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No.83

Record Store『GOOD TIMES』

ナガラボ編集部のマイ・フェイバリット

平成から次の時代へ。1989年から続く中古レコード店の審美眼

文・写真 小林隆史

1990年代から現在に至るまで、日本における音楽の市場は大きく変化してきました。バンドブームやCDセールスの絶頂から、インターネットの普及を経て、音楽のダウンロード化、CDショップの撤退など・・・。今やいつでもどこでも、音楽を持ち運べるようになったことで、私たちが音楽を聴くシチュエーションもまた、かつてとは大きく異なるものとなりました。今回紹介するのは、そんな移り変わりの中、平成元年にオープンしてから約30年続く中古レコード店『GOOD TIMES』です。
 

1万枚以上のストックから選ばれたCD/レコードに囲まれて、お気に入りを見つける時間を


 
長野駅から徒歩3分、飲食店やアパレルショップなどが並ぶ南千歳町。このエリアで1989年にオープンした『GOOD TIMES』は、長野駅前で唯一の中古レコードショップ。15帖ほどの店内には、1万枚以上のストックから選ばれたCDやレコードが、びっしりと並べられています。店頭買取を通して入荷してくるCDやレコードもあるため、インターネットでも入手困難な名盤が、偶然お目見えなんてことも。そんな『GOOD TIMES』ならではのセレクトを味わいながら、こじんまりとした店内で、数々のCDやレコードに囲まれてお気に入りを探す時間は、大型レコードショップやインターネット通販では味わい尽くせない楽しみと言えます。
 
「特定のジャンルだけに絞ることなく、集めるようにしています。“いろんな音楽に出会える。行けば何かある”。そんな風に、レコードやCDを選ぶ時間を、楽しんでもらえたら嬉しいですね」
 

 
穏やかな表情で語るのは、オーナーの松坂敏彦さん。続けて、スタッフの山口善巨(やまぐち・よしひろ)さんはこう話します。
 
「旅行先の中古レコード店にも行くようにしたり、あらゆるジャンルのCD・レコードを毎日見たりしているので、見たことのない一枚があれば、欠かさず買ってくるようにしています。中古CDとレコードは、国や時期によって価格が大きく変わるので、その時々のいい一枚を発見する楽しさがあります。いろいろおすすめを紹介しますよ。わからないことがあれば、なんでも聞いてくださいね(笑)」
 

 

‘70年代のブラック・ミュージック、’80年代のワールド・ミュージック・・・数々の音楽を経て、ジャンルを問わないCD/レコードを取り扱うように

オーナーの松坂さんが『GOOD TIMES』をオープンさせたのは、1989年のこと。当時32歳でした。それまでの音楽遍歴は、洋楽に夢中になった中学生の頃から始まり、高校時代にはロックバンド「Led Zeppelin」や「Deep Purple」に傾倒。その後、長野市を離れて横浜の大学に進学し、関東で過ごした1970年代には、レコード集めを趣味として楽しんでいたそう。
 
「’70年代後半になると、いわゆる『ブラック・ミュージック』のブームがあり、当時20歳だった僕は、すっかりジャズやソウルミュージックに傾倒するようになりました。その後、’80年代に入ると、ブラジル音楽やラテン、サルサといった新しい音楽性を取り入れた『ワールド・ミュージック』のブームがきました。これがきっかけとなって、ジャンルを問わず、あらゆる音楽を聴いてみるようになったんです。
 
僕たちの世代は、音楽評論家の中村とうよう(*1)の影響を受けている人が多くて、理論的に音楽を解釈してみたり、歴史背景を紐解いてみたりしていましたね。『ミュージック・ライフ(*2)』よりも『ニューミュージック・マガジン(*3)』ばかり読んでいましたから。今思えば、頭でっかちな聴き方だったなと思いますけどね(笑)」
 

「個人のお店が、街の面白さになれば嬉しい」


 
幅広いジャンルの音楽に耳を傾けてきた松坂さんは、東京でレコード店を営む人たちからノウハウや仕入れのサポートを受け、地元の長野で『GOOD TIMES』をオープンさせることとなりました。
 
「今振り返れば、向こう見ずに始めちゃったなあと思いますけど、こういう個人のお店があることが、街の面白さになれば嬉しいじゃないですか。どこの街を訪れても、同じお店、同じ街並みではなくて」
 

 
オープン当初は、長野駅前周辺にもいくつかのレコード店があったそう。そのうちのひとつ『ディスク・オリバー(`75年〜)』は、ロックやジャズのレコード、日本のインディーズレーベルがリリースする自主制作盤など珍しいレコードも多く取り扱っていました。そのため『GOOD TIMES』を始めた頃には、中古のレアアイテムが入荷してくることもあったそう。
 
「『ディスク・オリバー』さんがあったから、当時の長野は、いろんな音楽が聴ける環境にあったと思いますね。今みたいにインターネットがなかったから、ライブの宣伝広告をお店に貼らせてもらいに行く人がいたり、新しいジャンルの音楽を探してお店に通う人がいたりもしたみたいですね。
街の規模として、うちみたいなレコード店が、ひとつくらいあってもいいんじゃないかなと思って、これまでお店を営んできました。いろんな音楽を発見する楽しさを味わってもらえたらいいですね」

 
いつでもどこでも、インターネットで、自分の好きな音楽を探せるようになった現代。レコード店で思いもよらない一枚に出会ったり、ジャケットに惹かれてみたり、店主におすすめを訊ねてみたりしながら、音楽を選ぶ時間をもつことは、暮らしを楽しむひとつになるはず。ぜひ一度『GOOD TIMES』へ出かけてみては。
 

 

松坂さんと山口さんのレコメンドLP

今回は、オーナーの松坂さんとスタッフの山口さんのルーツとなった一枚を紹介していただきました。
 

 
『JEFF BECK GROUP』by Jeff Beck group (1972)
 
「第2期JEFF BECK GROUPの2作目にして最終作。アメリカ南部メンフィス出身のソウル・ミュージックのギタリストをプロデューサーに招いたことから、JEFF BECKのブラック・ミュージックに対する憧れが、明確に現れた一作として知られています。ホットなリズムセクションとジャズを踏襲したアレンジやインタープレイ、そしてギターヒーロー。全てがそろった、僕にとっての理想のロックと言えます。当時のお気に入りは今の耳で聴くと色あせてしまうものも多いですが、これはいまだに聴くたび新鮮です」(松坂さん)
 

 
『Space Oddity』by DAVID BOWIE(Original Release 1969年作)
 
「高校を卒業して『GOOD TIMES』で働くようになってから、僕が初めて買ったレコード。フォーク、ロック、サイケなど幅広いジャンルのメロディー・メーカーとしての、DAVID BOWIEの才能が凝縮された一枚だと思います」(山口さん)
 
 
脚注リスト

*1 中村とうよう|1932年〜2011年。日本の音楽評論家、編集者。株式会社ミュージック・マガジンの代表取締役。数々のレコードやCDの企画・紹介を手がけてきた

*2 ミュージック・ライフ(MUSIC LIFE)|1937年〜1998年。シンコー・ミュージックが編集発行した音楽雑誌。海外のミュージシャンを数多く紹介してきた。2011年からは『MUSIC LIFE CLUB』と名称を新たにウェブマガジンとして続いている

*3 ニューミュージック・マガジン(NEW MUSIC MAGAZINE)|1969年〜。株式会社ミュージックマガジンが発行する、日本の月刊音楽誌。中村とうようを編集者に、著名な音楽評論家やライター、アングラカルチャーを代表する作家などの評論が紙面を飾ってきた。単なる音楽紹介ではなく、音楽の背景を分析・批評する音楽ジャーナリズムを提起した。1980年に現名称『MUSIC MAGAZINE』に

 
 
 
<info>
『GOOD TIMES』
住所:長野市南千歳町880
TEL:026-227-5040
営業時間:12:00~20:00
 

(2018/11/19掲載)

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