.net/ |
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