No.240
竹内
和恵さん
竹内果樹園
風土の恵みを生かして
ここにしかない味を
文・写真 安斎高志
畑を、地域を守っていきたい
今春スタートした「NAGANO農業女子」プロジェクト。長野県内の若い女性農業者が信州の農業の魅力を発信していきます。夫の友一さんとともに竹内果樹園を営む竹内和恵さんは、正式発足前からこのプロジェクトに携わってきました。
「農業をしている女子だけではできないことをやっていければいいですね。野菜、果樹、稲作、畜産、さまざまな農業をやっている人たちに加えて、異業種の人たちとコラボしながら、少しでも多くの方に、農業に興味を持ってもらえたらと思います」
竹内さん夫妻は2008年、友一さんの実家がある長野市若穂地区を中心に果樹を植え始め、この7年で作付面積は当初の10倍以上に増えています。近隣の農家から、畑を存続させてほしいというオファーが相次いで来ているためです。
「夫の信条は、頼まれたら断らない。私たちは地域を、畑を守っていきたいんです」
大好きな風景だという自身のプルーン畑を見つめながら、竹内さんは力強く話します。
生食用とワイン用のブドウ、プルーン、サワーチェリーなどを栽培する
風土の恵みに憧れて
埼玉と東京で育ち、農業とは無縁な暮らしをしていた竹内さん。大学時代に、当時付き合っていた友一さんの実家を訪れ、その食卓に感動を覚えます。
「自分でつくったり、近所の人からもらったりした野菜や、自分で漬けた梅だとかが並んだ食卓を見たときに、今までに感じたことのない心の充足感みたいなものを覚えて、こういう暮らしがしたいと直感的に思ったんです。自分が住んでいる土地の、風土の恵みを体に取り入れて暮らしているということが、すごく豊かだと感じました」
大学を卒業して一旦は東京のアパレルブランドで働き、仕事にもやりがいを感じていました。しかし、農家の暮らしに対する憧れは冷めませんでした。そして、友一さんが長野県東御市の農業法人に就職したのをきっかけに、真剣に農業で暮らしていくことを模索し始め、2004年に東御市にあるヴィラデストワイナリーに転職します。ヴィラデストは、ワイナリーと農園にレストランとショップが併設されていたため、他ではなかなかできない経験を積んだと振り返ります。
長野の食卓に感銘を受けたというが、今はだれより長野らしいおもてなしをするのではないだろうか。取材時、畑にて
「つくるところから売るところまで全部見えるという楽しさがありました。一応、商品管理担当で採用されたんですけど、オープンしたばかりで、とにかく人が足りないし、新しいことが始まったばかりだったから、トマトの収穫だとか、皿洗いだとか、いろんなことを自分からやらせてもらっていましたね」
そんな中、友一さんは葛藤を抱えていました。東御市で荒廃農地の開拓を進めていましたが、一方で生まれ育った地域をどうにかしたいという思いが大きくなっていったのです。そして、竹内さん夫妻は2008年、自分たちの果樹園を始めます。
帰ってきた当時は竹内さん夫妻と身近な人たちだけで営んでいましたが、年々農地は増え、現在、農繁期は約10人のスタッフが手伝っていて、それでも人手不足だといいます
人気の高いセミドライレーズン。ル・コルドン・ブルーで学んだ調理法をベースにしながらも、素材そのものの良さを大事にしている
素材を何より大事に
竹内果樹園は、生食用果物だけでなく、コンフィチュールやドライフルーツなどの加工食品でも高い評価を得ています。
竹内さんは2009年から3年かけて、農閑期にル・コルドン・ブルー東京校へ通い、お菓子づくりについて学びました。しかし、加工品のおいしさの秘訣はもっと別のところにあると話します。
「お客さんに『ここにしかない味だね』と言われたときに、力んで何かをするのではなくて、ここの土地の恵みを味わってもらえるような商品をつくりたいと思うようになりました」
自社の加工食品は、畑で実った時点で味の80%が決まっているという竹内さん。あくまで素材をつくることを一番大事にしているといいます。
「もちろん専門学校で学んだことはベースにあるけれど、厨房でやることはすごくシンプルです。この素材があれば家庭でもできる、でもこの素材がなければできないというところを目指しています」
「風土の恵みのおかげ」という言葉を繰り返し口にする竹内さん。畑や果樹を見つめるまなざしは、愛情に満ちています。決して楽ではない農業という仕事ですが、その魅力を発信する「NAGANO農業女子」は適役だと感じました。
「女性の方が向いている作業は多いですよ」と話す
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会える場所 | 竹内果樹園 長野市若穂綿内8870 電話 026-285-0590 ホームページ http://www.fruitrytakeuchi.jp/ |
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