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No.84

『もんぜん年表作成プロジェクト』

ナガラボ編集部のマイ・フェイバリット

人の出会いに紡がれる善光寺門前界隈の歴史

文・写真 小林隆史

毎日の会話が、街をつくっていく

長野市善光寺門前界隈に広がる、空き家リノベーションの動き。2009年頃から現在に至るまで、古い看板や外観をそのままに、カフェやゲストハウス、アトリエやオフィス、住まいなどとして、新たなあかりが灯るようになりました。そんな「古さを残した」新しい街並みの風景は、さまざまな視点で、メディアや大学の研究などにも取り上げられるようになり、観光だけに止まらないにぎわいを見せています。
 
しかし、善光寺門前界隈で空き家再活用の動きが盛んになっていった経緯には、どのような理由があったのでしょうか?開業するまでのコストや家賃相場が安いから?他県とのアクセスの良さ?はたして……。その手がかりのひとつとなるのが、『もんぜん年表作成プロジェクト』です。
 
プロジェクトの中心人物であり、建築家の宮本圭さんは、こう話します。
 
「『もんぜん年表プロジェクト』では、例えば、“2009年にAさんとBさんが出会ったから、Aさんが長野に移住を決めて、開業するようになった”という、人の出会いやきっかけを紐解きながら、この街で起きた物語をまとめています」
 

▲時間軸に活動やイベントが記されている。さらにそれらは点線で紐付けされ、出来事の背景が紹介されている
 
「年表というと、活動やイベントなどを記した時系列だけで完結するものも多いと思います。しかし、善光寺門前界隈の人の流動は、それだけでは説明しようのないきっかけがたくさんあるので、それらをきちんと記録してみたら、面白いことになるはずと思っています」
 

▲主に2009年から2018年までに起きた善光寺界隈の出来事を記録した年表。現状では、『ボンクラ』や『門前暮らしのすすめ』、『1166バックパッカーズ』などのブログやSNSの投稿がもとになっている
 
宮本さんは2009年から、元ビニール工場をオフィス兼フリースペースとして開いた『KANEMATSU』(長野市東町)を拠点に、デザイナーや編集者、建築士などと協働し、『ボンクラ』という活動名義で様々な取り組みに携わってきました。そんな宮本さんが『ボンクラ』の活動をスタートさせるまでの経緯は、年表にこう記されています。
 


 
①2006年9月 設計事務所を開設(自宅)
→木遣り団をつくって、同業仲間の仕事現場で歌っていた(木遣り=御柱祭の時に歌うこと)
→平和土地建物・荻野さんと出会い、街中に事務所を構えることを検討
→「東町にある元工場なんだけど、宮本さん事務所にどう?」と誘われる
 
②「ツリーハウスプロジェクト」に参加
→デザイナーの太田伸幸さんと出会う
 
③2009年6月 萩野さんとの出会いがきっかけとなり、元ビニール工場「金松」と出会う
→小布施で開かれたマラソン大会後の懇親会で、のちに『ボンクラ』立ち上げメンバーとなる人たちと意気投合
【広瀬毅さん・建築士 |古後理栄さん・建築士 | 宮本圭さん・建築士 | 太田伸幸さん・デザイナー|山岸英司さん・建築士 | 山口美緒さん・編集者|羽鳥栄子さん・建築士】
→『ボンクラ』結成
 


 
こうした経緯からわかるのは、「もしも、マラソン大会の後の懇親会がなかったら、『ボンクラ』の活動はスタートしていなかったかもしれない」という出来事の背景。
 
「善光寺界隈でお店を始める人や住み始める人が増えていった背景には、こうした些細な出来事がたくさんあるんです。そう考えると、この街に住む私たちが、誰かと出会って交わす日常の会話も、街をつくることにつながっているのかもしれないと知らされます」
 

 
活動やイベントの遍歴だけでは、浮かび上がってこない背景を可視化する『もんぜん年表プロジェクト』。年表を眺めながら、宮本さんはあるエピソードを思い出し、こう語りました。
 
「今年の夏に、インターン生として、私の事務所に来てくれた二十歳の学生がいて。実は、その子は8年前(当時小学5年生の時)に、『KENEMATSU』で開催したイベントに参加してくれていたんです。その時に『KANEMATSU』のような古い建物のことや、『ボンクラ』の活動に興味を抱くようになり、私の事務所でインターンを希望するに至ったそうなんです。
こんな風に、小さなきっかけが、長い歳月を経て誰かの転機になることを思うと、今何かをやってみる勇気になりますよね」

 

多くの人が書き込めるように、年表をオープンソース化する

『もんぜん年表作成プロジェクト』がスタートしたのは、2014年のことでした。宮本さんをはじめ、豊橋技術科学大学・特任助教授の穂苅耕介さんや、ゲストハウス『1166バックパッカーズ』のオーナー・飯室織絵さんら有志が、SNS上でグループをつくり、情報収集を始めました。その後、『KANEMATSU』内に、年号を記した長い模造紙を掲示し、手書きで出来事を綴っていきました。しかし、アナログな手法による記述は難航し、一旦中止に。そんな中、穂苅さんがインターネット上の記事をもとに、記録を継続。2018年に入り、そのことを知った宮本さんを中心に、『ボンクラ』の活動として再始動することとなったのです。
 

▲2014年に『KANEMATSU』で掲示した年表。手書きで出来事を記していった
 
「現在は、インターネット上で、より多くの人が書き込みをできるように、年表をオープンソース化する準備を進めています。そうすることで、業種や世代を超えて、様々な視点が加わった年表になると思うので楽しみです」
 
と宮本さんは話します。さらに今後は、長野県立大学の築山秀夫(つきやま・ひでお)教授の研究として引き継ぐことにもなりました。
 
仕組みや活動の遍歴だけでは表しきれない、この街の物語。時代とともに建物の役割が変わろうとも、門前年表に綴られる人と人の出会いの歴史は、いつまでも語り継がれるものとなるでしょう。最後に宮本さんはこう語ります。
 
「『もんぜん年表プロジェクト』が目指すのは、古い建物がまちと共有した“時間”を、まちの魅力として再評価すること。まちと人のつながりを記録することで、古い建物が持つ物語に、新しい物語を重ねていく。そうすることで、多くの人がまちの歴史をつくる当事者であることを自覚するようになると、“厚み”のあるいきいきとしたまちが、立ち現れてくるのではないかと思っています」
 
『もんぜん年表作成プロジェクト』
今後の動向は「株式会社シーンデザイン建築設計事務所」のブログにて
 

(2018/12/17掲載)

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