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わくわく・共感できる長野の元気情報を配信します!

ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.355

新野彩季さん

石川雪姫さん

リュージュ選手

北京オリンピックを目指して
リュージュに打ち込む

文・写真 宮島悦雄

スパイラルの星!

2016年12月23日(金・祝)、スパイラル(長野市ボブスレー・リュージュパーク)で開催された第50回全日本リュージュ選手権大会。氷保護のためにシートで覆われたコースを小さなそりがまるで弾丸のように滑り下ります。かすかに聞こえるゴーという滑走音が大きくなったかと思うと、コースの壁面上部に張り付くような姿勢で一気に視界から消えていきます。

ボブスレーが「氷上のF1」なら、リュージュはさしずめ「氷上のオートバイレース」。とても競技中の写真なんて撮れません。そこでスパイラルの職員で、趣味で競技写真を撮影している林正信さんに、過去の写真を借りることにしました。

この大会の女子1人乗りで優勝したのが北部中学3年生の新野彩季(さいき)選手、2位が裾花中学2年生の石川雪姫(ゆき)選手でした。長野市の中学生がワンツーフィニッシュを果たしたことになりますが、出場選手はこの2人だけ。かつて篠ノ井出身で、トリノ、バンクーバー五輪に連続出場した保科(旧姓・原田)窓香選手が日本の女子リュージュ界をけん引していましたが、新野、石川両選手はポスト保科世代として期待されています。

第50回全日本リュージュ選手権大会女子一人乗りの表彰式(2016年12月23日)。優勝した新野彩季選手(右)と2位の石川雪姫選手。17年1月22日には、JOCジュニアオリンピック(スパイラル)で北海道のジュニア選手と対決する

“氷上のモトGP”リュージュ

出場選手が2人だけというのは、それだけ競技人口が少ないということにほかなりません。では、リュージュとはどんな競技なのでしょうか。

よく似た競技にスケルトンがありますが、スケルトンは助走区間でそりを押して走り、そのまま腹這いになって頭から滑ります。

これに対してリュージュははじめからそり上に座り、スタートバーを両手で握って、バーを引いた勢いで飛び出して、両手で氷をひっかくように漕いでスタートダッシュ。勢いがついたらそのまま仰向けに寝そべり、足から滑ります。滑走中は首を少し上げて前方を見て、刃の先端の湾曲した部分(クーヘ)を足首で操作してコントロール。スパイラルのリュージュ女子コースは1,194mで、大小14のカーブ(男子は1,326m、15カーブ)が連続します。そこをわずか50秒余で滑り降りるのですから最高時速は120㎞を超え、コントロールを失敗すれば転倒することもあります。

競技では2回(オリンピックでは4回)滑って合計タイムで速さを競いますが、タイムは五輪競技では唯一1000分の1秒まで計測。そのタイム差を距離に換算するとわずか3.3㎝。スタート時の手の力、微妙なコース取りが致命的な差になって表れます。

体重が重いほうが有利なため、女子一人乗りでは10㎏まで補助の重りをつけることができます。

スタート直後の新野選手。スパイラルは安全なコース設計で転倒の心配は少ないが、ノルウェー合宿では初めて転倒を経験したという(競技写真:林 正信さん撮影)

「楽しくって練習中についはしゃいじゃう」新野彩季選手

新野彩季選手がリュージュに出合ったのは小学3年のとき。浅川小学校の体験会でした。

「楽しかった! 滑ったのは最後のカーブ3つだけで、スピードは時速40㎞ぐらいになったと思います。もっと滑りたくて始めたいと言ったら、親からは始めるならオリンピックを目指せと言われました」
 
と笑う新野選手。遊園地の絶叫マシンも大好きで、「遅くて長いジェットコースターは苦手。速くて短いのが好き」と言いますから、根っからの“弾丸女子”なのでしょう。最初はただスピード感が楽しかったようです。

スパイラルがオープンしている12~1月の2か月間は、ほぼ毎週末コースで練習し、オフシーズンはスタート時の決め手となる腕や背筋の筋力をつけたり、体幹を鍛えるトレーニングをしています。家はスパイラルから「車で2分、徒歩10分」という恵まれた環境です。

2016年から強化指定選手になり、2016年10~11月にはリレハンメル(ノルウェー)で行われた合宿に参加、2017年3月にはアメリカでの合宿にも参加します。
 練習でつらいことは―と聞くと、

「私、真面目にできないんです。リュージュをしているとうれしくなって、ついついはしゃいじゃう。楽しくて仕方ない。それでコーチからよく叱られます。筋トレや体幹トレーニングは、すぐ飽きる。地味ですが、これをしないとオリンピックは目指せないので、今はやるしかないと思っています」

目標としているのは保科窓香さん。保科さんが2014年全日本選手権に出場したときは一人だけの出場で、最速51秒456。2015全日本は新野選手一人の出場で、最速55秒127。そして2016は最速53秒989。1年間で1秒以上保科選手に近づいたことになります。

「もっともっと速くなりたい。あと3秒縮められれば窓香さんに追いつく。そのために今年からウエイトトレーニングを始めて、体力をつけて最終的には70㎏を目指します」

まだまだ成長途上とはいえ、「そんなになったら、いろいろなものを諦めなければいけないよ」と言うと、「正直なりたくないけど、ならないと勝てない、勝ちたい!」と言って笑い飛ばしました。

スパイラルを滑り降りる石川選手。全日本の記録を時速に換算すると約111㎞。トップ選手の時速は120㎞を超える(競技写真:林 正信さん撮影)

20歳で迎える北京オリンピック出場を目指す!

2014保科選手、2015新野選手とただ一人の出場が続いた全日本リュージュ選手権。2016、ようやく2人目の選手として登場したのが石川選手です。中学2年ですが、新野選手と同じ2002年生まれの14歳(2017年1月現在)。小学4年夏のローラーリュージュの体験会に参加して、リュージュの魅力にはまりました。初出場となる今大会の成績は最速55秒030。

「だんだん彩季ちゃんに近づいてきています。来季には彩季ちゃんを抜かして、強化指定選手になりたい」

「まだ雪姫ちゃんには負けないよ」と笑いながら応じる新野選手。同じ夢を追う2人の会話からは、常に笑いがはじける女子中学生の素顔が見えてきます。

石川選手は、リュージュをしていることをクラスメートには明かしていませんでした。ところが先生が、石川選手がリュージュの合宿に参加することをクラスで発表すると、その反応は、「リュージュ? 何それ?」。

「あれはちょっとへこみました。北海道では遊びでリュージュを滑る子がいるって聞いたけど、長野もそうなってくれたらいいのに。リュージュは極端に選手が少ない! こんなに楽しいのにどうして少ないのか、わかんない。ワールドカップをテレビで放映するとか、もう少しメジャーになってほしい」

石川選手はそう打ち明けます。この悩みは新野選手も同じです。

ちょうど20歳で迎える北京オリンピック。そこでいい成績が上げられれば、日本でもリュージュ人気が高まる――そのためには日本代表として国際大会のネーションカップ、ワールドカップに出場して世界に認められること。

がんばれ新野選手! がんばれ石川選手!

どんな格好で滑るか、笑いをこらえて制服のまま新野選手が見せてくれた。「リュージュ」はフランス語で「木のそり」の意味。女子は最大10㎏までの重りをつけることができる

《リュージュに関する問い合わせ先》

●長野県ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟(NBLSF)
www.nagano-blsf.com/
TEL 026-252-7670

●日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟(JBLSF)
www.jblsf.jp/
TEL 026-235-6260

●長野市ボブスレー・リュージュパーク(スパイラル)
長野市中曽根3700
TEL 026-239-3077
www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/sports/15156.html

(2017/01/20掲載)

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