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No.220

五十嵐

美智恵さん

臨床心理カウンセラー 癒しの空間まごころ 代表

心をケアしサポートする
本音を見つめるお手伝い

文・写真 Rumiko Miyairi

本当の気持ちに気付いてもらうという仕事

「本当の気持ちに気付くための隙間を作ってもらうように、そのお手伝いをすることです」

心掛けを話す、臨床心理カウンセラーの五十嵐美智恵さん。

五十嵐さんのカウンセリングは、患者の希望に添いながら進めるため、場所や時間、治療方法などは、その本人に合わせて行います。そのため、患者の自宅などに出向く場合が多く、朝家を出て日が沈むまで帰らないほど、長い時間を掛けて患者に向き合います。地域などから専門的な講座などを依頼されることもあり、傾聴講座や「ストレスと上手に付き合うコツ」と題してメンタル講座なども行っています。

昨年から長野市内で始めたカウンセラー養成講座。「患者の気持ちに寄り添うカウンセリングとは」と熱心に講義をする五十嵐さん

一方で、自宅の一部を利用して「癒しの空間まごころ」という相談が受けられる場も設けて「どんな人でもウエルカムです」と門戸を広げています。

「人それぞれの悩みごとに、大きいとか小さいとかはありません。悩みにぶつかったとき本当はどうしたいのか、その自分の気持ち、本音に気付けるとすっきりするんです。気付いてもらえたとき、私も最高の喜びを感じます」

五十嵐さんは微笑みながらそう話しました。

埼玉県で生まれた五十嵐さん。生まれて間もなく母親を亡くし、その後、父親も行方が分からなくなってしまったそうです。それからの五十嵐さんは叔母夫婦のもとで暮らすことになりましたが、学校生活ではいじめに遭い、戸籍などの関係で希望する高校の進学も断られてしまうなど、辛い時代を過ごしました。

そして17歳のとき、自分は生きている価値があるのだろうか、と心から悩みます。

「そのころはもう、生きる気力も失ってしまったんです。でも相談に乗ってくれた精神科の先生から『人は、7つの苦難を背負って生きるもの。すでに、それを経験したということは、人の痛みが誰よりも分かるということ』と言われました」

精神科の先生の言葉を真摯に受けとめた五十嵐さんは、この時、悩み苦しむ人のためになるカウンセラーを目指そうと、目標を高く持ちました。

「先生に一喝されて自分の気持ちに気付きました。人は、苦労を敢えて与えられるんです。先生からいままでの辛い思いをした経験を生かし、人の心の痛みに寄り添う臨床心理カウンセラーになったらどうかと勧められて、やってみようと思いました。私にもできる事があるんだと心から感じることができたんです」

あらゆる方法で心の痛みを和らげたい

志を強く持った五十嵐さんでしたが、高校卒業してから20歳を迎えるころまでは何度かの入退院を繰り返しながら自身の治療にも長い時間を掛けました。それまでに関わってもらった多くの人や、育ての親である叔母夫婦には特に支えてもらえたことを心から感謝します。そして、臨床心理カウンセラーの資格を取得するため上京し、専門知識などを学びました。

資格を取得すると、長野に住んでいた叔母夫婦に恩返しがしたいという気持ちから長野市に戻り、本格的な活動を始めました。五十嵐さんの仕事への情熱は強く、いろんなケースで悩みにぶつかった人それぞれに、最善のケアをしていきたいと思い臨床心理療法士の資格も取りました。

「特に催眠療法や音楽療法などは私自身も体験して効果を感じましたので率先して取り入れました。心だけでなく体にも良いハーブによる療法も学びました。手作りの天然のハーブ石鹸を紹介したり、ハーブティーをブレンドしたりして飲んでいただきながらカウンセリングをすることもあります」

単に向き合ってカウンセリングをするだけでなく、心の潤いも感じさせてくれる演出をします。自宅に設けた癒しの空間まごころは、五十嵐さんのそんな細やかな配慮がみられます。そのひとつとして、棚の上やサイドボードなどに並べられている可愛らしい置物や押し花などのコレクションです。見ているだけでおとぎの国にいるかのような楽しい空間が広がっていました。

カウンセリングでは、患者とともに泣き、ともに笑うという五十嵐さん。講座でも、常に熱い気持ちで語りかける

「可愛いものが好きなので気付いたらこんなに集まっていたという感じですが(笑)。なかには患者さんから頂いたものもあるんです。手作りのものもあって、どれも上手で素敵でしょう」

コレクションに目をやりながら集めた数の多さには自分でも驚いている、と笑みをこぼす五十嵐さん。そして、患者さんから頂いたものには、カウンセリングを受けているうえで、特別な思いがあります。

「こんなに綺麗で可愛いものを表現できるんです。つまり、どんな患者さんも大きな悩みを抱えながらも、輝きたいという気持ちを持ち、それを叶える可能性を持っているんだと思うんです。だから元気になれるきっかけはあらゆる面からあるんだと思います」

自宅の一室を使った「癒しの空間まごころ」には、手作りの贈り物や可愛い小物のコレクションが並び、癒しの空間を演出する

一緒に答えを見つけていくために

昨年から、新しい活動が始まりました。

「どんな立場の社員でも、精神的な相談を気軽にできるような面談室を設けたいということで、企業の社員向けのカウンセラーをしてほしいと、企業さんから話がありました」

これまでに例がなかった新しい依頼に、積極的に応える五十嵐さん。

「最近の動きとして、社員個人の実績を上げるため、ただただ仕事だけすればいいという考え方ではなく、メンタルな面に力を入れていきたいという企業がみられるようになってきました。個人の心が潤ってこそチームを組んだプレーができるというような会社に、環境が整えられると素敵ですね」

精神的な悩みを抱えてしまったとき、なんらかの解決がしたいと思ったならば、病院などの専門科に行くことやカウンセラーに相談することでさえ、まずは自らで行動に起こさないとなかなかできないかもしれません。こんな企業の試みは、精神的な悩みを持ってしまったときに、身近で話せるとう有意義な取り組みとして昨年の春から始まりました。

「相談の依頼があれば、私からすぐに行けますし、メールでも心の声が届くようになっていますから、気軽に私と話ができるんです」

五十嵐さんは、こんな試みと同じように子どもたちへのケアにも力を注ぎます。子どもの場合、支える親や先生との関わりにも重点を置いて、みんなで糸口を探っていくと話します。

「子どもって何に悩んでいるか、その悩みにさえ気付かず病んでしまうケースが多いんです。学校の先生たちにも関わってもらって親御さんとも連携を取りながら、何が悩みなのか、というところから一緒に考えるのが大切なんです」

こんなケースにときにも対応できるように、心の支えが必要な人の周りの人に向けて、心に寄り添うためのノウハウが学べるカウンセラー養成講座「まごころスクール」も始めています。この専門的な知識が学べる場は、地方ではまだあまりないため新しい試みとして注目されています。

週2回のペースで開かれているこの講座には、日ごろ、携わる仕事での人との関わり方に役立てたいという熱心な受講者が集まっています。

「人の気持ちに寄り添えるために...」と熱心に受講する皆さん。、五十嵐さんの手作りの教材をもとに、一字一句を書きとめていた

かつて「生きている価値がない」とまで思い、深い苦しみを体験した五十嵐さんは、どんな人の悩みにも一筋の光を当てて、真心を尽くすための努力を惜しみません。

自身のピンチをチャンスに変えて生き生きとして今、多くの人に寄り添いながら活躍をしています。

「こうあるべきとか、こうしなければいけないとか、本当の自分の気持ちをどこかに追いやっている場合が多いです。そんなとき、私が答えを出すのではなく本人が自分で気付けるように関わっていき、一緒に答えを見つけ出します。どんな人でも必ず自分の答えを持っていますからね」

(2015/03/24掲載)

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会える場所 癒しの空間まごころ
長野市下駒沢240-50
電話 080-2065-4291
ホームページ http://mbp-shinshu.com/magokoro/detail/

Email magokoro090626@email.plala.or.jp

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