No.102
宮澤
俊穂さん
戸隠トレイルランレース実行委員長
神々の地を巡るレースの立役者
文・写真 Yuuki Niitsu
トレイルランの魅力
「初めて見た時にこんなスポーツがあるのかと感動しましたね。走ってタイムを争うだけじゃなくて、地図を片手に歩いている人、植物の写真を撮る人、登り坂で喋りながら歩いている人もいて、とにかくみんな楽しそうでした。トレイルランレースは全国各地で開催されていますが、戸隠でトレイルランをする魅力はやはり神々の聖地を巡りながら走れるということですね」
そう話すのは、信州トレイルランレース実行委員長の宮澤俊穂さんです。
トレイルランとは「トレイルランニング」のことで、舗装路以外の山野を走ります。欧米でもともと行われていましたが、日本においては近年、マラソンブームや登山ブームの波に乗って流行りだしました。
宮澤さんは、生まれも育ちも戸隠。普段は戸隠中社地区で宿坊「宮澤旅館」を夫婦で営んでいますが、第1回目開催時に、初めてトレイルランの存在を知りその魅力を感じたといいます。
こうして大会後、トレイルランを通して戸隠の魅力を全国に発信したいという思いが募り、第2回目の大会から実行委員会に携わります。
そして第4回目の終了時に当時の実行委員長から、宮澤さんに委員長就任の要請がきます。
「そろそろ若い人へバトンタッチしたいと委員長に言われ、だったら戸隠を盛り上げてやろうと手を挙げました」
こうして、2013年の第5回大会より宮澤さんが実行委員長に就任します。
大会当日は鏡池の前も通る。ここは第2エイドといわれ、補給所・救護所となっている
森林保全、選手目線の立場で行う万全なレース
近年、トレイルランは走りながら自然を満喫でき、また歩きながら写真を撮ったりと、タイムだけにとらわれないで参加できるため、若者から年配の方までに支持を集め、注目されているスポーツです。
しかし、トレイルランは自然の中を走り抜けるため、課題もあるといいます。
「山の中を走るわけですから、花や木などの植物への配慮は欠かせません。鎌倉では環境保護の立場から規制を求める動きがあったとも聞いています。こういった問題は日本全国どの大会にもありうることで、戸隠では環境省の自然保護官を運営スタッフに招き、アドバイスをもらいながらコースの補修や考案をしています」
官民一体となり大会を運営しているので、参加者には安心して楽しんでもらえると宮澤さんは胸を張って言います。
「戸隠は上信越国立公園に指定されているため、看板一つ立てるだけでも許可がいるんですよ。それにトレイルランの性質上、自然を体感してほしいという思いから、迷いそうなところや分岐点には看板を設置しますが、最低限です。迷ったら迷ったで地図を見てコースに戻ったりとみんな楽しんでいます。迷うのも魅力の一つですかね(笑)」
また前大会より地元戸隠出身のトレイルランナー、田中草介さんがスタッフとして加わり、選手としての立場で運営に携わってもらっています。
「田中選手は第一回目からレースに参加していて第4回目大会の優勝者なんです。現役の選手が運営に回ってくれるのは、我々が気づかない点にもアドバイスがもらえるのでありがたいです」
実は、今大会の2か月前に田中選手主催で試走会キャンプを開催しました。
「トレイルランはマラソンと違い、事前にコースを走ったり、トレイルランや自然についての講習会をやるんです。当日以外にも楽しめるというのも魅力です」
トレイルランの魅力を話す宮澤さんは、ひげを生やし作務衣という厳かなイメージとはかけ離れて、満面の笑みでした。
なんと戸隠神社奥社の参道もコースに。戸隠で開催するウリの一つがこれである
トレイルランが結んだ海外との縁
トレイルランはフランスでは非常に盛んなスポーツだと宮澤さんは言います。
「フランスでは大会が毎週あるようで、すごいメジャーなスポーツです。日本はトレイルランが観光目的の要素もあるんですが、フランスはレースが好きだからやるという気持ちが強いんです。なので地元のランナーが有志で大会を開催しているんですよ」
フランス人の戸隠観光アドバイザーがいたという縁もあり、昨年フランスのピラトレイルという大会に参加し運営の勉強や盛り上げ方を勉強しに行ったといいます。
「やはり本場は盛り上がり方が凄いし、選手が大会を運営しているというのも強みですね。
ちなみにフランスにはガレットというそば粉を使ったクレープがあるんですが、日本の切りそばを打ってその場で提供したら大喜びでした」
トレイルランやそばという縁もあり、今年はトレイルラン先進国であるフランス人スタッフ10名が戸隠トレイルランレースを視察しに来るといいます。
そして、そばと言えば戸隠には長野吉田高等学校戸隠分校のそば部(ナガラボNo017で紹介)がありますが、当日彼らが選手や来客者にその場でそばを打って提供するそうです。
「今年は寒さなどを考慮し、1か月早い9月27日、28日に開催します。とにかく、初の試みが多くてワクワクしています。スタッフやコース環境、おもてなしは万全ですので、是非皆さん足を運んでください」
戸隠をこよなく愛し、知り尽くしている宮澤さんが長となる今大会は、きっと参加者だけでなく戸隠の神々も喜んでいるのではないでしょうか。
当日のスタート&ゴール場所。ここで戸隠分校そば部がその場で打ったそばのふるまいをする
普段は宿坊を営まれている宮澤さん。昼間はレース、夜は宿坊で戸隠三昧の日を!
追記
大会当日、最高の秋晴れのなか行われた戸隠トレイルランレース。ゴールする参加者は、みなさん晴れ晴れとした表情でした。
ゴール地点では参加者全員に、戸隠分校そば部の手打ちそばがふるまわれ、口にした人はみんな声を合わせて「おいしい、さすが戸隠しそば」と身も心も戸隠に魅せられていました。
「来年はさらに多くの人を笑顔にしたい」と実行委員長の宮澤さんは、今から来年を見据えていました。
親子で仲良くゴール!この日のことは一生忘れないでしょう
戸隠分校そば部部長の永井千大君(手前)。彼は、そば打ち職人になることを決意しました
フランスのトレイルランレース「ピラトレイル」のスタッフたち。実際にレースにも参加し、戸隠の大会を味わった
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会える場所 | 宿坊宮澤旅館 長野市戸隠中社3384 電話 026-254-2011 ホームページ http://miyazawaryokan.com/ 第6回信州戸隠トレイルランレース |
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