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わくわく・共感できる長野の元気情報を配信します!

ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.259

小田切

隆一さん

小田切電設代表

地域に溶け込む覚悟さえあれば
新たな地に移住してもきっと何とかなる

文・写真 島田浩美

自分の本来の生き方を探して長野の地へ

近年、善光寺周辺では、門前町ならではの風情に惹かれて、長らく空き家だった古民家や長屋をリノベーションし、新たな店をはじめる若い人たちが増えました。

そうした店の電気工事を中心に改修を手がけ、店主にアドバイスをしながら一緒になって店を造りあげているのが、小田切電設の小田切隆一さんです。小田切さんがここ数年で関わった店を眺めてみても、ピザ店「TIKU-」や「喫茶ヤマとカワ」「アソビズム」「藤田九衛門商店」などなど、これまでナガラボでもご紹介してきた話題の店や会社ばかり。小田切さんの人気ぶりがうかがえます。

「本業は電気工事をする電気屋さんだけど、頼まれてできることがあれば何でもやります。今の時代、仕事を限定するよりも、ある程職種を広くして『そんな仕事でもやっていけるんだ』と思われるようなことができたらおもしろいと思ったんだよね」

そう話す通り、小田切さんの仕事は電気の配線工事だけでなく、大工仕事や左官工事なども手がけ、地域の”何でも屋さん”として個人宅の修繕も行っています。さぞかし昔から地域に馴染んできたのだろうと思いきや、実は東京生まれの東京育ち。仕事はプラントの電気工事士として、愛知万博会場や六本木ヒルズなど専門性が高い大規模工事を手がけ、全国各地を飛び回っていました。長野市にきたのは約6年前。きっかけは、空き家になっていた長野市新諏訪の祖父母の家が大雪によって倒壊の危機にあったためだといいます。

小田切さんが電気工事を手がけ、思い入れがある店のひとつ「TIKU-」は、いまや行列が絶えない人気店となった

「小さい頃から親父に『いずれは実家の仏壇と家と墓を継いでくれ』と言われていました。でも、なかなか移住のタイミングがないなかで、大雪の年に屋根瓦が崩れ、『潰すか、お金をかけて直すか』の選択肢に迫られて。潰すのは忍びなかったし、自分は電気工事というある意味では硬いインダストリアルな世界にいながらも、違う生き方をしたいというのがずっとどこかにあったんです。それと長野への移住を結びつけて考えたんだね」

もともと環境系のイベントを通じて知り合った妻の奈々子さんも、東京生まれ東京育ち。都会での暮らしと仕事に悩んでいたこともあり、移住には抵抗がなかったそう。こうして2009年の暮れに長野に引っ越してきました。

互いに東京生まれ・東京育ちながら、長野への移住に抵抗がなかったという小田切さんと妻の奈々子さん。明るい笑顔が、愛猫と門前で暮らす日々の充実を物語っている

地域行事に積極的に参加して"何でも屋"の信頼を獲得

「以前のように全国各地を飛び回る仕事のスタイルだと地元には根を張れないし、サラリーマンという形で移住してきても大変だと思っていました。だから、電気工事という手に職もあったし、家の裏に家庭菜園程度の畑もあるし、せっかくなら『半農半X』のようにいろいろなことをやりながら慎ましやかに地に足をつけて生きていくほうが自分の生き方には合っていると思ったんです。それに町も高齢化が進んでいて、みんながちょっとしたことで困っていました。例えば、お勝手の蛍光灯が切れちゃったんだけど位置が高くて交換できないとか、棚の据え付けが悪くなったとか。だから、直す人がいなくなっているなら『ニーズに合わせて、やれることは何でもやります』という”何でも屋”で細々とやれば、食っていけるんじゃないかなと思ったんだよね」

小田切さんは、移住した当初から”何でも屋”のビジョンを思い描いていたそうです。

しかし、いざ”何でも屋”業を始めてみると、地域のニーズは思っていた以上にたくさんあり、「おかげさまでアレヨアレヨという間に忙しくなってしまった」という小田切さん。その背景には小田切さんの前向きな取り組みと気さくな人柄があります。

サビ猫の「ひなた」は東京からの移住組。ロシアンブルーの「福太郎」は、ある日、突然小田切家にやってきた新顔で、門前の人気者、ナノグラフィカの息子「福太郎」から命名したそう

「急に困りごとのニーズを拾おうと思っても、最初は信用関係がないと難しいと思ったから、地域のいろいろなつながりに顔を出しました。地域の公民館活動に加わったり、『もんけん(※)』やさまざまなイベントにも出かけておもしろい人たちに会ったり。地域の祭りの係も引き受けました。そのうち、自然と『仕事は何だ』という話になって、説明すると修理を頼まれるようになっていきましたね」

さらに、門前の建築士・宮本圭さんや、空き家物件の不動産を手がける倉石智典さん、門前のリノベーションの草分け的存在である編集室兼喫茶室の「ナノグラフィカ」のメンバーや、全国に名を馳せていたスローカフェ「ずくなし」の店主と知り合い、次々と誕生する店舗のリノベーションを依頼されて、仕事は引く手数多に。

「東京の職場では、工場に大きな機械を運び入れる時にまず壁を壊して、機械を入れたらまた壁を造るということを繰り返していたから、大工仕事や左官仕事はここで覚えました。だから、門前の空き家をセルフビルドしてお店を始める人たちにとっては、電気工事や水回り、床の下地の張替えとか、彼らが手に負えないところをお手伝いするのが俺の役割としては大切なところかな。それに、水道管自体を変えるような大がかりな工事の場合は、知り合いの専門業者を紹介できる。医者でいえば、専門医を紹介する『かかりつけ医』みたいな感じだね。でも、最近はそういう存在自体が町にいなくなっていたから、えらく忙しくなっちゃった。長野でスローライフを送ろうといってたけど、無理だったね(笑)」

(※もんけん…門前研究会。善光寺門前でつながりや関わりがある人、あるいはこれからつながりたい、関わりたいと考える人が集まって、話したいことや聞いてみたいこと、みんなで取り組みたいことを持ち寄る場。2010年から月1回開催)

小田切さんと自然エネルギー信州パートナーズ、NPO法人まめってぇ鬼無里が一緒につくりあげ、7月5日に竣工した「まめってぇ鬼無里発電所」

みんなでつくりあげた「まめってぇ鬼無里発電所」

そんな売れっ子の小田切さんですが、さらに最近、力を入れて取り組んでいたのが、長野市鬼無里に完成した小さな太陽光発電所「まめってぇ鬼無里発電所」の建設です。これは、奈々子さんが働く一般社団法人「自然エネルギー信州パートナーズ」が事業主体となり、鬼無里の活性化を目的としたNPO法人「まめってぇ鬼無里」と一緒につくりあげた手作りの発電所。小田切さんはもともと、移住したばかりの頃にあちこちのイベントに参加するなかで、環境に対する問題意識が高い「まめってぇ鬼無里」のメンバーと知り合い、交流を深めてきました。ただし、当初は建設を専門業者に任せていたので、小田切さんはスタッフではありませんでした。しかし、昨年9月に事業計画が最終決定しようという段階で銀行からの融資が受けられないと判明。それでも「なんとか自然エネルギーを自分たちの地域でつくりたい」という鬼無里の人たちの熱意に押され、小田切さんが設計から全面的に見直すことになりました。

吉田事務局長を筆頭に、環境や地域資源に対する問題意識が高く、祭り屋台の組み立てや土木工事を得意とするメンバーが多い「まめってぇ鬼無里」の仲間によって、できる限り手作りでつくりあげていった

「近頃は空き地や畑を活用した『野立て太陽光発電』が増えているけど、鬼無里のような多雪地帯では前例がなくて、建設を任せていたパネルメーカーは現場を見ずに図面だけで設計していたんだよね。でも、それは土地の地形を土木工事で変える仕様だったから費用がかさんでいた。それじゃおもしろくない。どうせ自分が関わるなら、平均年齢は高いけど祭り屋台を組んだり土木のプロである鬼無里の人たちの現場力を生かしたい、と思って、『土地の課題は地域の人で取り組み、半分手作りでやろうよ』とみんなに働きかけて、計画を練り直しました」

こうして、なんとか無理がない予算で事業計画ができ、建設に着手。この事業を応援したい市民からの出資金も受けて、今後20年間稼働する「まめってぇ鬼無里発電所」が竣工し、7月5日(日)にはお披露目会も行われました。

「まめってぇ鬼無里発電所」は「自然エネルギー信州パートナーズ」が事業主体となり、地域に根ざした自然エネルギー発電所の第1号事例になる

「地域に入る覚悟があれば何とかなる」と伝えたい

「鬼無里の人とか、門前でリノベーションをやるお店の人たちをお手伝いして、一緒に何かを作っていくというのが俺は好きなんだろうな。門前にはそういう個性的な若い人が集まってきてありがたいよね。人の力は大きいね」

そう話す小田切さんに今後の展望を尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「門前のお店も随分にぎわってきたから、少し落ち着いてきたところで、みんなが本業以外にちょっとずつ参加できることで何かおもしろいイベントや企画を考えたいね。例えば、リノベーションでお店を始めた人に、なぜ門前でお店をやりたいと思ったか、古民家がよかったのかを聞いたり、店を始めてから気づいたことをお互いにシェアしたり。門前の盛り上がりをいろいろな形で発信していけたらおもしろいよね」

こうした小田切さんの考えは「若い世代に何を伝えていくか」という思いにつながっています。

「特に長野に移住しようと考えている人にとって、働き口を探すことはハードルが高いけど、『自分のスキルや就職口を心配するよりも、ちゃんと地域に入っていく覚悟さえあれば何とかなるんだよ』ということを伝えたいんです。『自分にできることがあれば何でもやる』という姿勢で地域に開いていけば、地域の人は受け入れてくれるし、地域活動に参加すれば周りの人が放っておかずに『うちの仕事を手伝え』と何とか食わしてくれる。俺が手に職があったのは一端に過ぎなくて、ほんとは誰でも『こんな風にやっていけるよ』と示していけたらいいな。なかなか今までの物差しで『こういう仕事です』と示せないけど、東京で暮らしていたときに比べて今のほうが豊かだよね」

こう話して奈々子さんと笑い合う小田切さん。「地域に根ざし、無理なく生きる」ということは、簡単なように聞こえておそらくとても難しいことだけれど、ニコニコと話すおふたりの笑顔を見ていると「きっと大丈夫だよ」と後を押されるような気分になります。そんな小田切さんが移住者に向けたイベントを企画したら、もしかして一気に長野市への転居者が増えるかも!? 話を聞いていると、そんなワクワクする気持ちが湧き上がってきました。

2015年4月4日にオープンした「松代ゲストハウス布袋屋」の壁塗りワークショップでの風景。この主屋と土蔵は、先日、国の登録有形文化財に指定されることが決まった

(2015/08/06掲載)

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