No.27
大望峠(北アルプス展望台)
写心工房季風音 写心師 小川晃侍さんのマイ・フェイバリット・ナガ
伝説の谷と山々を一望する絶景スポット
文・写真 合津幸
峠の頂上は北アルプス展望台
写心師・小川晃侍さんがお気に入りとひとつとして挙げてくださったのは、長野市鬼無里にある大望峠です。鬼無里と戸隠を結ぶ県道36号線沿いに位置するこの峠の頂上には展望台が整備されており、ベンチと東屋と5〜6台分の駐車スペースがあります。
展望台からは、谷の都と称される自然豊かな山里の風景を眼下に、鬼が一夜で築いたとされる一夜山やゴツゴツとした大迫力の山容に圧倒される戸隠連峰、さらに遠く北アルプスの山々をも一望することができます。
自然の雄大さと美しさ、そしてその自然が伝える四季の移り変わりを実感させてくれる絶景スポット。写真や絵の愛好家たちが足繁く通うというのも納得です。特にこれからの季節は、鮮やかな朱や黄に染まった風景を一目見ようと、たくさんの人が訪れる紅葉の名所でもあります。
秋の鮮やかな紅葉も去ることながら、雪に覆われた冬ならではの風景もまた魅力的 (写真提供:鬼無里観光振興会)
地名の由来は「鬼女紅葉伝説」
ところで、大望峠がある「鬼無里(きなさ)」という地名の由来をご存じでしょうか? 良い機会ですから、由来とされる伝説のうちのひとつを簡単にご紹介しましょう。
その昔、京の都から追われた紅葉という美しく高貴な女性がこの地に住み着きます。紅葉はやがて、京の都への断ち切れぬ思いから盗賊の長として悪事を重ねるうち、「鬼女」と呼ばれるように…。その噂を耳にした朝廷が鬼女・紅葉の征伐を命じ、紅葉亡き後は「鬼の無い里」=鬼無里と呼ばれるようになったそうです。
そもそも紅葉が京を追われた理由は、一途な恋心による悲しき企てだったと伝えられています。また、配流された当初は人々の病を癒すなど、恩人「貴女」として慕われていたとも。ゆえにこの伝説は、悲しき恋の物語としても語り継がれており、その様子を伝える和太鼓演奏が毎年秋に開催される「鬼女もみじ祭り」で披露されているのです。
日に日に木々の緑が色濃くなってゆく初夏。北アルプスの残雪が陽光を受けて美しく輝く (写真提供:鬼無里観光振興会)
秋はイベントも多彩
9月に展望台を訪れた際は、眺望はいまひとつでしたが、ここに50年以上通い続けているという画家さんとの出会いに恵まれました。その方に一夜山の伝説や昔は戸隠から絵の道具一式を背負って歩いたことなどを教えていただきました。同じ景色でも、こうして何らかのバックグラウンドを知ってから眺めると、見え方や感じ方が違う気がしました。
ここで、長野市街地から大望峠へのアクセス方法をお伝えします。ひとつは、国道406号線経由で鬼無里中心部へ行き、県道36号線を北上するルート。もうひとつは、戸隠バードラインもしくはループライン経由、戸隠神社宝光社の手前から県道36号線に入るルートです。途中、幅員が狭くカーブがきつい箇所がありますので、訪れる方は安全運転を。
これからの季節、大望峠を含む鬼無里内の名所を巡る日帰りバスツアー、登山やトレッキングのイベント等が開催されます。各イベントの情報は観光振興会のHPに掲載されています。
標高1055m、戸隠連峰の迫力ある姿が印象的。「自然は日によって表情が違うから、50年以上通っていても飽きませんよ」と、画家さん
<info>
長野市鬼無里支所
TEL:026-256-2211(代)
鬼無里観光振興会(鬼無里支所内)
TEL:026-256-3188
http://odeyarekinasa.jp
※ 今年の「鬼女もみじ祭り」は、
10月16日(日)開催予定です。