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No.318

戸田

千登美さん

公益財団法人長野県長寿社会開発センター主任シニア活動推進コーディネーター

いくつになっても笑顔で元気!
誰もが輝ける社会を目指して

文・写真 合津幸

超高齢化社会の今、社会が一丸となって解決すべき課題のひとつに、シニアの居場所づくりや社会参加推進が挙げられます。そこで重要な役割を果たしているのが、あらゆる情報を収集・集約し、シニアと関係各機関や団体を結びつけるコーディネーターです。彼らはどんな想いを抱え、どのような活動をしているのでしょうか。

人生二毛作社会の実現を目指して

平成25年3月、県は長野県総合5カ年計画を策定し、計画の一部として「人生二毛作社会」の実現を掲げました。これは、高齢者が退職後に新たな人生の目的や意義を見出し、元気に生きがいを感じながら活躍できる社会づくりを意味します。

さらに県は、シニアやシルバー世代の就業、ボランティア活動、健康づくりおよび仲間づくりなど、無理なくその人らしく社会参加を叶えるために「人生二毛作推進県民会議」を設置。既存の枠組みやジャンル分けを超えたつながりを生み出す、専門コーディネーターの配置が決議されました。こうして任命されたコーディネーターの1人が、今回お話を聞かせてくださった戸田千登美さんです。

「私は平成26年度から現職である長野支部担当の主任シニア活動推進コーディネーターを務めさせていただいています。それ以前は社会福祉協議会でボランティアコーディネーター等を務めていました。人と人を結び付けたり、想いと想いをつなぐお手伝いをしたりと、長くそういう役割を担ってきた気がします」

長野県長寿社会開発センター本部は「長野県社会福祉総合センター」の5階にあり、誰でも自由に訪ねられる

ちなみに、平成28年の3月現在のシニア活動推進コーディネーターの数は、戸田さんを含め3名。しかも3名はそれぞれ別の支部に所属しているそうです。

「初年度はこちらから声を掛けないと何も始まらないし、何もわからない状況だったので、県内10支部すべてにコーディネーターを配置できたら…と、思うこともありました(苦笑)。でも今は、2年間の地道な呼び掛けやネットワークづくりの成果が表れ始めていますし、4月にはコーディネーターが3名増えて6名になりますから、より良い活動ができると思っています」

同時に、実際にシニア・シルバー世代と接してみて、彼らの知恵や技術の高さ、学ぶ意欲や役に立ちたいという意志、前向きかつ貪欲に生きる姿勢に圧倒されているそうです。

「なかなか一歩が踏み出せなかった方でも、ちょっとしたきっかけや後押しを得られれば必ず活躍できるんです。そういう姿をたくさん見てきました」

3月1日に行われた「2016 長野地域タウンミーティング」。活躍の場を求めるシニアとそんなシニアを求める諸団体が集結、多くの出会いをもたらした

人は誰もが"力"を持っている

シニア・シルバー世代の方々に刺激をもらい、エネルギーあふれる姿に自身の背中を押される日々。しかし以前から戸田さんは、人間が本来持っている「力」を強く信じてきました。

「ボランティアコーディネーターをしていた頃のことですが、ある全盲の方がボランティアをやりたいと訪ねてきてくださったんです。でもその方は後天的に失明したという状況にやり場のない怒りを抱えていて、社会や周囲の人に対しても怒りの感情しかないように見えました」

そこで戸田さんは無理にボランティア活動に参加してもらうのではなく、その方が過去の経験を自由に話し、他の人と記憶や思い出を共有する場を設けるようにしました。まずご本人が少しでも楽しいと感じられる時間を増やしてもらうべきだと考えたからです。すると、関わる方々のおかげで少しずつ周囲と打ち解け、やがて心から信頼し合える仲間ができたのだとか。

タウンミーティングで参加者に声を掛ける戸田さん。「シニアの方々がどのような生き方を望んでいるのか、しっかり耳を傾けてゆきたいです」

「その後は懸命に勉強もなさって、鍼灸師の資格まで取得されました。あれほど怒りに心を支配されていた方が道を切り拓き、新たな人生を送れるまでになったんです。すっかり変わられて、笑顔で仲間と話されている穏やかで幸せそうな姿を目にした時、『人ってこんなにも変われるものなのだ』と、驚きと感動を覚えました」

その時から戸田さんは、人には必ずある種の力がある! と、信じられるようになったそうです。

自分を変える力、前を向き成長する力、人と協調する力。戸田さんがこれまで目にしてきた力というのは、人それぞれ異なるベクトルだったに違いありません。それでも、その人らしく笑顔で生きるために必要な力という点では必ず共通していました。

「シニアやシルバー世代の方と関わるようになって感じたのは、年齢を問わず、人は個性や能力を発揮し輝ける可能性を秘めているということです。そのためのプラットホームがこのセンターであり、細かな仕組みづくりや意識改革を促すのが私たちコーディネーターだと思っています」

シニアの方々の勤勉さや向上心の強さにハッとされられる場面も多い。タウンミーティングでも熱心にメモを取る姿が見られた

コーディネート力の向上を

昔遊びの方法や暮らしの知恵を共有する、障害を持った方に付き添う、学校の授業に参加する。シニア世代が『そんなことが喜ばれるの? 』とビックリするようなことが、実は経験豊かな彼らだからこそ果たせる使命だったりします。

戸田さんはまずその事実に気付いてもらえるように、体験を通じた気付きと自信を得てもらう場づくりと意識改革を進めています。

また、プロにくわえて、地域のシニアを含むさまざまな立場・年齢の方にこそコーディネーター役を担ってもらいたいとも考えているそうです。

「趣味の集まりや地域の会合でリーダー役を務めている方や地域のワーカーさんなど、自然と情報が集まったり人脈をお持ちだったり、周囲に声を掛けやすい方っていますよね? そういう方が意識してくださるだけでも、情報や人がつながるものなんです」

趣味や興味・関心から地域貢献や居場所づくりを叶えたり、コーディネーター役を担ってくれるようになる方も。写真はタウンミーティングでの一コマ

そうした想いから、戸田さんは社会福祉協議会時代の仲間などの有志メンバーと共に「わいがやネット」なる学習会を立ち上げました。月に一度、実際に見聞きした事例や課題を持ち寄り、意見・情報交換を行いながら策を検討して自らコーディネート力の向上に努めているのです。

一方、地域住民の皆さんには日頃からシニアとの関わりを意識し、超高齢化社会への理解とその社会の一員である自覚を深めてほしいと願っています。

「それらの前提として、私たち専門家は日々知識や情報を増やしつつ、多方面に積極的なアプローチを試みて、シニアとシニアの力を必要としている皆さんに頼られる存在であるために努力し続けます! 」

人の出会いや想いの重なりを、「まるで化学反応のよう」と表現する戸田さん。特にシニア世代の方々は、ピタッとはまれば想像以上のパワーで人を動かし、驚かされることも少なくないそうです。

戸田さんが信じる人の力やシニアのエネルギーが発揮されれば、マイナスイメージが先行する「超高齢化社会」もまた、希望に満ちたものとして捉えられる気がします。

全国長寿社会開発センター発行の『PORTA』は本部での閲覧が可能。また、戸田さんらが手掛ける『信州りらく』は4・7・10・1月発行、平安堂長野店・若槻店・東和田店で販売

(2016/03/24掲載)

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会える場所 公益財団法人 長野県長寿社会開発センター 本部
長野市若里7-1-7 (長野県社会福祉総合センター 5階)
電話 026-226-3741
ホームページ http://www.nicesenior.or.jp/

★ 平成28年度長野県シニア大学(上小学部、諏訪学部、伊那学部、飯伊学部、木曽学部、
松本学部、大北学部、長野学部、北信学部)では、学生の追加募集を行っています。2年間に1日4時間 計15日間で、多彩な講師・ゲストを招いての講義やさまざまなフィールドワークにより学びます。シニア大学の内容については、下記URLから詳細をご覧ください。
http://www.nicesenior.or.jp/daigaku/index.html

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