No.258
宮入
修さん
平成27年度内篠ノ井祗園祭執行委員会 内堀地区執行委員長
篠ノ井駅前通りに熱狂を生み、
地域住民の絆を強める大獅子
文・写真 くぼたかおり
大正3(1914)年、布施村が町制を施行した記念にはじまった「篠ノ井祗園祭」は、芝澤区と内堀区の2つの区が協力して開いています。時代とともに人口が減少する中、100年以上もの歴史を誇る篠ノ井地域最大のお祭りです。
昔の篠ノ井のまちは、どんな姿だったのか
明治21(1888)年に信越線篠ノ井駅が開業。翌22(1889)年に布施高田・布施五明が合併して布施村になりました。篠ノ井祗園祭が始まった大正3(1914)年、町制を施行して篠ノ井町になりました。当時は片倉製糸場があったことから養蚕業が盛んで、芝澤区は善光寺街道があったことから古くからにぎわい、内堀区は篠ノ井駅の開業とともに栄えていきました。
篠ノ井祗園祭に関する史実はほとんど無く、町民によって口伝で残されてきました。そのはじまりは、二葉組合を中心に商店の好景気や町民たちの無病息災を祈念したのではないかといわれています。始められた当時は大獅子ではなく、船や稚児行列が登場していたことから、近隣の神社で行われていた式年遷宮祭を参考にしたといわれています。それから2年後の大正5(1916)年、初代の大獅子が登場しました。
今年が年番で執行委員長を務める宮入修さんが小学生だった当時、祭の開催日は7月10、15・16日と決まっていました。祭がある両地区の子どもたちは、開催日になると半休になったそうです。
「私が小学生のころ、篠ノ井はとてもにぎわいがある街でした。この祭は商店を中心に始めた経緯があるので、当時は獅子に入れるのが商店の子どもたちが中心でした。後に6年生が担当するように変わっていったけど、毎年入りたくてうずうずしていました。後、祭がある日は芝澤・内堀地区だけ早退が公認されていました。それは優越感でしたね」
競演の際に激しく獅子頭をぶつけるため、修繕しながら大切に使う。内堀地区の大獅子は現在3代目
祭に参加するのは当たり前。みんなが役割を持って練習
篠ノ井祗園祭の準備は、例年5月から始まります。芝澤・内堀の両地区が交替で担当することが決まっていて、今年は内堀区が年番でした。
宮入さんは大学進学とともに東京へ行き、10年ほど生活をしました。その後親の世話もあって長野に戻り、電子部品の加工関連の会社に就職。毎年この祭に参加していましたが、今年初めて執行委員長を務めました。
「執行委員長は祭の準備から当日までの流れを作り、スムースに進行できるよう取りまとめるのが仕事です。私だけでなく、地区にいるほとんどの人が何かしらの役割を持ちます。7月に入ると、毎日のように公民館に人が集まって、獅子頭の修繕から大獅子の舞方、お囃子の練習などをしていますね。祭自体は特別なものですが、小さなころから祭をすることが当たり前になっているので『また今年も祭りの時期がきたな』という気持ちです。すっかり生活の一部なんでしょうね」
布制神社の仮宮に芝澤・内堀両区の役員が揃って神事を受ける
祭の主役というべき大獅子は、頭部分だけで高さ120cm、重さは60kgあります。頭には若手の男性が3人と決まっていて、足だけが出るような状態で獅子の頭を左右、上下と動かしながら、お囃子に合わせて足元は揃えて舞います。
「役を務めてこそ、この地域で一人前として見られるんです」
大獅子はかんたんに習得できる動きではないため、きちんと役割と果たして祭を盛り上げようと、仕事で疲れている中ひたすら練習を続けていました。
神事の前には奉納舞が行われる。上の写真は芝澤の奉納舞
祭を通して、住民の心をひとつにする
篠ノ井祗園祭は、7月の最終土・日曜に開かれます。今年は25日が子供神輿・獅子、篠ノ井びんずる、26日に篠ノ井大獅子奉納舞が行われました。
朝から地区の各家や店を巡行し、午後6時に芝澤・内堀両区の大獅子が布制神社仮宮天王社の前で向き合い、神輿に迎えた神をお戻しするための奉納舞と神事を行いました。大獅子が競演が始まる午後8時になると、沿道は人で埋め尽くされるほどに。
大獅子はお囃子のリズムに合わせて、互いに様子を探ったり、沿道にいる人たちを威嚇し、あるタイミングで2体の獅子が前進し、ガツン!と大きな音を立てながらぶつかり始めました。上に、下にと絡まりあいながら動く姿は生き物のよう。ぶつかり合う姿は、ものすごい迫力です。
「祭には、”たてまつる”という意味がありますよね。だから本来は地域の神社を維持するために始められたと思うんです。100年以上と続けるうちに、祭を通して住民のつながりが強くなっていった。祭で交流をするからこそ、何かあった時に助け合える関係性が生まれます。祗園祭を通して、住民の絆を感じてもらえるのではないでしょうか」
こちらは内堀の奉納舞。それぞれ獅子の顔に特徴があるのが分かる
興奮の余韻を街なかに残しつつ、祭を終えて屋台を曳いて戻る人たちは、どこかスッキリとした表情。競演を見届けた宮入さんも、神事の時とは別人のようにおだやかです。
「みんな無事に終わった!という達成感ですよね。毎年屋台に上がる芸子さんが打ち上げに参加してくれるのも、楽しみのひとつなんです」
大仕事を終えた安堵と充足感をみんなで共有しながら、打ち上げの時には来年の祭について話が盛り上がっていることでしょう。
獅子舞の大きさ、ぶつかり合う時の音、お囃子、沿道のかけ声など、実際に見るからこそ体感できる迫力がある
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会える場所 | 篠ノ井大獅子保存会 電話 ホームページ http://www.shinonoi-ohjishi.com 問い合わせメール omiyanoharu@gmail.com |
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