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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.49

長野県自閉症協会北信地区 いとぐるまの会

人とまちに優しいコミュニケーションの専門家・田中優美子さんのフェイバリット・ナガノ

デコボコを尊重しあう仲間がいます

文・写真 オギノフミエ

相談できる場と仲間たち

「いとぐるまの会」は、自閉症の子をもつお母さんが30年以上前に立ち上げた親の会です。2年ほど前から、役員が花石多希子さん(会長)と大井光世さん(会計)に引き継がれ、30~40代のお母さんが活動の中心となっています。

現在の会員は70人ほど。子どもが幼いころに入会し、「お子さんが成人しても辞めず、会に協力してくださる先輩会員が大勢います」と花石さん。月に1回「おしゃべりサロン」を開催し、子育てに関する相談をしたり近況を報告しあったり、自閉症に関連する法律や制度、ツールのことなどさまざまな情報交換をしています。

会では、iPadを活用している稲荷山養護学校の先生を講師に「iPad活用コミュニケーション講座(アイカツ)」も開催。視覚からの情報をキャッチしやすいiPadは大切なコミュニケーションツールであり学びのツール。年度末の活用事例発表会には教師、事業所・デイサービスの関係者、保護者などが参加

肯定され、励まされ、救われる

花石さんのお子さんは中学3年生。

「高校のことや社会に出てからのことなどいろいろ心配ですが、会員の年齢がかなり幅広いので実際に成人して働いているお子さんも大勢いらして、間近でそういう姿を見ることができるのは心強く安心です」

大井さんのお子さんは小学2年生です。

「年中のころは着替えや食事などの身辺自立ができず、言葉が出ず、奇声を発することもありましたが、『わかるよ、たいへんだよね』と肯定され、『うちもそうだった、でも必ず成長するから大丈夫』と大きなお子さんのいる先輩に励まされて、闇雲に焦ったり右往左往したりせずに済みました」

自閉症は空気が読めないと思われがちですが、「実は空気を読みすぎたり感じ過ぎたりして抱えきれない子が多く、親の不安も敏感に察知します。だから、親が安定していれば子どもも落ち着きやすいんです」と大井さん。

インターネットをはじめ情報や知識を得る方法はたくさんありますが、「それだけだと心が救われないというか…。私の場合は、実際に経験者に会ってお話を聞くことで、子どものことも、子どもと外の世界との関わり方も冷静に見られるようになったし、ドンと構えられるようになった気がします」

「世界自閉症啓発デー10周年に善光寺をブルーに染めたい」と活動中。世界各国で実施された「ライト・イット・アップ・ブルー」の様子はNPO法人あっとオーティズムのサイトで紹介されています

誤解、偏見、無知に苦しめられ

自閉症は現在「自閉症スペクトラム」という診断名で統一されていますが、障害の程度や表れ方が多様なうえ、他の障害を合併するケースも多く、説明が容易ではありません。

「この言い方が一番わかりやすく、間違えもないと思います」と紹介されたのは、本田秀夫医師(信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長)の著書の一節です。

《自閉症スペクトラムとは、一部の人たちに共通して見られる心理的・行動的な特性です。その特性をごく簡単に要約すると、「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いこと」となります。》(『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』ソフトバンク新書) 

自閉症は脳機能の障害であって、生育環境などの問題ではないと明らかになっていますが、未だに誤解や偏見を持つ人は多く、それが当事者や家族を苦しめています。花石さんもそうでした。

お子さんが1歳になる前、病院で「子どもがしゃべらないのは母親のせい」「育て方が悪い」とひどい言葉を投げつけられたことなどが重なって体調を崩し、約1年はどこにも外出せず誰にも会わない生活をおくったそうです。

クラウドファンディングへの返礼は会員が利用している福祉事業所や団体の商品。写真は、障害を持つ人たちの福祉農園「くりのみ園」のお菓子詰め合わせ(10,000円コース)。無農薬有機栽培の野菜や果樹、自然配合飼料で育てた平飼有精卵を使用した安全・安心・新鮮でやさしい味わい(写真提供:いとぐるまの会)

気軽に会おう、思い切り話そう

「私はその後、たまたま療育を担当している作業療法士に出会うことができ、仲間もできて救われましたが、同じようにしんどい思いをしているお母さんは多いと思います。家族が障害を理解できず、母親が孤立するケースも珍しいことではありません。だからこそ、仲間がいるよって伝えたい。私に限らず会の仲間も昔はよく泣いていたと言っていますが、いまは元気です。目の前で起きていることは同じでも、受け止め方が変われば気持ちはまったく違います」と花石さん。

だから、「おしゃべりサロン」への参加は会員以外でも大歓迎です。

「障害の種類や有無などは気にせず、子育てのことで困ったことがあれば相談してほしいです。ここで思い切り吐き出したら落ち着いた、とおっしゃる会員ではないお母さんは何人もいらっしゃいます」

寛容で多様なほうがいい

誰にでも得意なこと、不得意なことがあります。他人が簡単にできることでも、自分にはできないことがあります。そういう意味で、人はみんなデコボコです。

「そのデコボコ加減の激しさが自閉症スペクトラムの特性で個性です。ものっすごいデコボコなんですよ」と大井さんは笑顔でいいます。

4月2日は国連が定めた世界自閉症啓発デー。自閉症を理解してもらうための取り組みが世界中で行われていますが、地域のランドマークをシンボルカラーのブルーに染めるライトアップもそのひとつ。いとぐるまの会も「善光寺をブルーに染めよう」と活動しています。

同時に、「対人関係が苦手で誤解されることも多い自閉症スペクトラムのことを少しでも知ってほしい」と長野駅ビル「MIDORI長野」でパネル展示やアートイベントを開催するため、クラウドファンディングでの出資も募っています。

世の中が不寛容な方向に進んでいると言われますが、「多様性のある社会のほうが、障害の有無にかかわらず誰にとっても生きやすいと思うんです」という花石さんの言葉に共感する人は多いはずです。

〈info〉
長野県自閉症協会北信地区いとぐるまの会
http://itogurumanokai.doorblog.jp/
※会員は常時募集中です

お問合せ
いとぐるまの会 itogurumanokai@gmail.com
会長・花石さん 090-9357-8976

※クラウドファンディングの詳細はCF信州のサイトをご覧ください
https://cf-shinshu.jp/project/detail/162

(2017/03/01掲載)

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