No.03 SPECIAL TOPICS
内村
浩明さん
ミヤマ株式会社 環境整備事業部 技術課長
技術開発には限界がないー。新たな解決策を常に模索するエンジニア
文・写真 安斎高志
工場廃液の無害化や再資源化などをはじめ、環境負荷を軽減させるさまざまなサービスを提供するミヤマ株式会社。過去には省エネ大賞・資源エネルギー庁長官賞を受賞するなど、その技術力は高い評価を受けてきました。
常に新たな技術を開発し続けている同社が昨年、完成させたのが、工場廃液をリサイクル・中間処理する際に発生する熱で発電するシステム「IONIC POWER GRNERATION」。業界でも画期的な取り組みとして、注目を集めています。
廃液処理の反応熱で発電を
「IONIC POWER GRNERATION」プロジェクトのスタートは2011年7月。東日本大震災をきっかけに、エネルギーは「環境問題」であるという社会的な意識の変化を受けて発案されました。ミヤマ燕工場の化学処理で発生する熱を利用して発電ができないか―。そんなミッションが技術課長(当時係長)の内村浩明さんに与えられます。
それまで多くのプロジェクトで責任者を務めてきた内村さんですが、このミッションには少し戸惑ったといいます。発電効率を上げるには、これまで低く制御してきた反応熱を、反対に上げる必要があったからです。
「反応熱はリスクが大きいんです。温度が上がることによって、反応が暴走したり、機材を傷めてしまったり、沸騰してあふれてしまったり。それを防ぐため、反応熱を低くコントロールするというのが、それまでの前提だったわけですから」
発想の転換が求められただけではありません。高温を安全に維持するための化学反応のコントロールや、耐食性や熱伝導率など様々な要素を考慮した処理フローの設計等に加え、発電事業は電力会社との折衝や手続きなどが必要で、これまでの業務では経験のなかったハードルも立ちはだかります。
「一歩進むごとに次の困難が待ち受けている感じでしたね。畑違いの分野に対応するのも大変でした。でも、ひとつの課題に悩んでいるときでも、別の課題は必ず一歩ずつ進んでいった。常に何か問題が立ちはだかっているんですけど、そのうちにこっちは解決して、ということが3年間続きました」
2014年8月に完成、発表されると、マスコミの取材や大手企業の見学が相次ぎました。他に例を見ない発想と技術に、多くの人が驚きの声を上げるそうです。しかし、完成度はまだ7割だと話す内村さん。今後、さらに発電効率を上げるべく、研究を進めています。
同僚曰く「ニコニコしていて人当りはいいけれど、頑固で折れない人」
新潟県の燕工場に設置された「IONIC POWER GRNERATION」
新しいチャレンジにこそやりがいが
内村さんは長野市出身。少年時代から環境問題に関心が高く、大学で環境工学を学びます。大気や土壌などの検査・分析の仕事ができる就職先を探していて、ミヤマに行き着きました。
配属されたのは環境整備事業部の技術課。会社の売上の約7割を占める事業部において、廃棄物のリサイクル・処理方法をあらゆる要素から検討し、判断する重要な部署です。
産業廃棄物には限りない種類の物質があり、配分や濃度、温度もまちまちです。そのため、対応方法も無限の幅広さがあります。ミヤマの工場に持ち込んで処理するのか、顧客の工場内に設備を建設して処理するのかという選択をはじめ、顧客と環境の双方に最も負荷をかけないよう判断していく内村さんの役割は、決して簡単ではありません。しかし、内村さんは日々、新しい困難にチャレンジできることにこそ、やりがいがあるといいます。
「起きている事象や現象を、論理的にみて、物理学、化学的に問題を解いていく。それによって、道が開けていく。自分の知らないことばかりなんですけど、日々、苦労しながら前進して、先が見えたというときは、うれしいですね」
長野、新潟両県に4工場あり、リサイクルセンターは東北から関西まで5拠点を構える
技術開発には限界がない
入社から15年が経過し、本人も数えきれないと笑うほど多くのプロジェクトに関わってきました。しかし、足を止める暇はありません。顧客であるメーカーは新素材を作ったり、生産の現場も日進月歩で進んでいます。そのため、処理しなければならない廃棄物にも新しい物質がどんどん増えていきます。
「自分は物事に限界をつくらないようにしています。技術開発って、自分で限界を決めなければ、いくらでも伸びしろがある。頂点がないんです。どんな業務をやっていても、限界をつくって、あきらめてしまわない。細かいことでもひとつずつ限界をつくらずにやっていくと、先に進みやすくなるのではないかなと思って取り組んでいます」
同僚曰く、内村さんは「ニコニコしていて人当りはいいけれど、頑固で折れない人」。そんな人物評を伝えられると、こう話し苦笑いします。
「技術系をやっていると理屈っぽくなってしまう。自分の理屈を押し付けてしまわないように気を付けていると、自分では思います」
これまで責任者を務めてきたプロジェクトには、職位や年齢が上の人も数多く携わってきました。プロジェクトを成功させるには、ひとつの方向を見定めたら突き進んでいく強い推進力を持ったリーダーが必要です。そして、会社には、そうした若いリーダーが活躍できる風通しのよさがなければなりません。どちらも備わっているミヤマが、この先どう成長していくのか楽しみです。
燕工場の松本工場長(右)は同期入社。多くの人たちと数えきれないほどのプロジェクトを成功させてきた
発電効率はまだ上げることができると内村さんは話す
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