No.027
徳武
優治さん
戸隠チビッ子忍者村 最高齢忍者兼社長
門下生10万人の戸隠流忍術を
地元で広める
文・写真 Takashi Anzai
戸隠(とがくれ)流忍術を知っていますか?
長野市戸隠の修験道がルーツとされる”現存する”忍術です。世界中に支部道場を持ち、欧米を中心に約10万人の門下生がいます。CIAやFBIなどの訓練でも取り入れられているそうです。
その戸隠流忍術の素晴らしさを広く知ってもらおうとできたのが、「戸隠チビッ子忍者村」。子ども向けではありますが、きちんと基礎を学んだ戸隠流忍術4段の徳武優治さんが運営しています。
そして66歳の徳武さんは忍者ショーの最年長忍者でもあります。
約35年前、戸隠に創設された「戸隠流忍法資料館」。当時30歳を過ぎた徳武さんは展示の手伝いをしているうちに、忍者の魅力に取りつかれます。
「忍者というのは実はよく分かっていない、謎が多いところがいい。侍とか農民とかはちゃんと歴史があるんだけれども、忍者というのは本当にいたのかさえ分からない。もしかしたら創作のものかもしれない。明治になって講談に出てきたりしたものもいっぱいあるしね。技術は残っているし、文献も残っているけれども、それを全て出来る人は誰もいないんだよ」
一子相伝の34代目・初見良昭(まさあき)氏が開く、千葉県の武神館に弟子入りした徳武さん。商売の傍らだったため、門弟に戸隠まで来てもらって、4段まで取得します。
「それまで運動は何もやっていなかったから大変だったね。他の人はだいだい20代だから。1、2回来て辞めた人もいっぱいいるよ。5段からは昇段試験があるんだけど、4段までは修行した年数で取れるんだ。おれは4段だけど、あんまりできない方の4段だね(笑)」
当時、旅館を経営していた徳武さん。本業の傍ら、忍者村を設立し、毎年毎年アトラクションを増やしてきました。現在は、からくり屋敷、水ぐもの術を体験できる池、森の中のアスレチックなどが楽しめるほか、手裏剣大会などのイベントも開催し、多くの子どもたちが訪れています。
中でも長年、続けているのが忍者ショー。
徳武さんは十数年にわたり、ヒーロー役を演じてきましたが、今から6年前、60歳を過ぎてから悪役に回ります。
「もう無理だよね、60まで頑張ったもの。ヒーローはかっこよくないとね(笑)。冬は営業していないから、春になるちょっと前から練習しなければならないんだけど、もう去年の忘れちゃっているから、体も動かないし。普段は訓練していないから大変なんだよ。あちこち痛くなって(笑)」
そう話し、からからと笑う徳武さん。
「学んだ忍術はショーに生かされているよ。ショーには体術も含まれている。自己流でやってしまうと怪我してしまうからね。基礎は戸隠流忍術をきちんと学ぶ」
忍者ショーは月1回のペース。戸隠流忍術の演武をもとに徳武さんがアレンジしている
戸隠流忍術の特長は、体術を基礎としていること。基本的には武器は使いません。そんな戸隠流の魅力を徳武さんは生き生きとした表情でこう語ります。
「戸隠流は基本的に身を守る技。攻撃ではないんだね。そういう技は出来るだけ使わないに越したことはない。海外の門弟は身を守るための実戦で使っているという人が多いみたい。軍人さんとかね」
忍者として最年長の徳武さん。5年ほど前まで少年たちを集めた道場を開いていました。多いときで1日300人が戸隠流の基礎を学んだといいます。しかし、徳武さんの体力の衰えにより最近は開いていません。お子さんが娘さんで、後継者がいないと寂しそうに話していました。
アスレチックで元気よく遊ぶ子どもたち
しかし、体力は衰えても忍者への情熱はまったく冷めていません。
2013年には、昭和初期ごろからの忍者グッズを集めた「忍宝館」をオープン。赤影やハットリくんなどおなじみのキャラクターの漫画やフィギュア、ポスターなど3千点が所せましと並んでいます。
「忍びというものを残したい。私にとっての日本人とは侍と忍者なんだよね。だから末代まで残したい。それを伝えていくための施設だね、ここは」
泣き虫の子が、修行を終えると強くなって帰っていく、そんな姿を何度も目にしたという徳武さん。そのたびにこのチビッ子忍者村をやっていてよかったと心から思ったそうです。
「子どもたちには自然の中で遊んでもらいたい。今は子どもたちが自然の中で遊ぶことが少なくなってしまった。落ちて怪我するのを心配するのも分かるけれど、落ちて痛いことを覚えることが大事。怪我しなさい。転んで足をすりむきなさい。そうすると他人の痛みも分かる子が育ってくるから」
新旧織り交ぜ、忍者にかかわるあらゆるグッズが集められた「忍法館」
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会える場所 | 戸隠チビッ子忍者村 長野市戸隠3193 電話 026-254-3723 ホームページ http://www.ninjamura.com/ |
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